第193話 三者三様
1
「ど、どう思うって、眞昼先輩、何をする気なんですか……?」
「だから、あたしたちの合宿とあっちの旅行、どっちも同じ箱根でやるんだよ。同じ場所でやるんなら、現地で偶然会っちゃってもしょうがないよね」
「眞昼先輩、まさか合流して邪魔する気ですか?」
「邪魔なんて、そんなことしないよ。ただ、あっちが温泉旅行で勝負を決めに来てるなら、こっちもそれなりに手は打たないと」
そう言って眞昼先輩は前に向き直り、不敵な笑みを浮かべる。
目が据わっちゃってるよ、この人。それだけこの恋に覚悟を決めているということなのだろう。
眞昼先輩のスタンスって『自分に振り向いてもらえるまでずっと待ってる』ってことだけど、それは別に『誰と色恋しようが最終的に自分を選んでくれたらそれでいいからじっとその時を待つ』、という楽観的なものではない。むしろ、最終的に自分を選んでもらうためにチャンスはできる限りものにしていかなくてはいけない修羅の道なのだ。
だからたしかに、行き先が被る(しかも同じ日程)なんて奇跡、利用しない手はない。向こうがこの旅行でそういうことを狙っている可能性が高い以上、こちらもできることはやった方がいい。
ただ――
「眞昼先輩、あくまで正々堂々、ですよ。相手の宿に押しかけたり、デートに合流して邪魔するようなことをしちゃったら、相手の男の人からの眞昼先輩の印象が悪くなっちゃいます」
「分かってるって。線引きはちゃんとするよ。あたしから二人の間に割って入って邪魔をするとか、そういうのはもうしない」
「絶対ですよ」
……もう?
「はいはい。ようやく話が前に進むよ。で、邪魔はしないとはいえ何もしないわけにはいかないからさ。この状況であたしができることをまぁ、あたしなりにいろいろ考えたから、夕陽ちゃんの意見も聞きたくて」
「はぁ」
「これはいけそう、とか、これはアウト、とか第三者の目で判断してほしくて」
「分かりました。じゃあ、夕陽からもアイデアがあったら言いますね」
「うん、お願い」
2
「温泉かぁ」
楽しみだなぁ。
「おねぇ、ご飯だってー」
「うへへ、温泉旅行」
前に温泉に行ったのは高校一年の時だっけ。朝華、眞昼と一緒に熱海の温泉旅館にプチ旅行をした。
美味しい料理に気持ちのいい温泉。あれは楽しかったなぁ。
今回は合宿の都合もあって眞昼が行けないから、お土産とか買ってあげないと。あとはせっかくだし秋服は新しいのを買っていこうかな。それに旅行鞄とかバッグも準備して――
「おねぇ! 聞いてる?」
「ふぇ? おわぁ、未空、いつからそこに?」
気づくと、未空が私の斜め後ろにいた。
「びっくりするじゃん」
「今呼びに来たばっかだって。ほら、晩御飯だって」
「ああ、ありがと。今行く」
「全くおねぇは」
私は椅子から降りて戸口に向かう。
あぁ、楽しみ。
3
「うふふふ」
私は窓辺に寄りかかって空の月を見上げる。
誰の邪魔も入らない二人きりのしっぽり温泉旅行で勇にぃを落とす予定だったけれど、未夜ちゃんの参加で計画を一部練り直した。
未夜ちゃんの一番の怖さはなんといってもあの『天然』だ。キャンプの時のような『天然』を炸裂させられないよう、細心の注意を払わねば。
まぁ、今回は最大の
「勝つのは私」
私にとって勇にぃは人生そのもの。
私の生きる目的であり、私をこの世に生かし続けている理由。
あの人に選ばれなければ、私は……
*
こうして、それぞれがそれぞれの思いを胸に、いよいよ箱根旅行の日がやってきた。
*
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近況ノートや私のTwitterをチェックしてくださっている方は知っていると思いますが、
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2巻を買ってくださった皆様、ありがとうございます!
いよいよ3巻から夏休み編に突入します。
3巻は2巻の時よりかはお待たせしすぎずにお届けできる予感……!
情報は解禁許可が下り次第随時発表していきますので、3巻もよろしくお願いします!
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