第75話王子とテオドール

テオドールは王子がしっかりと帰るように見張るために王宮へと共に馬車に乗り見送る事にした。


「テオドール、お前の妹は面白いな。お前が気に入るのもわかる気がする」


王子が楽しそうに話しかけてきた。


「王子…マリーの良さに気づいていただけたのは大変嬉しいですが…マリーは私の妹ですからね」


「は?わかってる。別に寄越せなんて言ってないだろ」


「寄越せ…そんな事を言われたら、私はどうなるか分かりませんから…」


「大袈裟だなぁテオドールは!」


全然笑っていないテオドールの肩をバンバンと叩く。


テオドールはその手をパンと払うと…


「冗談ではありませんから」


「またまた!」


グレイ王子はテオドールの反応にまだ冗談だと笑っていた。


はぁ…やはりマリーに合わせるべきではなかった。


テオドールは王子の反応にため息をつく。


マリーは自分よりも幼いのに時折大人のようなドキッとする事を言ったりする。


あんなに可愛くていい子なんだ…会わせたら絶対に気に入ってしまうと思っていたがこんなにも早く反応するとは…


テオドールはもう屋敷に来てもらうのはやめてもらおうと心に誓った。


王宮に着くと王子が元気よく馬車から降りて振り返る。


「じゃあテオドール、また明日!」


そう言って手を上げて歩き出そうとする王子に慌てて声をかけた!


「王子!また明日とはどういう事でしょう?まさかまたうちに来る気じゃ…」


「もちろんそのつもりだが?」


「王子…いくらなんでも続けて来るのはどうかと思いますよ、それに王子としてやるべき事が沢山ありますよね?」


暗に王子としての勉強をしろと言うと王子はにやりと笑った。


「大丈夫だ、やるべき事はやっている」


王子の言葉にただのお調子者の王子ではないのかと少し見直した。


「王子がちゃんとすべき事はしているのはわかりました…が!別にうちに来る必要はありませんよね?用があるなら私が伺います」


「いや別にいい」


王子が必要ないと首を振った。


「王子ともあろう方が毎回出向く必要はございません!」


「いや気を使うな、私は大丈夫だ」


「いえ、気を使ってなといません。はっきりと言います。家に来られると迷惑です」


テオドールは遠回しにはこの王子には伝わらないとはっきりと言った。


「さすが、あの妹の兄だな。遠慮のない所がそっくりだ…お前の事も嫌いじゃない」


「それはありがとうございます。ではそういう事で…」


テオドールは恭しく頭を下げると馬車を走らせてもらいマリー達の待つ家へと帰って行った。


「ふーん…なるほどね、俺にも合わせたくないってくらい大切なわけだ」


グレイ王子はテオドールを乗せた馬車をいつまでも見つめていた。

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