第6話 サムジャ、依頼を見る
「はい。それじゃあこれがギルドカードよ。無くしたら再発行手数料として二万ゴッズかかるから気をつけてね」
どうやら俺は冒険者として問題なしとされたようだ。しかし見習いかと思えばFランクとなっていた。
「見習いではなかったのか?」
「初めての仕事で単独でシャープウルフの群れを倒すような人を見習いにしておけるわけがないわよ。本当はもう少し上のランクでも良さそうだけどギルドは経験も参考にするからとりあえずはFランクから始めてもらうわね」
なるほど。どうやらあの魔物を倒したことが随分と評価されたようだ。
「シエロさん、査定が終わったようです」
「ありがとう」
彼女と話していると他の受付嬢がやってきて紙を手渡していた。ふむ、今のが名前か。
「……そういえば名乗ってなかったわね。私はシエロよ」
受付嬢から名前を教えてもらった。シエロか。改めて見るが空のように青いロング髪の綺麗な女性だ。キリッとした目つきなのでちょっと怖い印象を与えるかもだが。
「冒険者としての規則を伝えるわね」
そしてシエロが冒険者について教えてくれた。もっとも転生前から殆ど仕組みは変わっていないから大体はわかった。基本的には罪になるようなことさえせず依頼をしっかりこなせば問題ない。
「冒険者ランクは実績を見ながら判断して適当とみなせば昇格。逆に昇格しても不適当と判断したら降格もあるから気をつけてね」
「わかった。君の期待に添えるよう頑張ろう」
「――そう」
うん? 何だろう今の間は?
「コホンッ、それで今回の報酬ね。先ず素材の買取り金額はシャープウルフ十匹分で十五万ゴッズ。討伐指定もされていたから討伐報酬が五万ゴッズで合わせて二十万ゴッズね」
討伐指定というのはギルドがこのままでは危険と判断された魔物がいた場合に指定される魔物のことだ。個別に依頼を引き受ける必要はなく、倒して素材を持ち帰れば支払われる。
「それとセレナ草は本来の予定より多い二百束、ハイセレナ草は百束ね。セレナ草が一万ゴッズでハイセレナ草は価値がその二十倍だから十万ゴッズとなるわ」
驚いたな。この依頼だけで三十万ゴッズ以上も手に入るとは。
「それじゃあ支払うわね」
「ありがとう。ところでどこかで仕送りって出来るかな?」
「そういえば村に送りたいって言っていたわね。冒険者にはそういう人もいるから月三回までならギルドでも受け付けてるわ。それ以降はお金が掛かるけど」
何と、今はそんな制度が出来ていたのか。
「なら頼む。三十万ゴッズは送って上げて欲しい」
「……それなら一万ゴッズしか残らないけどいいの?」
「支度金がまだ残ってるから大丈夫だ。お世話になったし返せる時に返しておきたい」
冒険者というのは危険な仕事だ。いつどうなるかわからないからな。それにサムジャだと装備品を揃えることがない。正確には揃える装備品が手に入らないだが、土錬金もあるしとりあえず費用の面では抑えられる。
「わかったわ。それにしても義理堅いのね。なら三十万ゴッズはしっかり送り届けるわ。これに送り先を書いておいてね。後、これが残りの一万ゴッズよ」
「ありがとう。本当に助かる。最初に出会えた受付嬢がいい人で良かった」
「……馬鹿ね。別に私じゃなくてもこれぐらい、し、したわよ」
うん? そっぽを向かれてしまった。もしかして余計なことを言ってしまったかな?
「そ、その、ところで依頼はどうするのかしら? もう今日は無理かもだけど……」
依頼か。確かに冒険者としてやっていくなら大事なことだ。
「今日受けるかはわからないが、ちょっと見てみる」
「そう。まぁ、依頼書は朝の方が貼られている数は多いのだけどね」
そうだな……それは前の知識でもそうだった。基本的に冒険者は朝に依頼を受けるのでその頃に貼られている依頼書が多い。
もっとも朝の依頼書は取り合いに近い。多いと言っても割の良い依頼はすぐに持っていかれたりする。
だからこの時間に残ってる依頼をチェックするのも悪くはない。中には新規で入った依頼が既に貼られていることもあるしな。
とにかく掲示板を確認してみる。色々な依頼が貼ってあるが、この時間で余っているのは制限付きも多いな。
制限付きというのは受けるランクなど条件が定められている依頼のことだ。低ランクだと危険だと判断されたり依頼者の希望という場合もある。
俺はまだFランクだからか受けられる依頼は多くないな……うん?
依頼
・連続通り魔事件の犯人探し
依頼人
領主依頼
内容
オダの町にて発生している連続通り魔事件の犯人について情報を求めています。勿論犯人を捕まえられれば一番ですが、信憑性の高い有力な情報ならば情報料も出ます。
期限
無期限(犯人が捕まる及び死体が発見された時点で終了)
報酬
犯人を捕獲できたら百万ゴッズ。生死は問いません。情報料は情報による。
連続通り魔事件とは随分と物騒なことが起きているんだな。敢えて受注する必要はないようだが、そもそも犯人像が掴めてないようだ。これでは生死問わずといっても先ず犯人がわからないだろう。
ただ、何となく気になるし気には止めておくとしよう。
「シノくんちょっといいかなー」
俺が依頼書を眺めていると、カイルから声が掛かった。何だろうか? とりあえず近づいて話を聞く。
「君ー依頼探しているのー?」
「あぁ、折角冒険者になったからな。何かいいのがないか見ていた」
カイルの喋り方は常に語尾が伸びた感じになってるな。
「それならー明日ー僕たちダンジョンに行こうと思ってたんだー君中々やるみたいだしー一緒にどうかなー?」
どうやらカイルは俺をパーティーに誘ってくれたようだ。勿論話しぶりから察するに一時的な協力だろうけど。
しかし、ダンジョンか。ダンジョンというのはダンジョンマスターが作り出したもので迷宮とも呼ばれる代物だ。
ダンジョンマスターというのは天職の一つで基本人間より魔物が得る事が多い。
多いといっても魔物は本来天職を持たない。ただごく一部天職を持つ魔物が現れることがあり、その際にダンジョンマスターになることがある。
そうしてダンジョンマスターになった魔物が生み出すのがダンジョンとなる。
「俺なんかが一緒でいいのか? まだFランクだが……」
「問題ないさー。そんなに難しいダンジョンでもないし僕たちも一緒だしねー。それに君は黙っていてくれたからねーその埋め合わせってことさー」
ふむ、そういうことなら折角だし一緒させてもらおうかな――
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