怪人ゴライドウ②
「ほ、ほな行ってくる……」
「は、はい……気をつけて」
少しだけホッとした表情のこよみさんが、家を出る。
さっきの呼び出しは、やはり怪人が出現した旨の連絡だった。
場所は丸の内。
ちょうどサラリーマンやOLが帰る時間帯だ。
僕は司令本部で受け取ったタブレットを立ち上げる。
『上代くん、準備はいいか?』
「はい、大丈夫です!」
『基本的に司令本部で隊員達に作戦を指示するが、気づいたこと等があったら遠慮なく言ってくれ』
「わかりました!」
『うむ』
高田司令と通信し、問題がないことを確認すると、高田司令が各隊員に連絡をする。
『みんな、今の状況を報告してくれ』
『司令! 俺はちょうど赤坂に入ったところだ! あとニ、三分で現場に到着するぜ!』
『……こちらブラック。神田にいる』
『イエロー、人形町だ』
『ヤッホー! 上代くん聞いてるー? 私は首都高走ってるよー……って何してるの!?』
『ウッサイ! 司令、耕太くん、ウチも今首都高や! 現場に着くのはもうちょっとかかりそうや!』
一体こよみさんと先輩に何があったの!?
『こちらレッド! 銀座から現場に急行中です!』
『分かった! 先に着くレッド、ブルー、ブラック、イエローは、まずは現場の状況を確認して、すぐに報告しろ! ピンクとバイオレットも引き続き現場へ急行しろ!』
『『『『『『了解!』』』』』』
ヴレイファイブのメンバー全員が一斉に返事する。
『うむ、では取り急ぎ怪人の映像を送る。確認してくれ』
すると、タブレットに怪人の映像が流れた。
怪人は、ライオン型のようだ。
戦闘員とともに、帰宅途中のサラリーマン達に襲い掛かっていた。
『し、司令! みんな!』
突然、先輩から焦ったような声で通信が入った。
『どうした!』
『こ、これ……今回の怪人は四騎将の一人、“怪人ゴライドウ”よ!』
四騎将!?
四騎将っていったら……!
『司令! あの四人に闘わせちゃダメよ! 四人じゃアイツには敵わないわ!』
『何っ!?』
焦るように叫ぶ先輩の言葉に、高田司令が驚きの声を上げる。
そこに。
『四騎将がどうした! 俺達は勇者戦隊、ヴレイファイブ! 怪人ゴライドウ! 貴様はこのヴレイレッドが倒す!』
一番最初に到着したレッドが映像に映し出され、怪人ゴライドウに向かってポーズを決める。ダサイ。
『フン、出てきたか! 戦闘員ども! まずはアイツを血祭りにあげろ!』
『『『『『ギー!』』』』』
戦闘員達がゴライドウの指示を受け、レッドへと一斉に襲い掛かるが、レッドはそれを苦も無く倒していく。動きが変。気持ち悪い。
いや、今日のレッド、いつも以上に変だぞ!?
『レッド、どうした! どこか調子が悪いのか!?』
高田司令からも心配する声が飛ぶ。
だけどレッドはそんな声を無視するかのように、クネクネした動きで次々と戦闘員を倒すと、ゴライドウへと肉薄した。
『俺のヴレイガンを食らえ!』
『フン』
『ガッ!?』
至近距離まで近づいたレッドがゴライドウに照準を合わせたところを、ゴライドウの裏拳で弾き飛ばされた。
いや、遠距離用の武器なんだから、離れて闘えよ!
『クソッ!? もう戦闘が始まっちまったのかよ!』
『加勢するぞ!』
『ああ!』
ブルー、ブラック、イエローも到着し、レッドの傍に集まる。
『大丈夫かレッド!』
『ああ、この程度、大したことはない』
そうレッドは強がるけど、レッドの足は少し震えていた。
ダメージ受けてるじゃないか……。
それより。
僕はタブレットの通信アイコンをタップする。
「みなさん! 先程の通信にもあったとおり、相手は幹部です! 全員が揃うまではうかつに闘わず、牽制にとどめておくべきです!」
僕はいてもたってもいられず、四人に指示を出す。
さっきはレッドが先走って手を出したけど、まずは囲んで牽制しながら動きを封じるべきだ。
だけど。
『うるさい! 素人が黙っていろ! みんな、パワーアップしたヴレイキャノンで一気に仕留めるぞ!』
『ハア!? お前何言ってんだよ! ここは耕太の言う通り、牽制して被害を出さねーようにするべきだろ!』
レッドの言葉に、ブルーが窘める。
ブルー……青乃さんがリーダーをしたほうが上手くいくんじゃ……。
『黙れ! リーダーは俺だ! いいからやるぞ!』
『オイオイ、戦闘中に余裕だな。まあいい……その自慢のヴレイキャノンとやら、俺に撃ってみろ』
ゴライドウは余裕の態度で四人を煽る。
だけど、ヴレイキャノンは一撃で怪人を倒す、ヴレイファイブの最大火力だ。
いくら四騎将とはいえ、さすがにただでは済まないはず。
『クッ! その余裕の態度も今のうちだ! さあ、四人でも撃てるように改良し、さらに威力も一・五倍にアップしたヴレイキャノンをお見舞いするぞ!』
『クソッ! 仕方ねーな!』
ゴライドウに向けてヴレイガンを構えるレッドに、ブルーは渋々といった様子でレッドの後ろに立ち、ブルーの固有武器である“ヴレイブーメラン”をヴレイガンにセットする。
残りの二人も、それぞれ“ヴレイハンマー”と“ヴレイアックス”をセットした。
そして。
『喰らえ! 新生“ヴレイキャノン”!』
一番先にあるヴレイガンの銃口から、四色の光が渦となってゴライドウへと迫る。
だが。
『カアッ! “ジオイヅナ”!』
ゴライドウの口の中で光が圧縮され、稲妻をまとった球体となると、ヴレイキャノンの光めがけて放たれる。
そして、お互いの中央で激突した。
『なっ!? パワーアップしたヴレイキャノンが押されているだと!?』
ヴレイキャノンの光はゴライドウの放ったジオイヅナに徐々に押し返していく。
「ク、クソ! クソ! 俺はヴレイレッドだぞ!? 選ばれたエリートでリーダーなんだぞ!? なんで怪人なんかにいいいいい!」
目と鼻の先まで迫ったジオイヅナに、レッドは思わず叫んだ。
だけど。
『『『『うわああああああああ!?』』』』
無情にも四人はジオイヅナによって、後ろのビルまで吹き飛ばされた。
「みなさん!?」
『大丈夫か!?』
僕と司令は慌てて四人に声を掛ける。
『フン……出力を半分に抑えて放ったのに、大したことはなかったな。どれ、それじゃあトドメを刺すとするか』
首をゴキゴキ、と鳴らしながら、ゴライドウがゆっくりと四人に近づいていく。
『う、うう……』
一番最初にレッドが意識を取り戻し、顔を持ち上げた。
『ヒ、ヒイイ!?』
『お、気がついたか。じゃあ、まずはオマエから血祭りにあげてやろう。喜べ』
レッドは腰を抜かしたのか、座り込んだまま後ずさる。
そしてその身体は、小刻みに震えていた。
「だ、だめだ! レッド! 早く逃げて!」
『ア……アア、ア……』
ダメだ! こちらの声が耳に届いていない!
ゴライドウのその太い腕が、レッドの頭にゆっくりとつかみ掛かろうとした。
その時。
『オラアアアアアアア!』
ブルーがゴライドウの腕めがけ、ヴレイブーメランを投げつけた。
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