誰も彼も、みーんな猫に見えますの~転生悪役令嬢は猫に婚約破棄をされても可愛いとしか思えない~

九鈴小都子

プロローグ

ぱちりと目を開けたとき、一番はじめに思ったことはお腹がすいたということだった。彼女は何かを考える前に、空腹という圧倒的な欲求を意思表示することにした。



「ほやぁー!ほやぁー!」



と頼りなくも大きな泣き声をあげる。すると、誰かが彼女を上からのぞきこんだ。しかし、ぼんやりとした視界ではっきりとした姿はよく見えない。どうやら近眼になったようだ、と空腹を切々と訴えながらも彼女は思った。



「お腹がすいたのですね、お嬢様。いまお乳をあげますからね」



声からして女性だろう、その人は彼女を大切なものを扱うようにそっと抱き上げた。だんだんと上に上がって行く浮遊感、近眼でも見えるくらいまで女性の顔が近くなったとき、彼女は本当に、ほんの一瞬だけ空腹を忘れて目を見開いた。


猫だ。


すぐに意識は空腹に乗っ取られた。女性が差し出したおっぱいに吸い付く。柔らかく、ぷにょんとして、ふわふわの毛が彼女の顔に当たり……。


のちに欲求をある程度コントロールできるようになってから思ったことは、「おっぱいまで猫であった」ということだった。

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