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どうしてあの時 気にも留めなかったのでしょう

いえ 気にはなってはいたのですが

大切なこととは 思わなかったのです


彼の女性は そして 唐突にまた喋り出しました

「修道女様 わたくしは聞いたのです

  放蕩としてさ迷う中で ある噂を」


今度は声を潜めて 司祭様まで届いたであろうか

「修道女様 あのお方 今では立派な伯爵様は

  確かに あの時 旦那様と分かっていらしたのです」


それは とんでもない告白

「旦那様は 全てご存知の上でございました

 あのお方は あっちこっちに借金がおありなことを


 それも あの悪名高き金貸からもですよ

 それでどうしても お金が欲しかったのです

 あの手この手で捲し立てて


 しかし 旦那様は 一切 その手にはのらず

 それで邪魔になったのです

 奥様とお嬢様なら その・・・たらし込めると」

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