第1話 リウ君復活だ!

第2章 リウ君のそこそこ平穏な日常

第1話 リウ君復活だ!



 ヤッホー、久しぶりー。リウでーす。

 あれからちょっと時間が流れました。

 僕現在10歳です。


 勉強と修業で忙しい日々を送ってます。

 でも久しぶりなので近況報告から。


 あの事件の後、タタリが出てきた穴がダンジョンになっていることが判明しました。

 ダンジョン、迷宮とかそんな感じ。

 穴に入っていくと下り坂があって、そこを抜けたと思ったらいきなり広い空間。そこが一階層なんだって。

 地下階層型の迷宮っていうらしい。


 強そうな冒険者なんかが来て調査が入って、一階層の大きさが大体直径1kmぐらいのいびつな空間だということが分かったんだ。

 その奥にはダンジョンボスがいて、これを倒すと二階層に行く坂が見つかったらしい。

 この二階層も大体同じぐらいの大きさで、さらに下に続いていることが分かったんだ。


 この時点でここが本格的なダンジョンと認定されて、冒険者ギルドが立ちあげられ、冒険者の人が日々攻略のために挑み続けているんだ。


 とりあえず現在、11階層までが突破されていて、9階層までが攻略されている。

 突破というのはボスを倒して次の階層にたどり着くことね。そんで攻略というのはその階層の地図なんかが全部明らかになってすべてが解明されたということらしい。


 そんでこのダンジョンで出てくるのは当然魔物。

 どこから湧いてくるのかわからないけど獣系の魔物がいて、お肉や素材を提供してくれてるんだ。

 あと魔樹と呼ばれる植物系の魔物もたくさんいてお野菜も提供してくれている。

 人と呼んで〝食材ダンジョン〟とか?


 他にも偶に傀儡と呼ばれるゴーレムのような人型が現れることがあって、この傀儡はとてもいい魔石を供給してくれるらしいんだ。

 父さんに言わせるとあの蛇と一緒に出てきた傀儡タタリによく似ているということだったよ。

 劣化版なのかも。


 そんなわけでこの村は、辺境の小さな村から迷宮を抱えた町にグレードアップしました。

 爆発的な人口増加だね。


 え? 父さんてだれかって?

 うん、前にも言ったけどおかあちゃんが再婚しました。

 相手はアーマデウスさん。

 いい雰囲気だったからね。


 そんで赤ちゃんも生まれました。

 女の子です。お姫様です。超かわいいです。名前はステファニア。ステファニア・アドラーといいます。

 あと少しで一歳になります。今はハイハイからつかまり立ちに移行しているあたり。

 マジ天使です。よだれの天使。うん、かわいい。


《ちょっとわからないセンスですよー》


 しーぽんは普段他の人には見えないんだけど、子供のころは見える子もいるみたいで我が妹ステフちゃんには見えているようです。

 そんでつかまってよだれまみれになってます。がしっと捕まえると速攻で口に持っていくんだよね。あむあむ。

 だからしーぽんはステフちゃんがちょっと苦手。


 さて、その僕としーぽんだけど件の迷宮に入っています。

 目的は食材の確保です。


 もちろん下に行くことは禁止されているんだけどね、一階層は周りの森、しかも浅いところとあまり環境が変わらないので許可されているわけ。


 普段は忙しいんだよね、父さんから神威心闘流の修業をつけてもらったり、マシス爺ちゃんから医術をはじめとするいろいろな勉強を教えてもらったりで、しかも地球の学校みたいにほどほどってないんだよね、ほとんど一日仕事。

 でもたまにはおかあちゃんの手伝いみたいな理由で迷宮に潜ることがある。これも修業の一環なんだけど、別の言い方をすると父さんもマシス爺ちゃんも忙しくて手が空かない日とも言う、それが今日。いい息抜き。


「さて、一階層は草原と遺跡のステージだね」


《良いところですよー》


 草原があって、そこに苔むした壁が立っていて全体が迷路みたいになっている。

 最初は迷路かとも思ったんだけど進んでみると違くて、例えば入り組んだ構造の都市があって、そこが無人になって長い年月をかけて草原と森に埋もれた。ような環境と考えればいいかな。


 そして不思議なんだけど空がある。

 青空になっていて、どこまでも続いているように見えるんだ。でもここ地面の中だよね。父さんの話だとどんなに頑張っても天井には着かないんだって。


 だから草原の遺跡にピクニック来たみたいなかんじ。風情があってさわやかでよい場所だと思う。


 その名所を結構たくさんの人が歩いているのが玉に瑕?。


 中には武器を振り回しながら走り回っている人もいる。

 もちろん冒険者の人たちで、獲物を借りに来たハンターたちだ。


「おっ、リウ君、食材集めかい?」


 知り合いの兄ちゃんが声をかけてきた。

 若手の冒険者で遠くからここに移住してきた人たちだ。

 そう言う人も増えてきている。


「こんにちは、クルルさん」


 どっかの侵略者みたいな名前だけど普通の兄ちゃんだ。

 彼らに言わせるとこの迷宮は『すごくいい』らしい。


 なぜなら食うに困らないから。

 僕の手には草が握られているけど、これはお野菜だったりするんだ。リーフレタス見たいなものかな。

 水で締めるとシャキシャキしてちょっとだけ苦味があっておいしい。


 マヨネーズが実にあうのさ。

 マヨネーズの出典? それはあとでお話ししよう。


 ここでは結構食べられる野草が取れるんだ。あと、ジャガイモっぽいやつとか、玉ねぎっぽいやつとか。


 ギルドで買い取りしてくれるけど、それほどお高いもんじゃない。むしろ安い。いっぱいあるから。

 じゃあどうするかというと自分で食べる。


 あと当然お肉もとれる。

 クルルさんの連れの弓使いの人がシュパッシュパと弓を射ると角ウサギが倒れた。

 集中攻撃だね。


 四人パーティーだから。


 つまり、野菜とお肉が自給できるなら食べる心配はいらないのだ。あとは余剰を売ってパンを買って、他には武器屋防具の整備ができればいい。

 ここ一階層だとそれほどお金もかからないみたい。


 なので駆け出しの人は一階層で狩りをして暮らしながら、じっくりと実力を伸ばして次の階層に挑み、そこで同じように…という戦法が取れるのだそうな。


 もちろん下の階層に潜ってたくさんお金を稼いでいる人もいるわけなんだけど、高級お肉とか高級果物とか取れるんだ。なのでクルルさんたちも『いつかは』とか思って今を生きているのだ。うん、偉い。


「そりゃそうさ、この町に出たでっかいタタリを倒した人がいるって言うじゃないか、俺たちもいつかはタタリを倒せるぐらいになって名を上げたいよね」


 たはは…うん、それは僕のことだね。


「じゃあな、リウ、お前はまだ小さいんだから無理すんなよ」


「うん、わかってるー」


 そう言ってクルル兄ちゃんたちは手を振って離れていく。

 ここででっかいタタリが倒されたのは有名な話だけど、それと僕とを結びつけるような話は出ていない。まあ、当然だと思うし、結び付けられても困る。

 ただ僕が子供だから必要以上に過保護に『気を付けるんだぞ』みたいな対応をされるのもちょっと不自由かな。


「まあ、一階層しか行かないからいいんだけどね」


 さてと、僕は獲物の気配を探る。

 地面の下のね。


 角ウサギがいるんだ。見えてる。


 ドンと足を踏み鳴らす、震脚っていうんだよ。父さん直伝。

 武術の基本の一つらしいんだけど、こういうところでやると地中の動物に対する脅しみたいになるんだ。

 そうするとそれに驚いたウサギが走って隠れた巣穴から飛び出してくるわけ。勢いよく、結構高く。なんかばびゅーんって。面白い。


 でもウサギはお肉だ。そこに大きく踏み込んで掌底を撃ち込む。

 手に魔素をまとわせ、当たった瞬間に手を引き戻す。


 これがちょっと難しいんだ。

 成功すると衝撃がすべて角兎だけに叩き込まれて、兎はその場でビビクンとなって、そのあとにどさりと落ちてご臨終。傷もなくといい感じ。なんだけど、ちょっとタイミングがずれると仕留めきれなかったり、兎が吹っ飛んで行ったりする。

 ただ成功すると本当に少ない力で兎をしとめられるんだ。


 今回は失敗しちゃった。

 兎が吹っ飛んで行って壁にぶつかってご臨終だったよ。


「うー、兎は取れたけど…」


《師匠殿にダメだしされるですよー》


 まあ、仕方ない。素直に怒られよう。


「さて、お肉とジャガイモと玉ねぎを確保した。にんじんは菜園で取れるし白滝はないけどこんにゃくはある。

 今日は肉じゃがだな」


 町が大きくなっていいことは調味料とかいろいろ手に入るようになったことだな。こんにゃくみたいなものも買えるようになったんだ。

 マヨネーズもそうだけどね『ありがとう大賢者』みたいな話なのさ。


 さあ、さっさと帰ろうかな。


◇・◇・◇・◇


「おう、リウ、もどったか。今回の公都行きはお前も連れていくことにしたんじゃ。用意しておくんじゃぞ」


「え?」

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