第47話 社会と言う闇

・「ねぇねぇ一つ聞いて良いかな?

精霊界の国っていくつあるの?

マナタスク家って子沢山?」


・マルチ

「違うよ、精霊界はね、土、水、火、風の4つの国があるの。それぞれの国の王は精霊界の女王からマナタスクの名を借り受けるの。だからあたしとラムちゃんは血の繋がりはないよ。」


ふーんそうなんだ、て事は精霊界女王の下に各国の王がいて国を収めているって事か。むむ?ならマナタスク家の国は何処だ?


・マルチ

「何が聞きたいか判るよ、私達マナタスク本家の者たちはマナの樹の麓に住んでいるの、国は持たないわ。」


ふむ、言ってみれば信仰の象徴みたいなもの?御神木を守っている一族って所かな?どちらにしてもマルチは凄い位の高い存在って事だな。


・「ありがとう何となく理解した、とりあえずおめでとう同郷の仲間が増えたね。」


大きく頷くマルチ。

さてと、ますます失敗出来なくなったな。

それには一つ確認しとかなきゃな。


・「ラスクさん、ラムちゃん、リンク、正直に答えて欲しい。この場所に執着はあるかな?少しでもあるなら今教えてほしい。」


3人はお互いを見合う。

そして答えを出す。


・ラスク

「ここには、いえ此処しか住むところが無かっただけです。私は安全に住めるのなら何処でも。」


・ラム

「あたしも何処でも良い。いつか仲間を集めて精霊界に帰るの、だから何処でも良いから生きていたい。」


・リンク

「オイラはラムを守る盾だ。

ラムについて行く。」


よし問題が無くなったな。

これなら何とかなりそうだ。


・「わかった、じゃあ後は俺に任せて欲しい。安全を保証するよ、但しこの教会は諦めてくれ。快諾書が向こうにある限り諦めるしかない、出来るか?」


・リンク

「それじゃあアイツらと同じじゃないか?」


・「結果的にそうなるね、それでも俺を信じる事はできるか?」


リンクが拳を握る。

よく抑えたな。

今のは挑発したつもりだった。


・ラム

「私はマルチ様を信じる、だからマルチ様が信じている貴方も信じる。」


その言葉で2人の気持ちも決まったみたいだ。

マルチに助けられたな、、、。


・「じゃあ君たちの行動を決めさせてもらう、荷物をまとめて俺の屋敷に来てくれ。衣、食、住を約束する。仕事は後々出来ることをやってくれれば良い。初めの一ヶ月は客人として迎えよう、どうする?」


敢えて上から言ってみる。

この土地への未練を断ち切って欲しい。


何故なら、、、。

この土地はもう取り返せないと思うから。

快諾書が向こうに渡った時点で負けだ。

ならば出来るだけ好条件で抜けるしかない。

それが人生だ。


悲しいけどそこに温情など存在しない。

それが取引だ。


人の感情など存在しない。

それが、、、社会だ。

それをわかって欲しい。

今後、国を作るのであれば。


・ラム

「分かりました、一つお願いがあります。私達の安全を約束すると言う書が欲しいです、証を残したいと思います。」


ラスクさんとリンクが驚いてラムをみる。

そうだ、よく言った。

俺は思わず笑顔になってしまう。


・「今後、国を作るのであれば取引を覚える事をお勧めするよ。如何に強い権力を味方に付けるかが鍵だ、取引には人情も温情も無い。

それが社会という物だと思う。

君が俺に示した様に証を残す事。

しっかり覚えておいてね。

そして今から君達は俺の家族だ。

屋敷は好きに使って良いからね」


そろそろ戻ってるかな?


・「ミズキ、居るか?」


・ミズキ

「いつも貴方の傍に。」


キャッチフレーズみたいな感じで言わないで。

しかし流石は隠密、やっぱり居てくれたね。


・「この子達を俺の屋敷に、パティさんに事情を話して食事と部屋を渡してくれ。それに約束の誓約書も作って渡して欲しい、条件はさっき言った通りでいいからさ、

頼んで良いかな?」


・ミズキ

「了解致しました。では皆さま荷物を纏めてこちらへ。」


・ラスク

「ライオット様よろしくお願いします。」


・リンク

「信じてるからな、裏切ったら許さねえ。」


・ラム

「、、、。」


・「ラムちゃん試す様な事をしてごめんね。

君ならきっと夢が叶うと信じてる。

その為に俺を利用するくらいしてみてご覧。

俺は君を支えてあげるから。」


・ラム

「ありがとう、、、。

貴方は心優しい人ね。

人を愛そうと頑張っている。

人に愛されようと頑張っている。

人に愛されても頑張ろうとしている。

だからみんなに愛されるんだね。

でも悲しい人、、、。

貴方の魔力は今にも崩れてしまいそうだもの、何故なの?何があったの?人を愛する事は大事な事。でも貴方は貴方自身も愛してあげて。」


マナちゃんが俺に言ったこと、俺にはよく解らなかった。しかし何故か心が酷く傷んだ気がしたんだ。


3人はミズキに連れられて俺の屋敷に向かった。

教会には俺とマルチが残された。


・マルチ

「これからどうするの?」


・「まずは相手の懐に入る、酷く汚い部分を見せる事になるだろう。マルチも屋敷に戻ると、」


・マルチ

「私はライオットと居る、どんな時も。」


マルチの意思は硬い。

本当は見せたくないんだけどな。


仕方ない、大人の世界をお見せしよう。

それからマルチとゆっくり話をした。

そう言えば2人でゆっくり話すの久しぶりな気がする、そんな会話の中であの人の事を思い出したんだ。


魔法大使タスラーさんの事を。

それはそれでやり易い。

成功率が上がったかな?

それから1時間くらいした頃。


・???

「オラァ、さっきは良くもやってくれたなぁ、ってあれ?ここの奴らは?」


さっきの奴らがやって来た。

じゃあ始めますか。


・「タスラー様の言う通り立退させといたぞ。さっきは悪かったな大丈夫だったか?」


・マルチ

「ライオット?」


・???

「あぁ?誰だテメエ。

あ、さっきの小娘じゃねぇか!

良くもやりやがったな。」


・「待て待て、だから済まなかったって言ったろ?作戦なんだから仕方ないじゃ無いか。聞いてないのか?上手くここの奴らを立ち退かせただろう?流石はタスラー様だ。」


・???

「おお?おぉ、どう言う事だ?」


・「俺達はお前の味方だって事だ、あんたらドーソンさんの所の奴だろ?俺はライナーってんだ、あんたは?」


・ハッソン

「俺はハッソンだ。

なんだよ味方だったのかよ。

ビビっちまった。

んでここは奪えたんだな?ありがとよ。」


頭の悪い奴は扱いやすい。


・「じゃあドーソンさんの所に戻ろうか。

確か教会自体はもう要らないんだよな?」


・ハッソン

「おぅ、明日さら地にするらしいぜ。」


・「そうか、じゃあ先にやっておくか?」


俺たちは教会の外に出てる。

そして俺は魔力を高めていく。


・マルチ

「待って、まさか。」


・「言ったろ?汚い所を見せるってさ。

嫌いになっちまうかな?」


教会を魔力で包む、そして一気に魔力を炎に変換し焼き尽くす。


・ハッソン

「うぉぉ!ライナーさんあんた凄えな。」


・「これでドーソンさんの手間が省けるだろう、さあ案内してくれ。」


・ハッソン

「わかったぜ、いやぁーそっちの嬢ちゃんと言いあんたと言いすっげぇな。」


実力差を見せつければ操りやすくなる。

解りやすくて良いね。

マルチは教会を眺めている。


・「マーラ、サッサといくぞ。教会が燃えるを観ていたい気持ちは解るがドーソンさんを待たせちゃいけねえ。」


・マーラ(マルチ)

「わ、わかったわ、ライ、、ナー。

行きましょう。」


お?上手く合わせてくれたね。

順応性が高くて助かるよ。


俺達はハッソンについて歩いて行った。

昼が過ぎ辺りでドーソンの屋敷に着く。


・ハッソン

「ここだ、本当なら部外者は入れないがタスラー様の手下のあんたらなら大丈夫だろう。俺について来てくれ。」


あっさりと侵入に成功した。

そして食堂に行く。

奥でドーソンが飯を食っていた。


・ハッソン

「ドーソンさん、あんたに言われた通り教会を奪って来たぜ。」


・ドーソン

「何?本当か?嘘じゃ無いだろうな。」


・「本当だ、ついでに教会を燃やしてきてやったぜ確認してみな。」


ドーソンは俺達を観察する様に見詰める。

まるで舐め回す様な視線に虫唾が走る。


・ドーソン

「おい、調べて来い。」


数人の手下が走り出す。


・ドーソン

「で、、、お前らは何者だ?」


・「俺はライナー、こっちはマーラ。タスラー様に金で雇われた傭兵って所だな。金以外に興味はねえ、悪いがサッサと終わらせて次の仕事をしたいんで手伝いに来たって訳だ。」


ドーソンが俺を睨む。

暫くその状況が続いた後、、


・手下

「ドーソンさん、本当だ。

教会が無くなってやがる。

こっからでも煙が確認できたぜ。」


ドーソンが汚い笑顔を見せる。

これで信用されたか?


・ドーソン

「疑って悪かったな、見事な仕事だった。流石はタスラー様だ。確か金が欲しいんだったな?どうだワシの手下にならんか?良い値で雇ってやるぞ?」


・「悪いが俺達は誰の下にも付かねえ、金を貰ったらそれで用無しだ。さあ一緒にタスラー様の所に報告時に行こうぜ、早い仕事の方が喜ばれるだろう?」


・ドーソン

「ふっふっふっ、時は金なり。

ライナーと言ったか?益々気に入った。

気が向いたらワシの元に来い。

そこらの奴らの10倍出してやろう。」


・「気が向いたらな。」


素っ気なく返す。

こう言う奴は押しちゃダメだ、価値を示した後に引けば自ずと好条件で追いかけて来る。


・マルチ(マーラ)

「ライ、、ナー。」


悲しい顔をさせてごめんよ。

マルチのそれも利用する。

そんな俺を許してくれ。


・「ほらドーソンさんよ早く行こうぜ、マーラが待ち切れないってよ。コイツが暴れると俺でも手が付けられねぇからな、この屋敷なら簡単に吹き飛ぶぜ?」


・ドーソン

「脅しているのか?」


・「違うなアドバイスだ、どうするかはアンタが決めれば良い。マーラは俺より強いぜ?」


ドーソンの顔が青くなる。

言い勝った。


・ドーソン

「わ、わかった。

直ぐに向かおう。」


・「俺達は外に居るから準備が出来たら声をかけてくれ、あんまり待たせるなよ?。」


俺達は外に向かう。

後ろではドーソンが慌ただしく動き出していた。


屋敷の外で待つ2人。


・「マルチ、色々とごめんな。今からでも遅く無い、嫌な気持ちになるだろうから屋敷に帰ってなさい。」


・マルチ

「ふふふ、ちょっと楽しいかも。

ライオットって本当に何でもできるんだね。

一緒に居て飽きないよ。

大好き♪」


俺に擦り寄ってくる。

こう言う仕草が堪らないな。


じゃなかった、マルチ強くなったね。

最初の頃なら泣いてただろうに。


マルチの頭を撫でながらそんな事を考えていた。

すると奥から馬車が到着する。


・ドーソン

「待たせたな、じゃあタスラー様の所に行こうか。ライナー殿、マーラ殿、それでよろしいか?」


俺達は頷きそして馬車に乗る。

そして俺とマルチ、ドーソンとハッソンを乗せた馬車がタスラー邸に向けて動き出した。

さてと、ここからが本番かな?

どうやってタスラーを黙らそうかな。

俺は思考の海に身を任せた。

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