⑲神楽
――――それは球状に輝く光の塊だった。
大きさは曖昧。
光が強く、どんな実体が輝いているのかイヴ・アリアナにも見通せない。
もたらされる金の光は夜明けの太陽のようにキングスポートを照らし出す。
光を浴びた大気中の窒素は炭素14に変わり、酸素は窒素16に変化。光球に近い部分はさらに原子番号の小さい元素へ変わっていく。
不安定な同位体はすぐに崩壊し、元の元素へ戻った。そしてまた光を浴び、陽電子とニュートリノを撒き散らしながら変異する。
世界を崩す黄金の輝き。
一部の大気は、黄金の球体に吸い込まれる。
中性子の塊にまで変異した後に外部へ放出され、炭素14へ戻る。
その炭素14はダイヤモンド状の構造になり、周囲に輝く雹を撒き散らした。
光り輝く姿で現れたものが、肉の巨塔へ音もなく降りる。
そして頂きのすぐ上に立った。
「
イヴが呟く。
救世主の誕生を報せ、クリスマスツリーの頂点を飾る伝説的な星。
その降臨に合わせ、巨塔が身震いする。
触手の塊が振動し、変化を見せた。
まず巨塔の根本にあった葡萄畑が、その枝を塔全体へ凄まじい速さで伸ばし覆っていく。無数の黄色いY字の実をつけ、塔を飾る。
次に塔へ絡みついたのは、黒いつる草の助けを得て生長するナンテンめいた樹木だ。真っ赤に輝く実で塔のあちこちを彩る。
黄色と赤の輝く実が、まるで長大な電飾のように肉塔を鮮やかに飾り付けた。
クリスマスツリーのように。
それは見事な美しさだった。
エンパイアステートビルを除けば合衆国で最も巨大な建築物と同等以上のスケール。
そこに無数の黄色と赤の飾りが、リズムを刻むような規則性で明滅した。
祝祭のような明るさと異形の美しさで、異界のキングスポートを明るく照らす。
おぞましい肉塊の塔と、華美なる絢爛の光飾。
中空の綺羅星。
輝きの街。
ダイヤモンド舞う無酸素の風。
放射線が遊ぶ夜。
―――――人為も人理も届かない、人外の、キングスポートのクリスマス。
その異形の聖夜で、さらなる異変が連続で起きる。
「……なんだ?」
アリアナが訝しむ。
………無数の飾りを得た面妖なる肉塔の下部から、何かが一対2本生えたのだ。
触腕。
それも無数の。
木の根と内臓を合成したようなそれが幾つも幾つも絡まって、横に大きく伸びていく。消化粘液をだらだら垂らし、夜風の黒鉛とダイヤモンドを食べる。
そんな触腕の、さらに上部から伸びていくものがあった。
黒いつる草だ。
複雑な繊維を形成し、腕のように長く生長する。
表面のあちこちから刀剣状の突起を生やしていた。
こちらも一対2本。
つる草が生える部位の上で、また別のものが巨塔から一対伸びる。
葡萄めいた木。
無数の枝分かれをしながら空中へ展開し、房状に密集するY字の実を何個も垂らしている。
黄色の木の上で生えたのは、一対のナンテンに似た樹だ。
こちらは他のと少し様子が異なり、左側からは細かい枝が密集して膜のようなものを形成しているのに対し、左側からは太い枝が一本だけ巨塔から生え、無残な断面を見せてへし折れている。
その断面から、細かい新たな枝が何本も生え、鮮やかに輝く赤い実をつけていた。
「……キギ?」
イヴは訝しむ。
キギの世界で見た巨樹によく似ていたが、イヴの知るそれとは葉の数と大きさが異なっている。
巨きさの割に葉が小さく、数も多くない。
キギのものはもっと大量に葉が広がり、空からの光を微塵も逃さないほど多かった。
そんなナンテンと葡萄のさらに上から生えるのは、菌類の粘糸を思わせる大量の糸だ。それがまるで翼のように大きく広がり、糸を芯にして半透明の皮膜で覆われている。
透ける巨翼はやはり左右一対の2枚。
そしてその糸と皮膜の翼の、さらに上、最上部に最も近い場所から伸びる一対のそれに、アリアナが思わず呻く。
巨大な巨大な、ウミユリの触手だった。
セントローレンス湾で彼女を追い詰めた、あの大触手である。
空間の裂け目から伸びた部分しか見えなかったカナダでの戦いと違い、大触手の全長は肉塔そのものと同等の大きさだった。それが2本。
触腕。
つる草。
葡萄。
ナンテン。
皮膜。
触手。
6対12枚の、異形の翼が生え揃う。
そして光の球体の頭上に、輝く輪が出現する。
光輪。
内径そのままに外径だけ一気に拡大化し、キングスポート全体を覆う。
桁外れの厚みをしたリングから、さらに魔光が街全体へもたらされた。
ビルの壁や家の建築材、電柱やアスファルト、路面電車のレールが別の物質へ変異していく。化学反応によって発光するもの、崩壊するもの、再生成されるものなど様々に振る舞い、正常なるキングスポートとどんどんかけ離れていく。
イヴ・アリアナはブレードと装甲から同じ魔光を放ち、光輪の輝きを相殺する。
妖しい黄金の光で世界を照らす、330メートル超のその者を、イヴ・アリアナが空中で仰ぐ。
「あれが、神様」
イヴは呟く。
それは光の輪を被る者。
黄金に輝く球体を頂点とする肉の巨塔の躰。
怪奇な12の翼。
天使にも似た、名状しがたい何か。
明星。
「あれが―――――キングスポートの神」
そうだ、とアリアナが頷く。
「あれが私達の神だ」
原水爆少女団の白い実が輝きを高めた。核融合反応はボルテージを上げ、樹とつる草、10本の大触手が歓喜に叫ぶ。
一族に取り憑いていたもの達が、キングスポートの神を仰いで咆哮する。至上の喜び。絶叫でしか表現できない情念の爆発。宿願を哮る。
キギも。
「みんな、ここに来たかったんだ………あの神様に会いたくて」
イヴは理解した。
「1年に1度、この時ここでしか会えないから」
「そうだ」
「会えるまで、ずっと繰り返してたんだ。みんなに取り憑いて、その子供に取り憑いて、ずっと、ずっと、神様に会うために………」
「そうだ。人間世界だったらどこにでも顕れやがるこいつらも、ここにだけは来れねえ。名代の許しを得て、川を渡る試練をパスしない限り」
「………私達、川、泳がなかったよ?」
「ああ。だから今、奉納を求められてる」
アリアナの言葉を裏付けるように、異形の大天使が反応する。
半透明の被膜で包まれた糸の翼を、ゆっくりとイヴ・アリアナへ向けた。
1枚だけで300メートルの長さを誇る長大な翼が、尻尾を含めても14メートルの原水爆少女団へ音もなく迫る。
エネルギー吸収被膜の壁だ。
「やるぜ、イヴ」
アリアナが笑う。肉食獣のそれで。
「何を?」
「忘れんなよ。見せつけるために来たんだろ、私達は。ここにいるのは今までの雑魚みてえな連中とは違う、原水爆少女団のアリアナとイヴだってことをよ!」
イヴ・アリアナ、プラズマジェットの出力を一気に上げる。瞬間的に大加速し、上昇。被膜の翼から離れた。
「他の連中と同じに思われちゃ、ここに来た意味ねえだろぉっ!?」
6本のブレードを強力に励起。先端から破片を発射する。狙った先は、羽枝をびっしり備えるウミユリめいた大触手。
カナダで戦ったそれである。
エンタープライズ級原子力空母に迫るほど巨大なそれへ、光の速度の1%で攻撃が刺さる。420万キロジュールの砲撃が着弾し、人間大の羽枝を薙ぎ払う。
爆薬1トン分のエネルギーを受け、大触手が揺らぐ。
「あんときの借りは返させて貰うぜおい!」
アリアナは吠え、尻尾を大きく上に振りかざす。
球体に負けぬほど黄金色に輝くブレードが、大上段に振り下ろされた。
黄金の斬撃。
200メートル先の大触手に、三日月状の高密度荷電粒子が叩き付けられる。
密集した羽枝を容易く両断し、触手本体を深々と切り裂いた。
巨大触手が声なき声で啼く。
「アリー! 下!」
イヴが呼びかける。
アリアナ、10の大触腕からのプラズマ噴射で真後ろへ瞬間的に加速。
彼女らがいた場所を黒い刃がいくつも通り過ぎる。
人間の背丈ほどもある、つる草の突起。
黒いつる草の翼から伸びた数多の茎が、刀剣状の先端で原水爆少女団を狙ったのだ。
躱された黒剣群は軌道を変え、イヴ・アリアナを追尾する。銃弾よりも早い。
「キギ!」
原水爆少女団の胴体部分から、黒いつる草が幾つも放たれる。
サイズが相手よりやや小ぶりな先端部の突起は、甲冑と同じく白く励起していた。
白光をなびかせて黒剣へ襲いかかる。
白と黒の剣戟。
空を裂き、火花を散らし、高速振動する刃が互いの茎を切り飛ばそうと複雑な軌道を描く。
ある黒剣は大きさに任せて白剣を薙ぎ払い、ある白剣は集団で黒剣の根元に殺到した。
黒剣の超振動の刃が白剣の茎を切り落とし、白剣の高励起ブレードが黒剣の根元を跳ね飛ばす。
大きさこそ負けていたキギだが、与えられたエネルギー量による動きの機敏さと刃の鋭さにより、イヴ・アリアナには一本たりとも近寄らせなかった。
「見ろよ! 剣の速さと力が、貰ってるエネルギー量に依存するのはやっぱり変わらねえ!」
アリアナが嬉々と喚く。
「キギが勝ってるってことは、貰ってるエネルギーはこっちが上ってことだ!」
「あっちは誰から貰ってるの?」
「神に決まってんだろ!」
アリアナは地上を見やる。
クリスマスツリーめいた巨塔の付け根から、無数の触腕が放出された。木の根や内臓に似た消化吸収用の触腕だ。
イヴ・アリアナを正確に追尾するのではなく、その大量さを活かし、どこへ逃げても捉えられる放射状に広がっていた。
「捕まるかよ!」
原水爆少女団、足から伸びる10本の大触腕へエネルギーを注入。先端が強く発光。大出力マイクロウェーブを発射した。
核融合のエネルギーを与えられたマイクロウェーブ発信口は、キングスポート大連合の数倍の出力で電磁波を放出。10本のマイクロウェーブの焦点に触れた触腕はその悉くが爆発を起こして千切れ飛ぶ。
葡萄めいた木が、黄色い実を輝かせる。
房状に密集したそれは光を帯び、散弾のようにイヴ・アリアナへ向けて放たれた。
Y字状の物体が高速で原水爆少女団へ迫る。
「アリー!」
「分かってんだよ!」
アリアナは空中でホバリングし、静止。
6本腕の肘や手首から、羽枝の触手を幾つも生やる。迎撃態勢。
腕の輪郭が全て消える。超高速の連続斬撃。
イヴ・アリアナは自らに迫り来るY字物体の全てを、6のブレードと無数の触手で叩き落とし弾き飛ばす。
カナダでの戦いと異なり、付着して無力化された触手はひとつもなかった。
「すごい! アリーどうやったの!?」
「あいつらは一個一個、無力化できる相手が決まってんだ。セントローレンス湾で見ただろ? 私の触手とキギを同時には無力化できなかった」
………黄色のY字物体は、そのひとつひとつが正確に標的を定めていた。羽枝の触手、つる草の剣、触腕、ナンテンめいた樹。
つまり原水爆少女団を構成する人外のものたちそれぞれに対応した4種類のY字物体を発射していた。
アリアナはそれを見切り、対応していない触手でY字の実を叩き落としたのである。
「どれをどれで攻撃すれば良いってなんで分かるの?」
「教えてくるんだよ、こいつらが」
アリアナは大触腕をくねらせ、愉快げに笑う。
「要するにここでも身内で争ってるのさ、いつも通りに」
迫り来る黒剣と触腕、Y字物体を迎撃し、イヴ・アリアナは飛ぶ。
ウミユリめいた一対の大触手が、羽枝を大量に伸ばして原水爆少女団の進む先を包み込もうと迫った。
6つのブレードの先端を鮮やかな金色に輝かせ、イヴ・アリアナは荷電粒子ビームを放つ。
分厚い羽枝の幕を薄紙のように引き裂き、爆発させる。炭化した羽枝の破片を蹴散らし、6種の中で最も巨大な触手翼へ肉薄するイヴ・アリアナ。
白く輝く実が、激烈に煌めく。
甲冑から激しい放電。炭素の大気が燃える。
「ぅぉおおぉおおぉぉおおおおおッ!!」
超高温のプラズマ火球が、原水爆少女団を中心に拡大した。
激烈な閃光。
至近距離にあった右側の大触手に熱と衝撃の大部分が直撃。330メートルの巨体を完全に破砕しうるエネルギー量が浴びせられた。
が、
「………気が回る奴もいるらしい。クソが」
閃光が晴れた後、大触手は全くの無傷だった。
その表面には粘糸が張り付き、その上を半透明の被膜が一分の隙もなく覆っている。
世界最大級の軍艦に匹敵するほどの巨翼に、エネルギー吸収被膜が展開されていた。
「あれ便利すぎじゃない?」
「ほんとな。私達のと違って、吸収できるエネルギー量に上限がねえんだろうな。完全防御だ」
「どうしよう?」
「かまいやしねえ。3.6トンの核燃料が尽きるまで、見せつけてやるだけだ」
イヴ・アリアナは脚部と大触腕のプラズマ噴出を増やし、その場から高速で離脱する。
へし折れた樹の下げる赤い実が、強烈に輝き出したのだ。
プラズマジェットの出力が上がる。
何十個という赤い実が、一斉に弾けた。
「!!」
炸裂する空気。
橙色や紅色の火炎が縦横無尽に駆け抜ける。
炭素の空気が赤く励起し、輝きの破片となってダイヤモンドの雹に混ざった。
熱と爆発。
先の原水爆少女団の爆発をお返しするように。
――――その中を、踊るように回避機動を取るイヴ・アリアナ。
「はははははっ! あはははははははははっ!!」
アリアナが吠え哮る。熱と爆風が装甲を溶かし、歪み、割れる。
原水爆少女団の甲冑が剥がれ、その奥の高密集触手群が弾け飛ぶ。
10本の大触腕は無数に抉り削がれて悲鳴を上げた。
6本腕から生やした羽枝の触手も千切れ飛び、ブレードも高温に晒される。
首なしケンタウロスが飛翔しながら傷ついていく。
「見ろ! 神! 私を見ろ! 私達を見ろ!」
彼女らは構わず舞い遊ぶ。
キングスポートの神の前で。
「アリアナとイヴを見ろ! 見て憶えろ! 私達を! 永遠に!」
プラズマジェットが慣性を無理矢理に制御し、じぐざぐ飛び回る。
赤い実の爆裂は空間一面に広がり、どこへ飛んでも猛威の牙を突き立ててきた。
貯め込んだ物質とエネルギーで甲冑を修復しても、赤い実の炸裂が襲い剥がす。
いったん上空へ飛び上がり、光輪ぎりぎりまで近付いた。
黄金の光が甲冑を溶かす。
それに構うことなく、背部の2本角を大きく変形させた。ノズル状に。
「私達を、原水爆少女団を見ろ!!」
ノズル内部で白い実が弾け飛ぶ。
轟音が爆発。真っ赤な巨柱が天の輪へ突き刺さる。原水爆少女団は音速の8倍の加速度で折れたナンテンへ突進した。人間大の黒剣が彼女らの針路を阻む。亜高速の荷電粒子ビーム。剣の壁を蹴散らす。
15トンがナンテンめいた翼へ激突した。
「っらあああぁあああああぁあぁあぁぁっ!!」
枝葉を打ち砕き、幹をへし折り、翼に大穴を開けて地面へ落下。
葡萄畑に盛大な土煙をあげた原水爆少女団へ、黒剣と触腕の群れが殺到した。
地上から撃ち上げられた荷電粒子ビームとマイクロウェーブが、それらをことごとく叩き落とす。
「見ただろ神! 献上した後の残りカスみてえな力じゃ、私達は止められねえ!」
咆哮する原水爆少女団。
白い実が発生させるエネルギーで、装甲や肢体が瞬く間に修復されていく。
「歴代の勝者達が捧げた力を使えよ! そうでなきゃ、私達からは何も取れねえ!」
アリアナは叫ぶ。ぎらぎらと異色の双眸を燃やして。
「私達に、神の力を見せてみろ」
――――――天の輪が、輝く。
黄金の光をあまねく天下の諸々へ注いだ。
変異と崩壊を受けるキングスポートの町並みが、蜃気楼のように曖昧になっていく。市街地を構成する物質の陽子数が一気に減り、大量の中性子を抱える同位体へ変異したのだ。
その魔光は地上の葡萄畑やつる草、樹木らにも及び、彼らの表面を蝕んでいく。苦しげに蠢く草木達。
そんな光の輪が、半径を一気に狭める。
光球の真上へ。
恐ろしいほどの光の密度で。
そして、光の球体も変化を見せる。
球体の下部分に、光の渦が発生した。
濃さが異なる黄金色を無数に重ねた、光の渦。
変化していない周囲の部分と合わせ、まるで眼球のようにも見える。
光の魔眼。
それが、原水爆少女団を見下ろした。
イヴ、アリアナの2人と、"目"があった。
「―――……!」
高密度に圧縮していた光輪が、蹴り飛ばされたように下方へ放たれる。
光球を貫く。
眼の中心から光の柱が突き立った。
イヴ・アリアナが対応する暇もなく、肉塔よりも大きな柱が天と地を結ぶ。
荷電粒子の照射による干渉はエネルギー量の違いにより意味をなさない。光の濁流の圧力は反発力を圧倒的に上回っていた。
原水爆少女団の甲冑が崩壊する。
キングスポート大連合の大触腕も中性子へ還っていく。
全身を構成する繊維状の肉質が電子結合力を失い、ただの核子の集まりへ強制的に変換される。
原子崩壊。
そして光の柱の中心地である地上から、一気に光の輪が広がった。
光の輪は地上のあらゆるものを呑み込んで薙ぎ払い、黄金の光を今度は天に向けて放ち始める。
市街は建造物はおろか地形さえ抉り取られ、大気も土も岩盤も崩れていく。
キングスポートは光の輪によって崩壊した。
形を保っていたのはセントラルヒルに佇立する肉塔と12枚の翼、光球、
そして、
「―――うぅぅぉぉぉおおぉおぉぉぉぉおあおおぉあおおぉあおぁおおぁおぉっぉおおおおおおおおおおおお!!」
原水爆少女団。
崩れゆく躰から、白い実がこれまでで最大の輝きを放つ。全力稼働。イヴ・アリアナが光そのものへ変わっていく。
D-3He反応とD-T反応を一斉に促進。陽子線と中性子線の吸収制御を放棄する。吸収しきれない核融合エネルギーを外部へ垂れ流した。
激烈な閃耀。
超音速で拡大するプラズマの火球。
生まれたのは可視光と不可視光が混ざった様々な高エネルギー電磁波、輻射熱、放射線、轟爆、キノコ雲。炭素の大気が巨大なプラズマとなって膨張する。
光の輪により崩れかけていた町は、その全てを超高温高圧の光に呑み込まれる。
1メガトン級水素爆弾と同等の破壊力。
破壊の熱と光が、何もかもを打ち砕く。街も、道も、崖も、丘も、港も。
12枚の翼を持つ天使のようなものも。
光球も。
光の輪も柱も。
あらゆるものが。
―――――キングスポートが消えた。
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