第14話 サムジャ、冒険者ランクを検討される
「そう、個人的には思ってるんだが、ギルドにも色々制約があってな。中々そうもいかないのが現状だ」
いきなりBランクと言われて躊躇ったが、どうやらそうはならないようだ。驚かせてくれる。
「ギルド長、そもそも冒険者はCランクになるために一度試験が必要ですからどちらにしてもいきなりBランクは無理です」
「わぁってるよ。それにだシノ、問題はお前の実績が低いことだ。だから実際のところはEランクに上げる事もできないのさ」
「シノ君は今のところ正式に受けた依頼がないのよね……」
シエロが困ったように眉を落とした。言われてみれば最初のシャープウルフはあくまでテストとしての仮の依頼みたいなものだった。
冒険者として登録する前のことだし当然正式な実績とはとられない。迷宮にしても結局あいつらは俺が参加すると報告していなかったのだからこれも実績としてはカウントされないのだろう。
冒険者としてのランクというのは総合的に見て判断されるからな。だからこそ依頼をどれだけこなせたかは重要なファクターとなる。
「とは言えこのままFランクは流石にな。だからあと数回きっちり依頼をこなしてくれたらEランクになれるようにしておこう」
あと数回で上げてくれるのか。
「もし数日以内にそうなったら新記録ね。普通FランクからEランクに上がるまでは平均的に見ても数ヶ月。この町だと一番早い人でも一ヶ月よ、それでも凄いことなんだけどね」
なるほど。確かに冒険者のランクを上げるのは中々に大変だ。もし前世や前前世とあまり変わってないならFランクとEランクでも受けられる仕事にかなりの違いが出てくる。
Fランクあたりだと単独だと薬草採取とか雑用しかなく、護衛などの依頼では条件で弾かれることも多いからな。
「とりあえず、そういうわけだから頼んだぞ。それとシエロを専属としておくから何かあったら彼女を頼ってくれ」
「ん? 専属?」
オルサの発言に疑問符が浮かぶ。
「そうだ。文字通りお前専属の受付嬢ってことだ。だから今後は依頼を受けたい時もこなした後も彼女を頼るといい。うちでも優秀な受付嬢だしな。専属の場合は専属先の相手を優先してもいいことになっているから便利になるぞガッハッハ」
そう言って笑いならがオルサが戻っていった。ふむ、専属とは初めての話だ。サムライやニンジャをやっていた時の待遇は決していいものでもなかったからな。
「何か私も急に決まっちゃったけど宜しくねシノくん」
「あぁ、でもいいのか? 迷惑なら断ってくれてもいいんだぞ?」
「迷惑なんてことはないわ。それに専属になると私にもいいことはあるのよ」
そうか、それなら良かった。
「おい、あいつシエロさんを専属受付嬢にしちまったぞ……」
「マジかよ、たしかFランクだろ?」
「あぁ、しかもサムジャとかいうわけのわかんねぇ天職持ちの癖に……」
「一体どんな卑怯な真似しやがったんだ……」
うん? 何か妙に他の冒険者からの視線が向けられている気がするな。何か空気も淀んできた気がするし。
……まぁいいか。
「それとシノくん。今回の迷宮攻略の件、正式な依頼ではなかったけど報酬が出ているわ。ダンジョン攻略分で五十万ゴッズよ」
「こんなに出るのか?」
「そうね。ドラウグルは放っておいたらどんな悪影響が出たかわからない魔物よ。アンデッドを次々増やしかねないし」
確かにあの三人もアンデッド化されていた。それは確かだけどな。
「ところでこの五十万ゴッズはどうするのかしら?」
「あぁ今回は受け取っておこう。ある程度貯まったららまたお願いすると思う」
シエロは仕送りをするかどうか気にしてくれたんだろうな。
だが月に無料で仕送りできる回数には制限がある。だからある程度まとめてからでないとな。
「わかったわ。依頼はどうするの?」
「明日また見るとしよう。薬草採取あたりになるかなとは思うけど」
やはり冒険者として最初に受けるとしたらそれだろう。
「わかったわ後はなにかあるかしら?」
「特に、いや、そういえばダンジョンで倒した魔物から武器を入手したんだが買い取っては貰えるのかな?」
「う~ん、うちは素材や魔物の肉は買い取れるけど武器なら武器屋に持っていった方がいいと思うわ」
そうか。確かに専門の店の方がいいよな。
「わかった。なら前に顔だしたところにでも行ってみようと思う」
そして俺はシエロに別れを告げてギルドを出た。帰りに武器屋に寄ってみることにする。
「おう、あんたか。どうだい調子は?」
「まぁまぁかな。冒険者にはなれたよ」
「それはめでたいな。しかしその天職で随分と頑張って、て、あんたその腰にあるのもしかして刀か?」
武器屋のおっちゃんが俺が腰に吊るしている刀に目をつけて言った。流石に武器屋だけあってそういうことにはよく気がつく。
「ダンジョンでお宝として手に入れてな。これが何とあの
「へぇ、それで、それは凄いのかい?」
俺はずっこけそうになった。やっぱり刀の知名度は低いようだな……
「なにはともあれ自分にあった武器が見つかってよかったな」
「そうだな。それで、今日きたのはこの刀以外で手に入った武器を見てほしくてな」
「ほう、ダンジョンの戦利品ってやつか。それは楽しみだな。早速見せてもらっても?」
「あぁ、なら出そう」
そして俺は影風呂敷からあの斧を出したのだが。
「ちょ、今一体どこから出したんだ?」
「忍法で出したんだ」
俺が忍法を使って物を出したことに随分と驚いているようだ。
「そんな便利なスキルがあるなんてな。で、この斧か……う~ん、これはヤバいな。見ただけでわかる。あんたこれには触れたかい?」
「いや、なんとなく触らないほうがいいかなと思ったから直接は触れてないぞ」
俺がそう答えると親父さんはホッと胸をなでおろした。
「いいか? この斧は呪われている。触ったら何が起きるかわからんような代物だ」
それが武器屋の親父さんの回答だった。まさか呪われているとはな。
「そうなると買取は難しいか?」
「勘弁してくれ。こんな危険そうな斧うちじゃ扱えないぜ」
やっぱりか。呪われている物を好き好んで買い取る奴はいないもんな。いや、でも待てよ。
「今、うちじゃと言ったがどこか扱えそうな場所は知っているのか?」
「場所というかコレクターだな。この手の呪われた装備を好き好んで集めているようなコレクターもいたりする。どうしても売りたいならそういう連中を探すんだな」
なるほどね。とにかく呪われた品をずっと置いておくわけにもいかないよな。一旦回収し塩漬けにすることにきまった。
そして武器屋の親父さんにお礼を言って宿に戻ることにした。
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