08 歌

雑踏の欠片から切れ切れに

見知らぬ歌が聴こえてくる


僕はその情景を

心に浮かべようと

瞳を閉じる


鼓膜が拾い集める無数の音から

たった一つの陳腐ないとおしい音だけ

焼き付ける


その音の連なりは

やがて僕の海へと流れ込む


海は泡立ち

僕は震え

閉じられた瞳の奥で

星々が瞬くだろう


それは至上の歌


汚された大地から

救い上げられた

至上の歌


僕のためだけに奏でられる

一度きりの歌

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