第5話 剥き出しの殺意と欲望
「なんか凄かったね、
ホームルームが終わり、現在は授業が開始するまでの10分くらいの空き時間。
そんな中で暇すぎる俺は教室の窓際後方の自分の席から、真横の席の
「そうだねー。ひなちゃん、別にあんなに可愛い子に懐かれるのは嫌いじゃないんだけど、いき過ぎだよねぇ」
ちょっと困り眉を作り、それでもこちらを見ながらはにかむ
「本人がそれを気づいてればいいんだけど、それは無理っぽいな〜。あとついでに俺だけ言葉キッついのどうにかして欲しい」
ついでとは言ったが、むしろ後者が俺の中では重要度合いの比率が大きかった。
それを汲み取ってくれた紫月だったが……。
「んー、それは無理なんじゃないかなぁ〜」
「えっ?」
「
「えぇ、そりゃ無いだろ」
ニコニコ笑顔だったが、目が微妙に笑ってなかった。
俺にだけ時々見せる、
「あるものなのよ、女の子にも色々ね。
「置いとかれても困るんだが。きちんと処理して欲しいんだが」
途中で放棄しないで、ちゃんと仕事はこなして欲しいものだ。せめて、なんで
そんな、仕事を放棄した紫月はこんな質問をしてきた。
「さっきの
と。
「あ、あぁその事か……。ええっとだな……」
まぁ、学園の危険人物に呼び出されたとなれば気になって仕方ないだろう。俺だってそうする。
「墨谷先輩のことだろうから言葉にするのも辛い内容なのかもしれないけど、良かったら教えてくれない?」
紫月なりに気を使った言い方なのだろう。
ただ、目がランランとしていた。
つまり、それが意味することは
『 面白そうだからなんか教えて』
と言うことだ。
「あ……。あぁ、そうだ。男手が欲しいからって言って先輩直々にスカウトだよ!家で力仕事を手伝ってるのをたまたま見られていたらしくて、多分それでじゃないかな?」
本当のことを話しても良かったのだろうが、俺は気がつけば誤魔化していた。
「ほんとに……?」
如何にもな俺の誤魔化し文句で怪しく思ったのか、俺に疑いの眼差しを向ける紫月。
「ほんとほんと、ウソついてどうすんのさ!」
それでも俺は誤魔化しを続けた。
自分でも分からないが、誤魔化そうと思った。
何故だろうか。自分のことなのに全然分からない。
そんな、自分のことがわからなくなっている俺の様子にどこか違和感を覚えたのだろうか
「そりゃまぁ、そうだけどさぁ……。なぁんか腑に落ちないのよね。何か、隠してない?」
と、鋭いツッコミをする。
「……なんの事かさっぱり」
「怪しいなぁ……」
やっぱり人の事をよく見ているなぁ……。趣味や私生活で紫月の観察眼は磨かれたのだろう。
普段は大雑把な割に、こういう時は鋭いのが紫月の怖いところであり、それが紫月の魅力でもあった。
「まぁいいや、どうせ隠してないの一点張りだろうし」
「ほっ……」
どうやら諦めてくれたようだった。
これ以上追求されたらどうしようと思っていたので、正直助かったの一言に尽きる。
「それで墨谷先輩への返事はどうしたの?」
むしろここからが本題とも言える質問を紫月がしてくる。
「あぁ、断ってきたよ」
俺がそう言うと
「断って大丈夫だったの?変な呪いとか掛けられたりしない?」
フルフルとまるで自分の事のように紫月は俺を心配してくれた。
こんな美少女に心配されるのだったら、墨谷先輩に呼び出されるのも悪くないと思ってしまった。
しかも、墨谷先輩も墨谷先輩で美人なので一度で二度美味しいというのはこのことかもしれない。
「大丈夫だよきっと。平和的に断ってきたから」
とは言え、墨谷先輩のことだから最後まで安心できないのも事実。
後でちゃんと確認しないと……。
そう思っていると
「それならいいんだけどさ……。てことは今日の放課後空いてるわよね」
突然紫月が今日の予定を聞いてきた。
「ん?放課後?今日は特に部活もないから、暇っちゃ暇だけど。それがどうかしたのか?」
なんのことだろうと思いながら、俺は今日の予定を紫月に伝えた。
するとこれまた突然紫月が爆弾発言をした。
「それじゃあ、さっき言ってた“ いいこと”、放課後に済ませちゃお☆」
「ちょっ、声大きい!殺される!俺殺されるから!」
俺は急いで向かいに座っている紫月に、口を塞ぐようなジェスチャーをした。
「えっ?」
イマイチ、ピンと来ていない様子の紫月だったが、時すでに遅し。
「あの野郎また紫月ちゃんとイチャつきやがって」
「放課後空いてるかだとぉ?ほぼデートのお誘いじゃねぇか、
「
クラスにいる“ 女神・紫月様親衛隊”の皆さんが俺に対して殺意を剥き出しにした。約1人を除いて。
とは言え、紫月の発言で俺は殺意に晒されているのは事実で
「ほらな?」
俺はそれだけ言うと、殺気を漏らしている“ 女神・紫月様親衛隊”の集団の方を指さした。
「あっちゃー……」
集団の様子を見た紫月はやってしまったとばかりに、少し後悔しているようだった。
「にしても相変わらず紫月の人気っぷりは凄いなぁ」
未だ殺意が収まる気配の無い集団を眺めながら俺は紫月に話しかける。
すると、みんなから愛されている女神様・紫月は慌てた様子で口を開く。
「みんな遠巻きから様子を伺ってるだけだから、ちょっと変な感じだけどね……。きっとシャイなだけだよね?仲良くしたいけどどうしたらいいか分からないだけだよね?」
どうやら、皆が照れ隠しで殺意を放っていると、紫月は思いたいらしいが
「いや明らかにこのクラスにお前に対して変な感情抱いてるやついたぞ!?」
流石にこれは誤魔化しようがない事実だろう。
けれども
「そんなはずないでしょ。もっとクラスメイトのこと信じなきゃ」
頑なにクラスメイトを信じようとする紫月。
「いや紫月のことを“ 碧海たん”とか言ってる奴のこと信じろって言われてもなぁ」
そしてそれに対抗する俺。
このやり取りが妙に心地よくなってきたその時だった。
紫月が机をバンッ!と両手で勢いよく叩いた。
「もう!その話はいいじゃない!と・に・か・く!!放課後、絶対に時間空けといてよね!その時に昨日の返事もついでに聞かせてもらうから!」
それだけ言うと、紫月はそっぽを向いた。
あのまま会話を続けていても、平行線のままだったろうし、いい頃合だったと思う。
が、しかし
「昨日の……返事……!?紫月からも何か言われてたってことか……?」
俺の頭の中はそれどころじゃなかったのだった。
昨日、俺に告白してきた謎の黒髪巨乳美少女が元気ハツラツ活発系美少女で学園の女神様な碧海 紫月かもしれないのだから。
*********************
ここまで読んでいただきありがとうございます
面白かった・続きを読みたいと思いましたら、作品フォロー・応援(♡)・レビュー(☆)・コメントなど是非よろしくお願いします
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます