第13話 拳聖の特訓
・ナナ
「そろそろ起きろ、朝だぞ」
ナナさんの声で目を覚ます。
・「お、おはようございます?
昨日、俺いつ寝ました?」
理解が追い付いていない、、
どうなったんだ?
何か身体があちこち痛いし。
・ナナ
「覚えていないか?まぁ、ゆっくり思い出せ。
お前が最後に編み出した移動を忘れてたら今夜も同じことをするから、死に物狂いで思い出せよ?」
恐ろしいことを言われた気がするが、昨夜のことは覚えているから大丈夫だ。
・ナナ
「体はどうだ?
とりあえず傷薬で応急処置はしておいた。」
・「少し痛いけど大丈夫です。」
・ナナ
「よし、じゃあ朝飯前に運動だな
外にチャッピーが居るから捕まえてこい」
寝起きから結構ハードな内容が、、、
考えても仕方ない、早速行ってこよう。
外に出るとチャッピーの姿はない
・「しかし、本当に広い庭だよな」
あまりの大きさにため息しか出ない。
だが止まっている訳にもいかない
・「さて、チャッピーも魔物だしな。
とりあえず周辺の気配を探ってみるか、、、」
俺は集中して周囲を探る、
サッパリわからない。
・「索敵範囲が広すぎるのかな
仕方ないか、走りながら探してみよう」
俺は走り出した。
しかしどれほど走ってもチャッピーの気配は感じられない、本当に居るのか分からない程に何も感じられない。
俺はそのまま走り続けた、、、
どれだけ続けていたんだろう?
・ナナ
「おい、いつまで探してやがる。
とりあえず切り上げだ、屋敷に戻るぞ」
不意に声を掛けられた、、、
ナナさん、一体いつの間に?
・ナナ
「なんだ?朝飯に続いて昼飯も要らないのか?」
・「え?それってどういう意味で、、」
気が付いたら既に日は頂上付近まで来ている
・「もうこんな時間なんですね。
チャッピーの気配すら分からなかった」
・ナナ
「没頭するのは悪くない、ただ同じ事を続けていても結果は変らないぞ。
飯を食いながらしっかり考えてみろ。」
厳しくも優しい言葉を頂けた。
確かにそうだ、同じ事をしてもだめだ、
とりあえずご飯を食べて考え直そう、、
・「助言ありがとうございます。
では昼ご飯を食べに戻ります。」
俺は何ができるかを考えながら屋敷に戻る
そんなニュートを見ながらミミは微笑む
・ナナ
「(ふふふ、悩んで自分で見つけ出すんだ。
頑張れよ、ニュート)」
昼食を取り終えた俺は再び庭に来ていた。
チャッピー探索の続きをするためだ。
とりあえず見つけないと次に進めないらしい
早く見つけないとな、、、
・「午前中は走って探したけど無理だった、だったら次はどうしたら良い?」
俺は座り込んで考えてみた。
恐らくだけど、チャッピーは俺の動きに合わせて逃げていると思う。
この状況で俺が出来る事、、、
①愚直に走り回る
午前中と同じ結果になるだけだ
②昨夜の移動方法で相手より早く動いて探す
これもありかもしれないけど、俺の動きがばれているのなら先読みされる恐れがある。
③スカウト能力で探し出す
俺にはその能力がない、、、
④片っ端から攻撃を繰り出して炙り出す
師匠に殺される方が早い気がする
⑤良い匂いで敵を誘導する
野良の魔物なら有効かもしれないが相手はチャッピーだ、しっかりと餌を食べている相手にはあまり有効とは言えない気がする。
、、、それからも暫く考えてみる。
・「ぬ~、なかなか良いアイディアが浮かばない
こんな時ライ兄ならどうするんだろう?」
目指すべき冒険者の姿を思い浮かべる。
ライ兄はいつも常識外れの事をして驚かせてたな。
常識に囚われちゃダメな気がしてきた。
・「そうだよ、相手の方が各上なんだ。
そんな相手に正面から行って勝てるわけないじゃないか。
あの時の決闘もそうだ、ライ兄は実力で負けていたから色んな技を駆使してハンダを倒していた、俺も格上のチャッピーに正面から行っちゃだめだ」
何となくだがやるべき事が分かった。
常識に囚われるな、相手が驚く事をすればいいんだ
・「よし、後は行動に移すだけだな」
俺は庭を横断して壁に向かて走っていく。
・「昨日庭の周りを走らせたのはこれを思い付くためだったのかな?師匠はやっぱりすごい人だ。」
そして俺は周辺に隠れる事の出来ない様な平地の広がる場所までやってくる。
そのまま壁に向かって速度を上げる。
・「昨夜の事を思い出すんだ、、、いくぞ!」
足に魔力を溜めて、全力で爆発させて壁に向かって飛ぶ。
そして壁を蹴って更に空にジャンプ、、、
空に向かって大ジャンプをした俺は下を見つめる、急いでチャッピーが茂みに隠れるのが見えた。
ナナさんもチャッピーに乗ってたな。
・「見つけたよ、
後は逃げられない様に詰めるだけだ。」
空中で態勢を変える、そして足に魔力を溜める。
チャッピーは俺が態勢を変えた瞬間に何かを悟ったのだろう、ゆっくりと後退し始めた。
・「逃がしてたまるか、
警戒していない一回目しかチャンスはない。
着地は二の次だ、ビビるな。
考える前に動けぇぇ!」
空中を蹴るように足裏の空間を全力で爆発させる。
まるで弾丸の様にチャッピーに向けて飛んでいく。
・「うぉぉぉぉ」
直ぐに両手に魔力を溜める、
着地する手前で小爆発を繰り返す。
さすがに慣れていないからか、自分にダメージが入る時もあるが上手くスピードを殺せてきた。
着地と同時に驚きを隠せないチャッピーに向けて猛ダッシュ、見事捕まえることに成功する。
・「よし、捕まえた!
師匠、捕まえましたよ?」
チャッピーの上で驚いているナナさんに報告する。
師匠も驚かせれたのは嬉しい。
どうですか?
師匠の思い描いたとおりに出来ましたか?
・ナナ
「まさかあんな風に索敵をするとは思わなかった。
初日でチャッピー捕まえるとはな、
お前、とんでもねぇな。」
あれ、予想外の言葉で褒められた、、、
やり方違ったのかな?
まぁいいや、今は捕まえれた事実を喜ぼう。
・ナナ
「良いだろう、捕まえたことには変わりない。
合格だ、ニュート」
師匠はチャッピーから降りる。
すると嬉しそうな師匠が右手を前に出して肩幅に足を開く。左手は後ろに、右ひじを軽く曲げて構える。
とても自然な構えだ、初めて見る。
・ナナ
「魔法でもなんでも使え、
アタシに攻撃が当たればお前の勝ちとしよう。」
師匠の周りの空気が変わる。
ここで戦うつもりだ、、、
いつの間にかチャッピーも離れて観戦している。
・ナナ
「さぁ、かかって来い」
凄いな、隙がサッパリ見当たらない。
俺が動けずにいると師匠が笑いながら言う
・ナナ
「どうした?このまま晩飯まで睨めっこか?
すぐに飛び掛かってこなかった事は誉めてやろう、しかしこのままずっと動かないってのも状況の打破には繋がらないぞ」
師匠の言うとおりだ、、、
結局動かなければ何も変わらない。
行くしかないんだ。
・「行きます、師匠!」
・ナナ
「来い、ニュート」
俺は足に魔力を流して真っ直ぐに飛び込む。
そして目の前で地面を踏み抜いて爆発させる。
砂ぼこりで姿を消して回り込む。
煙の人影に対して殴り掛かる、、、
師匠の気配はそこにある、いける!
ブン
空振り?
落ち着け師匠がこの程度で当たるわけがない
止まるな、動け、離れるんだ。
俺は一気に距離を取る。
・「一体どこに?気配は確かにあったのに」
・ナナ
「30点だな、意表を突いたことは誉めてやろう
実際にびっくりしたからな、だが詰めが甘い。
お前自身が敵を見失ってどうする?
気配を探っていたみたいだが逆に利用されたらどうする?」
背中に衝撃が走る。
俺は吹っ飛ばされる。
・ナナ
「撃たれ強さは中々だな。
良いぞ、アタシを楽しませてくれ」
師匠がまた構える。
俺は何度も攻撃を仕掛ける。
フェイントを混ぜながら、真っ直ぐに『魔弾』を飛ばしてみたり。
思いつく様々な攻撃を仕掛けてみたんだ。
すべての攻撃が躱され、去され、無効化される。
無効化される度に俺のダメージか増えていく。
・「はぁはぁはぁ」
・ナナ
「攻撃のバリエーションが無くなってきたか?
徐々に単調な攻撃が増えてきたぞ?」
既に日は傾き夕方になっていた。
・ナナ
「しかし、お前の攻撃を見ていると楽しいな。
未熟なりに考えて攻撃しているのがよく分かる。
うちのミミちゃんとは大違いだ。
だがミミちゃんは凄まじい才能があった。
悪いがお前には突出した才能はない。
だがその才能を上回る期待感がある。
さぁ考えろ、どうすればいいと思う?」
師匠がまた助言をくれた。
優しいな、、、攻撃は優しくないけど。
既にボロボロになってる身体に再び力を入れる
・「ふぅ、、、」
深呼吸をする、師匠は待ってくれているみたいだ。
今日の攻防で、師匠からの攻撃は一度もなかった。
全てカウンターによるダメージだ。
つまり俺に考える時間を与えてるんだろう。
なら、そのハンデを最大限に使うべきだ。
・ナナ
「今日は次の攻防を最後にしよう。
悔いのないように掛かって来い。」
今までやって無かったことは無いか?
すべてを出し切ったか?
、、、、まだだ、まだ『魔装術』を使っていない。
だが、触れられない敵にどうやって魔力を流す?
不意に決闘でのライ兄の事を思い出す。
・「行きます、覚悟してください」
・ナナ
「良い度胸だ、来な!」
俺は上着を引き裂いて握り込む
そしてそのまま魔力を込める。
・ナナ
「なっ!一体なにを?」
思いもよらず師匠を驚かせれた。
そして地面に衣服を擦りながら師匠に突っ込む。
・ナナ
「一体何しようってんだ?」
俺はそのまま真っ直ぐに突っ込む。
フェイントなど無い、真っ直ぐに突っ込むだけだ。
・ナナ
「何考えてるかは知らないが、、、
真っ直ぐ来るとなね。
右手だけに魔力を溜めているのがバレバレだよ。」
成る程、今まで俺の攻撃がばれていたのは魔力を込める場所で、ある程度攻撃の予測が出来たからか、いい情報を手に入れれた。
そんな事を思いつつ真っ直ぐに突っ込んだ為、師匠に簡単に吹き飛ばされる。
・「最後の攻撃がこの程度かい?」
俺は吹き飛ばされている空中でにやける。
予想通りの展開になっている、、、
魔力の粒子たちの配置を見た、無属性の粒子だ。
感知できるはずがない!
10メートル程吹き飛ばされて着地した俺は、最後の一撃を繰り出す為に次は全身に魔力を溜める。
師匠は俺の変化に気付き既に構えている。
・「食らえ!」
俺は地面に擦りつけた衣服のラインの上にいる。
その先にいるのは師匠だ。
つまり、無属性魔力の粒子は真っ直ぐに師匠に向かっている。
そこに再び魔力を流し込む
『魔装術・地列拳』
粒子に魔力が灯り連鎖的に爆発が地面を走る
・ナナ
「なんだ、この技は?」
驚いた師匠は背後に飛ぶ。
・「ここだ!」
俺は小爆発移動方法を使い一気に詰める
巻きあがる砂ぼこりを突っ切っての攻撃。
師匠は空中にいた。
ならばその場から動けないはずだ。
・「はぁぁぁぁ!」
そのまま人影に向かい右腕を振り切る。
ブン
空振り、、、、?
・ナナ
「惜しかったな、さすがに驚いたぞ。
だが最初に行っただろう?
気配を相手に利用されたらどうすると。」
なぜ?空中にいたはずなのに、、、
俺は、そのまま地面に叩きつけられる。
・ナナ
「70点だ、驚いたぞ。
アタシにここまで高得点を出させたのはミミちゃん以外はお前だけだ。
だが少しだけ想像力が掛けていたな。
お前が使える『空走』を教えたのは誰だ?
私も使えるに決まっているだろう。
つまり、空中だろうと移動はできるって事だ」
師匠の言葉が突き刺さる。
確かにその通りだ、、、
考えが足りなかったか?
そして意識が薄れていく。
・ナナ
「あれ、ニュート?
おい、ニュート!」
・???
「ナナ様、最後の一撃にあの技を使ったでしょう?
とっさに出たとはいえ弟子に打ち込むとは、
これでこの子の夕食は無駄になりますね。」
・ナナ
「うっ、、、仕方ないじゃ無いか。
だってびっくりしたんだから。」
・???
「ふぅ、、、
ではこの子は部屋に運んで置きますのでナナ様はお食事にしてください。ちゃんとチャッピーの分もありますので一緒にお願いします。」
・ナナ
「ぬぅ~、解った後は頼む。
しかし、ニュート、、
アタシに一瞬でも危機感を感じさせるとはね。
ますます楽しみになってきた」
ナナはチャッピーと共に屋敷に戻っていく。
その顔には満面の笑みがこぼれていた。
・???
「全く、困ったお人ですね
しかし、この子は凄い子だ。
ナナ様があんなに楽しそうにしているのは久しぶりです、ミミ様を超えるかもしれませんね。」
ニュートを抱えて屋敷に戻る女性
その女性にも満面の笑みがこぼれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます