第5話 加護に貴賤はない!
第5話 加護に貴賤はない!
その日はそのままキャンプになっちゃった。
爺ちゃんが遊びすぎたから。
「閣下、お茶をお持ちしました」
「おう、あんがとよ」
「へへーっ」
爺ちゃんに所にお茶を届けて最敬礼しているのはかつての生意気子爵クプクプさんだ。
「リウたん名前憶える気ないでしょー」
ないよ、全くない。第一クプクプさんの方が分かりやすい。
「おう、こっちはもういいぜ、クプクプも飯を食いな」
おら、爺ちゃんもクプクプ言ってるよ。
他の反抗的だった騎士たちも徹底的にしつけられているよ。きびきび働いている。
多分鳴けと言われたら〝わん〟とかいうぞ。絶対だ。
僕は調教された人間を見たんだ!
少し問題なのは反抗的でなかった人たちかな。
なんにんかいて、こちらは調教をまぬかれたからまだ普通っぽい。
爺ちゃんのことを警戒はしているみたいだけど、それでもね。
「ほら、何やってんの、とっとと火をつけなさいよ、能無しなんだからそのぐらいやって、大医王様に怒られたらどうすんのよ」
ちょっとまだ余裕があるというか状況が分かっていないのがいるみたいだ。
おびえて震えてたために調教をまぬかれた女の人が、やっぱり最初から反抗する気のなかった若い女の子にきつく当たっている。
爺ちゃん知らん顔して聞き耳たててんぞ。知らんぞぼく。
「いい? あんたは外れ加護の役立たずなんだから、こういう時にきびきび仕事しないでどうすんのよ」
自分たちの食事の支度をしている人たちの一人が、若い女の子をこき下ろしている。
多分頭が弱いんだな。
しつけられた奴らはその女の行動を戦々恐々と見ているよ。巻き込まれるのが怖いんだね。
爺ちゃんはとりあえずそれを後回しにしてクプクプさんを呼びつけた。
人差し指でこーいこいだ。
クプクプさん、スパッと立ち上がって、すすすっと走り寄って、さっと片膝ついた。
そしてなにやらごそこそ。
うーん、また僕の方にお鉢が回ってくるながれカナ?
あっ、呼ばれた。もーっ。
でね、クプクプさんによるとあの女の子は新しく雇ったメイドさんで、外れ加護だからすごく安く雇えたって言ってた。
「ちっ、馬鹿どもが。加護ってのは適材適所だ。役に立たねえなんてありゃしねえんだぜ。なんもわかってねえ」
で、爺ちゃんその女の子をよんだんだ。
僕より少し年上かな。ティーンエイジャーな感じ。
そんで僕に鑑定しろって言うからやりました。
そしたら。
「エイドの精霊の加護だって」
クプクプさんが言っていた通りだった。こういうのを完全単一能力の加護っていうんだって。
爺ちゃんはクプクプさんに命じてその女の子を引き取ることにした。
騒いでいた女の人は〝ふんっ〟とか言ってたけど、自分が命拾いしたことに気が付くことがあるのだろうか?
◇・◇・◇・◇
翌日、クプクプさん一行の最敬礼に見送られた僕たちは旅立った。
ちなみに僕たちの旅は僕の収納『影の箱庭世界』に荷物を入れているから結構快適なんだ。levelⅣになって大きさも2.5メートル四方ぐらいになったから結構入るからね。旅の道具ぐらいは楽勝だ。
でも車の座席は足りない。
なので席交換。
ラウールさん運転、ニニララさん助手席。後部座席に爺ちゃん、女の子、フウカ姉ちゃん。僕はフウカ姉ちゃんの膝の上。
ほんとオッパイ邪魔。
動く度に『ああんっ』とかいうなし。
「さて、嬢ちゃん。お前のこれからの話だぜ」
「はひ」
爺ちゃん、この子完全にビビっているぞ。ヤンキーだもんな。おまけに微妙に世紀末ヒャッハーだしな。
「リウの鑑定によるとお前さんはエイドの精霊の加護ってのを持っている。それは知っているか?」
「はっ、はい、五歳の時に、神官さまに、そう言われました」
「おう、リウもそう言うんだから間違いねえ、こいつも鑑定持ちだからよ」
はい、鑑定持ちのリウです。
というか鑑定は
聖者のクラスは神殿の仕事見たいなのができる。
便利だし役に立つからって
ダイラス・ドラム様からもらった叡智さんとかオプションになったしーぽんとかと連動しているみたいなんだけど。どういうものかはよくわからない。
使うと加護とか
「ご、ごめんなさい、役立たずな加護で…」
プルプルチワワみたいにふるえてるね。
「そいつは勘違いだな。確かにランクの高い加護の方がいろいろできるし、いろいろ有利なんだがよ、ランクが低いからってそう悲観したもんじゃないんだぜ。
どんなもんだって要は使いようだ。
エイドってのはあれだ。
下位魔法の一番簡単な回復魔法だ」
うん、そうそう、ちょっとした傷を治す魔法だね。
「そんでよ、単一能力の加護ってのは、それしかできない代わりに、それに特化した加護なんだぜ」
爺ちゃんが解説を始めた。
女の子は今までそんなこと聞いたこともないっていうんで吃驚しているけど、ぼくもあんまり詳しくは知らないんだよ。
だからここでちょっとおさらいだ。
加護っていうのは7歳の時にもらえるもので、この世界の人はみんななにがしかの加護を持っているんだ。
僕の加護は『ダイラス・ドラム』の加護で、神様だったけど、だれも聞いたことがなかったというんで僕も一時期は役立たず加護と言われていたよね。
一番いい加護はやっぱり神様の加護で、父さんは戦神ゼイ・エクスの加護持ちだったりする。
基本的に能力が高くなるし、その神様の管轄方向だといろいろできることが多い。
父さんが祟りを倒せるのはやっぱり神様の加護があるからだと思う。
次が精霊様の加護。
火の精霊とか風の精霊とか光の精霊とかだね。その精霊が担当する属性の能力が色々使えるらしいよ。
その次が守護精霊の加護。大体こちらも精霊って呼ばれるみたい。
剣の精霊とか盾の精霊とか、料理の精霊とか裁縫の精霊とか。ここら辺は結構大きな精霊みたい。
少し小さくなると『力の精霊』とか『器用さの精霊』とか、もっと小さくなると『腕力の精霊』とか『指先の精霊』とか、この女の子みたいに『エイドの精霊』とか『ブチファイアの精霊』とか、一種類の魔法の守護精霊とかもいるみたい。
基準が分からん、全くわからん。
お題目としては神が与えてくれるありがたい加護に貴賤はない。とか言うけど、下位精霊の加護だと馬鹿にされることはとても多い。
あと魔力量でも差別とかあるんでやめてほしいよね。
あっと話がそれちゃった。
「神々がどういう基準で加護を授けるかわからねえ、だかよ、はっきり言って役に立たねえ加護なんて存在しねえんだ。
特にお前さんの加護みたいに単一能力の加護は使い方次第だ。ちゃんとかんがえりゃ役に立たねえ加護なんぞ存在しねえのよ。
お前さんの加護は傷を治すだけの加護だ。だが傷を治すことに関しちゃ問答無用で機能する。詠唱も状況もお構いなしだ」
「でもあんな弱い加護が」
「おう、それよ。
単一能力の加護ってのはそれだけに能力が絞られてっから威力の増加が早え。
一日二日ってのはさすがに無理だがよ、それでも三年鍛えりゃハイヒール並みに怪我なぉんぜ。
十年鍛えりゃ怪我に関しては無敵だな。
つうわけでどうだ。俺んとこできっちり修業してみちゃ?」
「よろしいんですか?」
女の子は目をしばたたかせた後震える声でそういった。
「おうよ、今はそこのちみっこも鍛えている所だからよ、ものはついでだ。任せとけ」
「はい、ありがとうございます」
目じりの涙をぬぐいながら女の子は頷き続けている。
話がまとまったみたいだ。
でもたぶん、ここから地獄の特訓フルコースが待っているとかは、想像してないだろうな…
『あら、たいじょうぶよ~。リウたんと一緒、ううん、リウたんよりも強いかな。今までつらい思いをした分、前に進めるのなら、たえられるわ~』
フウカ姉ちゃんが俺の耳元でそうささやいた。
確かにそうだろうな。さすが年の功。
「リウたん、今なんか変なこと考えなかった?」
「え? なんも?」
ほんとだよ。おかあちゃんと同い年だなんて考えてないよ。
「むう~……こうだ!」
うわ、振り向いたら両側からおっぱいが襲ってきた。
これはあれか、伝説のパフパフというやつか?
うわー、マジやめて、息が苦しい!
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