第14話テオドール視点2

そんな母はとうとう体を壊して自分の実家の領地に療養する為に帰されることとなった…


後から知ったがどうやらフローラ様にかなりの嫌がらせをしていたらしい…肉親として恥ずかしい…


しかしそんな一人になった私に父は申し訳無さそうに声をかけた。


「すまないな、テオドール。お前の母はしばらく帰ってこない、まだ小さいお前を一人にさせるのは心苦しいが…出来たらフローラやマリーを本当の親として接してくれ、あれはとても優しいぞ…」


そう笑う父にイラッとした。


自分の母を遠ざけた者を家族と思えだと…しかも唯一の肉親だと思っている父もその妹やらに夢中の様だ…


一体どんな女だ…


女に良い印象のない私は父とフローラ様が出かけてる隙をついて一人勉強の合間を抜け出しその妹とやらを見に行った…


その赤子はメイドの女とトーマスに守られ一人悠々とベッドで寝ていた…


ふてぶてしい奴だ!


キッ睨みつけてやると赤子は間抜けな顔をして自分を見つめ返す。


なかなか泣かない赤子にこっちが目を逸らしてしまった…


何を考えているか分からない赤子の気持ちをトーマスに聞くと、私の事を兄と思っているのではないかと言う…


これが妹…もう一度顔を確認すると今度はへらっと笑いかけられる。


人に笑いかけられた事など久しぶりだった。


周りにいるのは厳しい講師達ばかり…メイド達も笑わない私に笑顔を向けることなく淡々と仕事をこなしている…


不思議と温かくなった胸を押さえて、まだ小さい事もあり許してやろうという気持ちが湧き上がった。


まぁたまに偵察に来ればいいかなと部屋を出ようとするとトーマスが赤子が私を呼んでいると言う。


しょうがなしにまた戻ってやるとその赤子は私の顔を見た途端に嬉しそうに笑いだした…


自分が顔を見せた事をこんなにも喜んでくれる人がいるなんて…


母など最後の方は私を見えないものでも扱うかのように無視をしていたのに…


小さい手を必死にこちらに伸ばしているのでその手をそっと触ろうとすると…


ギュッ!


自分より小さい手が私の指を掴んだ。


その手は柔らかく温かい…その手を通して全身に血が通うような衝撃が走った…


私はその日から時間があると妹のマリーの部屋を訪れるようになった…なるべくフローラ様と会わないように気をつけながら…

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