お店編

51 私は商品開発をすることにした

 ヴェインさんとお出かけした翌日から、さっそくお店の準備を始めた。

 空っぽのお店の中に、棚やカウンターを設置してお店の中を整えた私は、次に商業組合に向かった。

 

 受付を見ると、キャシーさんは別の人の対応中だったので、手前にある飲食スペースで待つことにした。

 テーブルに置かれているメニューを見ると、飲み物と謎の食べ物が書かれていた。

 キャシーさんの方を見ると、まだまだ時間がかかりそうな感じだったので、メニューにあるものを注文することにした私は、注文カンターに向かった。

 

 カウンターにいた女性に、メニューにあった桃ジュースを注文しつつ、謎のメニューについて聞いてみることにした。

 

「すみません。桃ジュースください。それと、メニューにあった、カリカリってなんですか?」


 私の声に、カウンターにいた女性は笑顔で教えてくれた。

 

「桃ジュースですね。かしこまりました。カリカリは、その名の通り、カリカリを使ったお菓子です。他のお店ではあまり見られないお菓子ですね」


 お菓子と聞いた私は、カリカリ自体は分からなかったけど、それも注文することにした。

 カリカリの提供には少し時間がかかるそうで、席で待っているように言われたので、桃ジュースを飲みながら待っていると、先程の女性がカリカリを持ってきてくれた。

 女性は去り際に、「お熱いのでお気をつけてくださいね」と言っていた。

 

 運ばれたカリカリは、湯気を放っていた。

 見た目は、揚げ物?

 スティック上の揚げ菓子なのかと思いつつ、それを口に運んだ。

 

 口に入れると、一瞬ナッツ系の風味が口に広がったけど、それはほんの一瞬で、後は油の味だけがした。

 

 一口でお腹いっぱいな気分になった私は、残りをどうしていいのか途方に暮れてしまった。

 せめて、油をどうにかしたいと思った私は、キッチンペーパーを出して油を吸わせた。

 

 作ってくれた人に悪いと思いつつも、完食すべく味を整えることにした私は、ハチミツを取り出してカリカリにかけて食べることにした。

 

 余分な油が無くなり、さっきよりも食べやすくなったカリカリを食べていると、キャシーさんが対応していた人が立ち上がるのが見えた。

 私は、残りのカリカリを急いで食べきってから、キャシーさんのいる受付に向かった。

 

「こんにちは。今日はお店のことで相談に来ました」


 私がそう言うと、キャシーさんは笑顔で椅子を勧めてくれた。

 椅子に座ってから、キャシーさんに開店させる店について話した。

 

「そうですか。分かりました。では、雑貨屋で開業届は作成しますね。もし今後、お店のことでお困りのことがありましたら、いつもで相談してくださいね」


「はい。その時はよろしくおねがいします」


 思いの外、あっさりと開業届は受理されたため、商業組合から帰った私は、お店の棚に商品を並べることにした。

 

 取り敢えず、売っていたら嬉しいと私が思える物を棚に無造作に並べた。

 

 シャンプー、コンディショナー、ボディーソープ、基礎化粧品、調理器具、保存の効くお菓子類。

 

 それらを並べて私は肝心なことを思い出していた。

 この街のお風呂事情をだ。

 それなら、お湯の出るシャワーヘッドを置くのはどうだろう?

 

 いい案が浮かんだ気がした私は、工房に籠もってシャワーヘッドの作成に取り掛かった。

 魔石の価値は理解していたので、売る商品には魔石は使わずに済むようにした。

 その結果、シャワーヘッドにホースで繋がるようなタンクを付けて、それに水を溜めるようにする。

 それで、シャワーヘッドに付いている摘みで、お湯の温度と水量を調節できるようにしたの。

 エネルギー源は、シャワーヘッドのタンクに付いているミニ発電装置と太陽光パネルで昼間に充電して使うことを考えた。

 ちょっと手軽とは言えない大きさになってしまったことが心残りだけど、これならいけるわ!!

 

 材料費もそんなに掛かってないし、安い金額で売れそうだね。

 価格はどうしよう?

 う~ん。機械化したジョウロみたいな物だし、500ジギルくらいでいいかな?

 今日食べた、カリカリと桃ジュースが合わせて、100ジギルだったし、この位が妥当かな?

 

 これで、街の人達にお湯を使うことの気持ちよさを知ってもらえればいいという軽い気持ちで売り出した私だった。 

 

 

 お店で売る商品の陳列が全て終わった私は、ご近所さんに明日から雑貨屋をオープンしますと挨拶をして回った。

 ご近所さんは、時間を見てお店を見に行くと言ってくれたことが嬉しかった。

 

 ヴェインさんとアーくんもオープンした日に、様子を見に行くと言って、開店を喜んでくれたのだった。

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