第9話 「渡部席」の横暴と渡辺さん

「なんか、ふたりとも、表裏激しくない?」

「「違うよ。学級王に選ばれた席なのさ。」」

「学級王?」

 聞いてた他の人たちは首を傾げている。

「ふたりとも、役者さんなの?」

「違うわよ。呪ってやろうと思って。」

「ちょっと、困らせてやりたくて。」

「デキてるの?」

「「どこが!」」

「もう、高校もいいね。」

「おもしろいけどね~。」

 周りの子が、興味を失いつつある。

「メイク教えてあげようか?」

「おもろい話はあるで。」

 フォローのスピードも同じ。

「結構です。二人で、よく話し合った方がいいよ。」

 がぶりるよる、渡部くん。

「これはどういう意味だ?」

「近い、近い。」

「何かこう。チュウとか」

「キモイキモイ。」カシャッ。「キス顔撮れちゃった。」

「待って、そればらまかれたら・・・。」

「あら、そういう使い道があるの?」

「先生に言うて、なんとかせんと。」

「それは、ばらまいてと同じ意味じゃないのかな?」

「じゃあ、力づくでやるしか・・・。」

「おはよ~、渡辺さん。・・・どしたの。先生呼んでくる。」

「完全にドン引きや。」

「渡部くんが、渡辺さんを・・・どうにかしようと・・・。」

「待って、それだけは待って。」

「学級王の座は、どうなるの?」

「私、隣でもいいですか?」

「「渡辺席」がわかったら、好きなところに座りなさい。」

        *

「あんた、隣に来るのはいいけど、一日中ガン見はやめてよね。お弁当も覗かないで。」

「かわいいなぁ。手製?」

「ええそうよ。」

 と、そっけなく流す。

「おっと、ストップ。近寄っちゃ、ダメ。」

「じゃあ、写真に撮って。」

「自分のスマホでインスタでも見なさい。」

「え?やってるの?」

「教えはしないけどね。」

 もっと、シャンと、シャンとして生きてかなきゃ。渡辺は、笑い話が苦手だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る