第14話

「(ふぅむ―――アウラ様と昔からのよしみがおありだとは……すると今……“あの場所”に居られるのは『この方』の“身代わり”―――“替え玉”と言う事になりますね。(ムヒ)

それにしても……ウフフフフ―――この方達、思っていた以上に興味深い面白い……この世に生を受け、200余年……こんなにも充実した日々を送れることになるなんて―――改めて感謝申し上げますね……)」


               ――大天使長様――


実は、ササラにはこれまでにも『このお話し』のなかで語られていない『ある経歴』がありました。


それは―――ササラ出生の時にまでさかのぼるのですが……


ササラと―――その母親ノエル……ササラがノエルの娘として産まれて来る瞬間、その時ササラは産まれ出てくるそのタイミングが、早過ぎた―――つまり『早産』だったのです。

予定されていた出産日より、“早い”―――この事実が示す事とは……


血が―――足らない……   それも、圧倒的に……


だから本来ならこの事が原因でササラは死ぬ運命さだめとなっていたのです。


けれど、ここで奇蹟が起きていた―――


それと言うのも、ササラ出産の現場に立ち合ってくれた存在のなかに、この魔界せかいを支える“三柱みつはしら”の一柱ひとはしらである―――【大天使長】なる“存在”が……


なぜ―――魔界せかいを支えるさんものはしらいちが、多寡たかだか獣人の出産に立ち会っていたのか……


その“事実”は、『今』―――語られるべきではありませんが……


現実だけを見つめると、その者の施しにより死の運命さだめにあったササラは生命を吹き込まれた……

なぜ―――彼女ササラが【黒キ魔女】と呼ばれるのか……

いまだ披露の日の目は見ませんが、『天使言語術エンジェル・ロア』を行使詠唱出来るあの噂は本当なのか……


それはまあ、それで良かったのでしたが―――……


        * * * * * * * * * *


「あ゛~~!ササラったら、またヒヒイロの膝上に、“ちょこん”と乗っかっちゃってぇ~~!ちょっとは私にも代わりなさいよぅ!」

「ここは、私の特定席なのです―――」(ムヒ☆)

「いや……ちょっと待ってくれ―――って……お前がオレの膝上に乗っかったら……」

「ハ?そりゃなにか??私が『おデブ』だって言いたいのか??」

「い……いや―――そうとまでは~~」(ハ・ハハ……)

「ヒィ君も、はっきりと、この際だから言ってあげたらどうなの……『その通り』だ―――と。」

「ハハァ~ン?私ゃヒヒイロに聞いてんダヨ―――誰も、あんたからの答えを求めてやしない―――ての!」

「いいえ―――私のげんこそが、真実を言い辛いヒヒイロ様の代弁をしているのです。 あなたの方こそ、迷惑そうにしているヒヒイロ様の表情―――よく読み取りなさいな!」


「にゃにお~~―――う!?」

     ☆☆~バチバチ~☆☆☆ vs ☆☆☆~バチバチ~☆☆

「なんですかあ~~―――?」


「(……)なあ?ササラ殿―――この2人は、いつもこんなのか?」

「いつもは、これ以上の死闘デッド・ヒートを繰り広げているモノでしゅけどねえ~?」(ムヒヒ)

「オレ……もうやだ―――耐えらんない……」(シクシク)


アウラが知っていると思われる事情とは、また異なる表情を見せるシェラザード……そんなものを見せられて半分呆れもする―――のでしたが、反面、自分の知らなかった彼女を垣間見ることが出来、どこか満足気にはなったようです。


それはそれとして―――


「皆―――今日はどうもありがとう。 私もここの処『姫』としての公務が忙しくてな、息抜きのつもりでここへと寄ったのだが―――息抜き以上のモノを見させてもらった。 私はまだここへと留まるつもりだから何か相談があるのなら遠慮なく訪ねてくれ。」


こうして―――ネガ・バウムの姫君であるアウラを囲んでの交歓会は終わりました。


そしてこの後―――“運命”と言う名の歯車は、いびつな音を立ててきしみ、『お話し』も加速的に進んでいくのです。



#14;暗転



それは―――かの『交歓会』より、幾日か経った頃の事……自分を見つめる“視線”に意識し始めた頃の事でした。


「(この“視線”―――とうとう“あいつら”が動き出しちゃった……か、―――ったく……あんちくしょう、いくら“上”からの言いつけって言ったって『とり』なんて言う得体の知れない連中を雇う飼う……って、正気の沙汰じゃないよ。

それに……これはヤバいかなあ……この“視線”て、絶対っしょ、おやじのことだから『邪魔する奴の生死を問わない』くらいのことは言ってるだろうし……だとしたら、猶予は残されていない―――ってこと?)」


シェラザードも、『彼ら』の事は知っていました。

知ってはいましたが、この時は少しばかり妙なことをうそぶいていたのです。


そう……それは、『とり』と言う正体不明の者達を、雇い入れたのは“上”の存在だ―――と、言う事。


“上”………………? 


王国の『王女』であるシェラザードの、実質上の“上”の立場と言えば、実父である『国王陛下』しかいないはず―――


なのに………………?


ならばなぜ、“お父様”だとか“父上”だとか、言わなかったのか……

しかも、ではまるで『何者かの意思』が介在されている事が臭わされていた……


けれど、が真実―――現在のエルフ王国が証し……だからこそ、王女シェラザードは―――城から出奔したかった自由を求めた……


それとまた、不可解な事実も浮上してきたのです。


自分を見つめる“視線”のお蔭で『とり』なる“暗部”が動いている事が知れたのですが、命令された内容は知らないはず―――なのに……大凡おおよそのことが察することが出来ていた。

そう―――シェラザードは、この“視線”の主の事を知っているのです。

道化どけた表現はするものの……その―――血溜りの様な『深紅』の瞳に隠された、“殺意の衝動”……それこそが『とり』のかしら―――モズの正体……


そしてこの者に下されためい―――

『お前達の前に立ちはだかる者の生死は問わん』……


しかし―――このめいを発した人物は……


           ?   ??   ???


それはそれとして―――

かの“視線”を感じたあとシェラザードは、マナカクリムの外れにある森に姿を見せていました。


そして、こちらも―――……


「ウフフフ~~~ン☆ 王女様みぃ~っけ☆」

「やっぱりね―――あんただったか……モズ。」

「いちおー--あたしの仲間には、他の場所を当たるように言いつけといたよ~ん☆」

「―――で、あんた自身は、ここマナカクリムに“当たり”をつけといた……と?ホント―――嫌らしいまでの勘してるわ……。」

「お褒めにあずかり、キョーエツシゴクてやつぅ そ~~んじゃ帰りましょうか―――」


             ―――王女様―――


その『』は、“少女”―――少女ではない……

かと言えば、“少年” ―――少年ではない……

性別は―――“なく”……

そしてまた、『不死属性』―――だとするならば?


この者の正体とは――― 一体……?





つづく

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