第20話 四月三日 私立夢前学園

「皆さん、おはようございます。四月から高校生として慎ましく、わが校の生徒として立派な高校生活を満喫して下さい。………えー、最近ですと昨日の事件は大変でしたね。私も———」

 昨日の事件は本当に大変だった。緊張して、緊迫して、間が抜けて、疲労した。

 買う筈だった収納ケースやテレビ台を買えずじまいで終わってしまった希望はガックリとして校長先生の長い挨拶を聞く。

 彼女にとっての幸いは同じクラスに幼馴染が居ること。そして琉梨が紹介してくれた殆どの人間が級友になったことだ。彼女は実際喧寿嘩、傍良甘楽、天塚司、怪木妖子を除けば全員と友達になっている。

———琉梨ってスゴイな。 







 教室に戻ってすぐに琉梨は私の手を掴むと例の男女四人に自己紹介をさせる。

「天塚司(あまつかつかさ)です。出席番号順じゃあ一番前だから分らないよね。フフ、よろしく」

「夢咲希望です。私も出席順じゃ最後だから…こちらこそよろしく」


「喧寿嘩(かまびすよしか)。ケンカを漢字にして、その間に寿を入れたら喧、寿嘩。分かったか?よろしくな」

「スゴイ名前だね。夢咲希望です、よろしく」


「傍良(かたわら)甘楽(かんら)。変な名前でしょ?あ、夢咲希望だよね?もう覚えたよ。よろしくね」

「あ、よろしく…」


「初めて見る顔だからちょっと声掛けるの、もう少ししたらいいかなって思ってた。ごめんね。あと、怪木(かいき)妖子(あやこ)。よろしくお願いします」

「夢咲希望です。こちらこそ、よろしくお願いします」


「よ~し!ノルマ達成!!」

「何のノルマよ」

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