第18話 ナナの一番弟子

無事にダンジョンから脱出した一行。

今回の鉄小僧討伐は想像以上の収穫となった。

4人はまず無事に戻って来た事を喜ぶ。

その後、自由行動となった。

ニュートはドンクに鉄の加工方法を教わる事に。

セントはクラスを連れて村の中を案内した。


・ドンク

「本来、鍛冶の加工は火属性の魔力加工で行う。

だがお前は無属性だ、だから失敗も多いだろう。

だが根本的なやり方は同じだから数を熟せ。」


・「解りました、師匠。」


鉄鉱なら相当な量を入手できた。

無駄に失敗しても怒られないだろう。

俺は時間いっぱいまで加工を行った。


・セント

「ニュート君、そろそろオルドラに戻ろうか。」


もうそんな時間か、、、


・ドンク

「残った鉄鉱も持っていけ。

俺は暫くここで鍛冶をするからよ。」


・「ありがとうございます。

このご恩はいつか必ずお返しします。」


俺は遠慮なく頂く事にした。

ドンク師匠ならそう言うと思っていたからだ。

本当に良い師匠に恵まれたな。


・ドンク

「おう!今後も頑張れよ。」


ドンク師匠の笑顔に別れを告げ、俺達はオルドラに向かって馬車を走らせた。


・ドンク

「あいつもライオットも恐ろしい魔力量だな。

一体どうなってんだ?

魔力加工をあれだけしてるのに全然枯渇しない。

まさに化け物だな、、、」


自分の弟子2人に恐怖すら感じるドンクだった。



~馬車の中~


・クラス

「ニュートと二人きりになれる時間が無かった。」


・セント

「まぁまぁ。」


クラスをなだめるセントさん。

ちょっと嬉しそうなのは何故だろう?

俺はセントさんの許可をもらって馬車の中でも合成を繰り返していた。

黙々と作業を繰り返す。

オルドラに着く頃には全ての素材を加工し終えた。

すべて失敗しましたがね、、、


・セント

「何事も失敗の先に成功がある。」


最後にセントさんが俺にそう言ってくれた。

凄く心に刺さる言葉だった。

オルドラについたのは夕方。

クラスの頼みで買い物に出かける事となった。

俺と二人きりで、、、

セントさんが色々と手続きをしている隙に、クラスに連れられて街に繰り出したって所かな。

セントさん、今頃心配してるだろうな、、、

クラスに言われて黙っていた護衛の兵士さん。

怒られてないと良いけど、、、


・クラス

「やっと二人きりになれました。

ありがとう、ニュート。」


クラスの笑顔がまぶしい。

今日一番の笑顔になったクラス。

やっぱり可愛いな。


・クラス

「折角二人で買い物に出掛けれたので、イトちゃんのお土産を買って帰りましょう。」


俺が家を出てからイトと母さんには会えていない。

新しい屋敷は気に入ってもらえたかな?

久しぶりに会いたいな、、、


・「イトと母さんの事、よろしくね。」


今の俺に出来る事は信頼するクラスに頼む事だけ。


・クラス

「任されました、安心してね。」


そう言ってくれるクラスが本当に眩しく見える。

俺は最高のパートナーに巡り合えた。


二人は街を歩く。

はぐれない様に手を繋いで、、、

そんな光景を、セントは後ろから眺めていた。

途中からストーキングしていたのだった。


・セント

「クラスよ、、、まだだ、まだ早いぞ。

まだパパと一緒に居てくれ、、、」


そんなセントだが数日前にニュートとクラスの関係をどうしたら良いか、妻のセーラに相談した事があった。


・セーラ

「ニュート君?いい子じゃない。

私は応援してるわ。」


と言われた。

更にキロスには、


・キロス

「いつホントの兄ちゃんになるのかな?

姉ちゃん早くニュート兄ちゃんと結婚しないかな?」


とか言う始末、、、

セントは孤軍奮闘中なのであった。


・クラス

「送ってくれてありがとう。

また、一緒に冒険しようね。」


俺は屋敷の前まで送っていった。

クラスは笑顔で屋敷に戻っていく。

俺はクラスが見えなくなるまで手を振った。


帰ろうと振り返った時、、、


・セント

「まだだ、、、まだ早いぞ。」


そう呟きながら俺を見つめるセントさんを見かけた。

何だったんだろう?ちょっと怖い。

とりあえず頭を下げておいたが、、、

大丈夫だったのろうか?



~ナナの屋敷~


・「ただいま戻りました。」


・ナナ

「おう、おかえり。

どうだ?疲れて無いか?

今から特訓できるか?」


妙にワクワクしながら聞いてくる師匠。


・「大丈夫です、いつでも行けますよ。」


・ナナ

「そうか!では中庭に集合だ!」


嬉しそうに走っていった、、、

師匠も何かあったのかな?

とりあえず現状把握からしておくか。


・「ステータス」


ステータス

レベル 42

筋力 359 +70

知力 185 +60

敏捷性 371 +105


特技

闘魔術


体術LV54 補正LV10 筋力20 敏捷性 30


鍛冶LV25 補正LV5  補正値 筋力50

魔装術LV33 補正LV6 知力 60

龍鱗の籠手 筋力 +50 敏捷性 +75


うん、かなり強くなった。

この調子で頑張ろう。

俺は確認後、急いで中庭に向かった。


・ナナ

「来たかニュート!

今日の特訓は特別だ。

なんとミミちゃんが来てくれた。」


・ミミ

「来てくれたって表現おかしいよ。

ちょこっと荷物を取りに帰って来ただけなのに。」


・ナナ

「まぁまぁ、そう言わずに。

弟弟子の成長を見て欲しいんだ。」


ナナさんはウキウキしている。

余程嬉しいんだな、、、


・ミミ

「本当にお弟子さんを取ってたんだね。

ママが弟子を取るなんて聞いた事なかったから、アタシを足止めする嘘かと思っちゃった。

久しぶりだねニュート君。」


そこにはミミさんが居た。

しっかりと逢うのは『岩石王』以来かな?

あの時はお世話になったなぁ~。


・ミミ

「ニュート君が相手なら納得かな。

ライオットから色々教わったんだもんね。

こりゃ本気で行くべきかな?」


・ナナ

「ミミちゃん、言っておきますけど。

ニュートにいろいろ教えたのはママだよ。」


少し可哀そうな師匠。

ライ兄は色んなところで有名なんだな。


・ミミ

「ママ、本気で行けばいいの?

本気でやったら約束守ってくれる?」


・ナナ

「勿論だ、ただし殺す勢いで頼む。

ニュート、お前も最初から全力で行け。

死んでも悔いのないようにな。」


死ぬ気で抗えって事ですね。

ありがたい、死ぬかもしれない特訓は恐ろしい程に人を成長させてくれる。

何だかんだで師匠との戦いは気を失う程度で手加減してくれるから、どこか安心しちゃうんだよな。


ナナとの特訓が続いた為なのか。

「気を失う程度」と言い放つニュート。

普通の感覚とはかなりズレていた。


・ミミ

「ごめんねニュート君。

ママがこう言ってるから本気で行くよ。

死なない様に頑張ってね。」


普段優しいミミさんの纏う空気が変わっていく。

背筋に冷たい汗が流れる、、、


・「よろしくお願いします。」


臆するな、いい機会だ。

鉄小僧では俺の強さがいまいち分らなかった。

目の前に全力で戦える人が居てくれるんだ。

全力で戦え!


『闘魔術』


俺は全身に魔力を纏う。

総魔力の約8割の魔力で包み込む。

何故8割なのか。

全て纏うとすぐに疲れてしまうし、他の魔法が使えなくなるからだ。


・ミミ

「へぇ~、凄いね。

この短期間に『闘気術』を使えるようになったんだ。

ママが弟子にしたのも頷けるね。

これなら安心して本気が出せるかも。

ママとの約束の為に、いくよニュート君。」


ミミさんが『闘気術』を使用する。


・ナナ

「どちらかが死ぬか戦闘不能になるまでだ。

では、はじめ!」


師匠の合図でミミさんに突撃する。

俺は少しゆっくり気味で走っていく。

ミミさんはどんな戦い方をするのかな?

師匠が天才だって言ってた。

楽しみだ。


『魔弾』


・ミミ

「おお?なんか飛んできた!」


ミミさんは少し楽しそうに『魔弾』を躱す。


ここだ!


一瞬だけ目線が『魔弾』の方に向いた。

最初っからこれを狙っていたのだ。


『空走』


俺は足に溜めている魔力を爆発させて一気に詰める。

ミミさんはまだこっちを見ていない。

俺の攻撃が入る、、、


ブン


・「なっ、、、」


・ミミ

「なかなかいい攻撃だね。」


後ろからミミさんの声が聞こえる。

やばい、ガードだ。

俺は咄嗟に身体を反転させてガードに移る。


ドス


・「ぐはぁ」


振り返ってガードした筈だった。

しかし振り返ったところには誰も居なかった。

振り返った瞬間、後ろ側から攻撃を食らった?

どういうことだ?

あの一瞬で俺の周りを一周したって事か、、、

俺の攻撃を躱し、丁寧に真後ろで声を掛ける。

そして俺が振り向く瞬間にまた移動したのか?


そんな事を思いつつ、俺は吹き飛んだ。


・ミミ

「はい、おしまい。

ママ、ちゃんと約束守ってね。」


ミミは既に戦闘が終わったと思っている。

ノーガードの所に『闘気術』の一撃が入ったのだ。

そう思ってもおかしくない一撃だった。


・ナナ

「ふふふ、約束は守るさ。」


不敵に笑うナナ。

ナナの反応をミミが不審に思った瞬間だった。


『地裂拳』


ミミに向かって一直線に向かってくる爆発。

気を取られていたミミに直撃する。

しかしミミは『闘気術』でしっかり防御する。


・ミミ

「いててて、何の爆発?」


間髪入れずに何かが飛んできた。

魔法?


・「くらえぇぇ」


ニュートだった。


ノーガードの所に入れた『闘気術』の一撃。

気絶していると思い込んでいたミミ。

しかしニュートは攻撃を仕掛けて来ている。


・ミミ

「甘く見てたかな。」


そう言いつつニュートの攻撃を受け流す。

勢いの付いていたニュート。

そのまま少し離れた地面に叩きつけられた。


・「くぅ、なかなか当てれない。」


俺は起き上がり再びミミさんと向き合う。


・ミミ

「何でそんなに元気なのか知らないけど。

もう何もさせないから。」


ミミの構えが変化した。

ナナ師匠とは違う。


・ナナ

「ほう、ミミちゃんにこの構えを出させたか。

やるじゃないか、ニュート。」


少し様子を見ようとしたが、考えても解らないよな。

結局俺の方が弱いんだ。

ならば突っ込むのみ!


『空走』


再び一気に距離を詰める。

今度は直線ではなくジグザグに動いて的を絞らせない。

フェイントを数回入れつつ攻撃する。


・ミミ

「良い攻撃だね。」


・「うぉぉぉ」


攻撃を繰り返す。

離れては詰め、攻撃しては離れる。

何度も何度もトライするが、、、


・「くっそ、何も当たらない。」


全ての攻撃が全て無力化される。

躱す、捌く、いなす、受け流す。

威力を殺される。


・「一点攻撃じゃ駄目だ。」


俺は無属性の魔力を薄くミミさんの周りに展開。

バレないように薄く、薄く。


・ミミ

「む、何か危険な気がする。」


ミミさんは移動する。

それに合わせて俺の魔力も移動。


・ミミ

「何かやばいね。

変な感じが付いてくる。」


何で解るんですか?

あれだけ薄くした無属性の魔力なのに。

展開させている俺でも集中しないと感知出来ない。

でも、そのうち捕まえて、、、


・ミミ

「ここなら安全かな♪」


俺の目の前にやってくる。

堪らず拳と蹴りで応戦する俺。

くっそ、全く当たる気がしない。


・ミミ

「ふっふふ~、無駄無駄~。」


余裕そうなミミさん。

これだけ攻撃しても一撃も当たらない。

みるみる体力が削られていく。


こうなったら、、、


・「我慢比べと行きますか。」


・ミミ

「!?」


先程までミミさんを追っていた薄い魔力の霧

現在は俺ごと包んでいる。

本当はミミさんが離れた所を狙うつもりだったが。


・「こうすればどうですか?」


俺はミミさんの服を掴んで叫ぶ。

その瞬間、覆っている魔力を炸裂させる。


ドゴーン。


相打ち狙いだ。

大きな爆発、砂ぼこり。

暫くすると人影が見えてくる。


・「はぁはぁはぁ、、、」


外した?

あの一瞬、自分で服を斬り裂いて回避した。


・「す、、、凄いな。」


俺は心底感心した。

同時に絶望感も味わう。

何故ならミミさんが後ろに立っている気配がしたからだ。


・ミミ

「最後の、やばかったなぁ~。」


おそらく最後の一撃を入れようとしている。

俺はもう動けない。


でもね、、、

回避した時、必ず俺の背後を取ると思ってましたよ!


『魔石・爆』


その瞬間、俺の意識が飛んだ。


最初の相打ち覚悟の攻撃。

攻撃が外れたと確信した時、思い付いたんだ。

鍛冶をやっててよかった。


魔石には元々魔力が宿っている。

他の魔力を流すと一定時間溜める事が出来るんだ。

魔力操作や鍛冶の練習にも役立つ。

だからいつも2,3個ポッケに入ってる。

いつでもどこでも練習出来るようにね。

その一つに魔力を流し、砕いて巻いて置いた。

それを、ミミさんが油断した時に爆発させたんだ。


上手く行ったかな?

少しくらい、ダメージを与えられてたらいいな。


・ミミ

「ぷはぁ!危なかったぁ。」


倒れ込むニュートの遥か上空。

とっさに回避していたミミ。

爆発から逃れるには『空走』で上空に行くのが一番と考えたのだろう。


・ミミ

「無茶するなぁ、あの子。

お陰でお気に入りの服が破れるし、靴も吹き飛んじゃうし。久しぶりにダメージ食らった感じ。」


右足にダメージを追ったミミ。

痛みと共に笑顔が伺われる。


・ミミ

「ふっふ~、なかなか見所のある弟弟子だね。」


ボロボロになったニュートの傍に降り立って微笑む。

優しく抱き上げてナナの元に向かって行った。

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