異世界クロスロード beyond Common Sense(ビヨンド コモン センス

アナザー

第1話 村人ニュート

オイラの名前はニュート。

ただのニュートだ。

オルドラ王国の貧民街に住んでいる。

おっとぅは知らねぇ、

おっかぁと妹の三人暮らしだ。

一度、おっかぁに聞いたことがあるが、哀しそうな顔して苦しそうにしてたから聞くのをやめた。

別に知っても知らなくても変わらないからよ。


オイラは冒険者になりたいと周りには言ってた。

でも、本当は何でも良い。

金が貰えて、おっかぁと妹を食わせてやれれば、兵士だろうがなんでも良かったんだ。

そう考えていたんだ。

でもよ、、、

ある時、出会ったんだ。

最高の冒険者にさ、、、


病気になったおっかぁと、元気のなかった妹に旨いもんを食わせてやりたい、、そう思ってたところに、天からリトルボアが降って来やがった。

最初は神様の事を信じたんだけどな、、、

現実はそんなに甘くないよな。

そいつを倒した冒険者がやって来てさ、

自分の獲物だって言うんだ。

仕方ないだろ?

倒した奴の獲物だってのは常識だしな。

俺は諦めた。

だが、その冒険者は言った。

この獲物が必要なのか?って、

半分くれてやるから血抜きを教えてくれって。

リトルボアを素手で倒す程の冒険者が解体方法を知らないわけが無いじゃないか、、、

だが、その冒険者はさも初めて聞く様にオイラの話を聞いていたんだ。


たしか、冒険者の名前はライオット、、、

オイラはライ兄って呼ぶ事にした。

兄貴が欲しかったから。

ライ兄は、自分で仕留めた獲物を、

本当にオイラに半分もくれたんだ。

しかも、高価な魔法石もだぜ?

信じられなかったよ。

それに、困った時に助けてくれれば良い、そんな事言って、、オイラにリトルボアをくれたんだ。


リトルボアってのは、高級な肉を持つ魔物さ、、

俺は貰った獲物の半分を家族に食わせて、後の半分は売った、、、

魔法石はギルドで売ろうとしたんだが、最初は盗んだんじゃないかって言われちまった。

まあ、そんな事案が多いから仕方ない事さ。

貧民街の奴らは盗む事を良くするからな

生きる為に、、、

だけど、オイラは違う。

ギルドの奴に言ったんだ、

信じて貰えないってわかっていたけど言ったんだ。

オイラは、貰ったんだって、、、

そしたらさ、おかしな事が起きたんだ。

散々疑ってたギルドの人達も、ライオットって名前を出した途端に信じまったんだ。

しかも、疑ってしまった謝礼として3倍の価格で買い取ってくれた。

お陰で、おっかぁの薬を買えた。

妹を学徒として学び舎に通わせる事が出来た。

全ては、1人の冒険者のお陰で、、、


ライオットって冒険者は本当に何者なんだろう、

きっと凄い冒険者なんだろうな、、、

オイラも、、、、オイラも、、、

俺も、、、あんな冒険者になりたい。

いつか、ライ兄を助けてやるんだ!

そして、皆を笑顔にさせるんだ!


俺の夢は、

物語は、

ここから始まったんだ、、、



~貧民街にて~


・イト(ニュートの妹)

「ニュー兄、ニュー兄!」


・「どうした?イト」


イトってのは俺の妹の名前だ。


・イト

「今日もギルドに行くの?」


・「あぁ、行って来る。

冒険者になる為にどうすれば良いか聞いて来る。」


・イト

「そっか、おっかぁが呼んでたよ?」


・「お、了解。

ありがとな、イト」


ニッコリと俺に微笑んだ後、

イトは学び舎に向かって行った。

俺は家の奥に向かう。


・「おっか、、、

母さん、何か用かな?」


・ニュートの母

「ニュート、冒険者を目指しているの?」


・「あぁ、俺は冒険者になりたい。」


・母

「そう、、、

正直、お母さんは冒険者が嫌いだわ。

でも、貴方の出会った冒険者の方は、本物の冒険者だった様ね。

羨ましいわ。」


・「冒険者って言っても悪い奴らばかりじゃない。

俺はライ兄に出会って本物の冒険者を見た。

本物の冒険者って奴になりたいんだ。

ごめんね、母さん。

これだけは譲れない。」


・母

「立派な話し方をする様になったわね。

時々、いつも通りに戻るけど、、、」


母さんがクスクス笑いながら微笑んでくれる

母さんが笑ったの、いつぶりだっけ?

ライ兄、母さんの笑顔を戻してくれてありがとう


・母

「いいわ、貴方に全てを話しましょう。」


・「ん?全てを話す?」


母さんは床を叩き始めた、、、

何してるんだ?

すると、ボコっと床の1箇所が外れた。


・母

「これから話す事、今まで黙っててごめんなさい。

どうしても、、、

貴方を戦いの道に進ませたくなかったの。」


・「どう言う事?」


・母

「いい?

貴方のお父さんは、元々冒険者だったのよ。」


・「本当に?」


・母

「えぇ、でも、、、

生まれ付きの属性が、何も無かったの。

属性とは、才能そのもの、

あの人には戦いの才能が無かった。」


俺は黙って聞く。


・母

「それでも、あの人は努力したわ。

レベルを上げて、必死で食らいついて行った。

そして、、、ある時、死んだの。」


俺は息を飲む、、、


・母

「親友を庇って、魔物の突進を受けたわ。

あの人は串刺しになり、、、魔物ごと、

そのまま森の奥へと消えて行った。

その直後、森の奥で大きな爆発があったの。

きっと、最後の力で魔力を暴走させたのね。

急いで駆けつけた時、

そこには魔物の姿も、あの人の姿も、、、」


母さんは少しの間泣いた、、、


・母

「私とお父さんは同じパーティーだったの。

あの人は誰かを守る為ならどんな危険にも向かって行ったわ、、、例え無謀だと言われても。

それでも、いつも乗り越えて来た。

そして、あのダンジョンに、、、

貧しい村娘の病気に効く薬を取る為に、、、

私は、イトを生む為その時は同行しなかったわ。」


・「なら、誰から聞いたんだ?」


・母

「お父さんの親友、、、肉屋のドーンさんよ。

あの人も元々冒険者で、あの事故の後から私達をずっと支えてくれてた。」


そうだったのか、、、

だから、ドーンのおっちゃんは俺に解体方法を、


・母

「あの人も、ドーンさんもこんな日が来ると思ってたのかしらね。

いつか、貴方が巣立つ時にこれを渡して欲しいって。」


そう言って一つの箱を取り出した。


・「これは、、、?」


・母

「龍鱗の小手、、、

あるダンジョンで手に入れた、、レアアイテム

お父さんが『いつか息子に渡すんだって』売らなかった唯一の形見よ。」


俺は小手を受け取った、、、

記憶にない父親、、、

想像では最悪の父親、、

だが、真実はどうだ?

親友を守り、家族を案じ、弱者を守り、

そして死んで行った父親、、

自分のなりたい冒険者と少し重なる。

気付くと涙が溢れていた、、、


・母

「ニュート、貴方はあの人の息子。

好きに生きなさい。

自分の信じる道を進みなさい。」


俺は、大きく頷いた。


・「ありがとう、母さん。

俺は、やっと上を向いて歩けそうだ。

いつか、父さんの背中を追い越して、、、

最高の冒険者になってみせる。」


母と息子は強く抱き合った。

お互いに涙を流し、そして優しく抱き締める。


・「じゃあ、行って来るよ。」


・母

「ぇぇ、頑張って来なさい。」


この日、ニュートは家を出た。

目指すはギルド。

だが、ギルドに向かう途中で、、、


・ドーン

「おい、ニュート。

、、、行くのか?」


・「おっちゃん、、、俺は行くよ。」


・ドーン

「そうか、、、

母ちゃんとイトの事は俺に任せておけ。

必ず守り抜いてみせる。

『ニコライ』の名にかけて!」


・「ありがとう。

任せたぜ、ドーンのおっちゃん。」


俺は迷わず走り出した。

父親の名を生まれて初めて聞いた。

顔も知らない父親。

だが尊敬出来る父親。

父親の名はニコライ!

目指す冒険者はニコライとライオット。

俺は目標が出来た事が嬉しかった。

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