第54話友
「よ、よかったです。喜んでいただけて…」
猫神様がほっと胸を撫で下ろした。
するとふわぁっと体が薄くなってきた…
「あっ!すみませんマリーさんお時間のようです!あんまりこっちの空間にとどまってしまうとマリーさんによろしくなくて…」
「そうなんだ…なら今度は私の世界に遊びに来てください!」
「え…いいんですか?」
「もちろん!それとも猫神様は来れないんですか?前世の世界で買い物してたって言ってたけど…」
「いえ!大丈夫です!誰かから誘われた事なんて…無かったから…」
嬉しそうに顔を緩ませた。
「必ず遊び来てくださいね!」
「はい!すぐには無理ですが必ず!」
消えゆく中私は必死に手を伸ばした。
「私達、もう同志ですね!」
「同志…?」
「友って事です!志しが同じ仲間です!オタ友!」
「はい!友…達ですね」
「じゃあまたー…」
マリーの言葉と笑顔が遮られるが猫神様の心にはしっかりと届いた。
「はい…また〝ね〟。マリーさん、あなたに幸多からん事を…」
猫神様は始めて出来た友の幸福を祈らずにはいられなかった。
◆
私は気がつくと勉強部屋に戻っていた。
そして見るとその手にはしっかりとあの本が握られている。
「ふぁ~!!」
ばっ!と本を掲げて眺めると…
男の人が抱き合った素晴らしい絵がこちらを見て微笑んでいた。
「久しぶりのBL本だ…」
内容はほぼ暗記していた…パラパラと本をめくると…
「題名がかまって下さいなんだから…この文字がそう読めるって事か…」
私は夢中で文字を置いながら本をめくった!
その頃シリルと家庭教師のラクターは屋敷の主ジェラートの元に向かっていた…
「お忙しいところ恐れ入ります。ジェラート様にどうしても御報告しなければならない事が出来まして…」
うやうやしくラクターが頭を下げるとジェラートを上目遣いに見上げた。
「なにかな?また子供達の事で何か問題でもありましたか?」
ジェラートは持っていた書類を机に置くと前を見て話に集中した。
「はい、シリル様とマリー様の事です」
「それは昨日話しましたよね。マリーも一緒に勉強させると…」
「その事では…それに#ちゃんと同じ部屋__・__#で教えていますわ!」
ラクターは声を高く甘えるように答えた。
「お父様…僕も発言よろしいですか?」
そんな媚びを売る様子に嫌悪感をあらわにラクターを見ていたシリルがそっと手を上げる。
「なんだい?シリル」
ジェラートはラクターには反応せずにシリルに笑いかけた。
「この方は…勉学の方は少しだけなら出来るかもしれませんが僕には合いません…それにマリーにも…」
シリルがジロリとラクターを見つめた。
「少し!」
ラクターは馬鹿にされた事がカチンと来たようだ!
「ん?どういう事かな?」
ジェラートは二人を交互に見ると
「ジェラート様!テオドール様は大変優秀で教えるに値しますがこちらのシリル様とマリー様はどうかと…こんな事言いたくありませんがジェラート様に似ていないのでは?」
「何…」
「ジェラート様と言うより奥様似なのではないかと…」
「ほほう…」
ジェラートはこめかみをピクピクさせながらもどうにか落ち着いてこの女の話を聞いた。
「シリル様は確かに優秀ですがそれも一時だと思います!このままでいたら落ちこぼれる事間違いなしです!あのマリー様の様に!」
「マリーが落ちこぼれ…?」
ジェラートは自分の耳を疑った。
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