第45話 舞い込んできた依頼

昨日は朝早くに城に行ったはずだったのに帰る頃には夜中になってた。

ライルさんに殺されかけたのって本当だったんだな、そう実感が出来た瞬間だったよ。

それからマップ能力騒動だ、そりゃ遅くなるさ。大半はミズキが説明してくれたけどやっぱりカイラーさんを殺した事を納得させるのには中々骨が折れた、そのお陰で帰してくれなかったのだ。


話によるとカイラーさんは5大貴族の1人らしく今後の混乱を考えると頭が痛いと王様もぼやいていた。それからも話は止まらずかなり遅くなってしまった。


屋敷に戻ると屋敷のメイドさん達は起きて待っててくれた。夜食を食べれたし、ゆっくり寝られたのがありがたかった。


でもさ、、、


・オーランド

「おはようライオット君。

今日の決闘が楽しみだね。」


何で人の寝室に居るんだよ。

ここ一応俺の屋敷なんだけど。

寝てる間に不法侵入してるぞ?


・「おはようございます。

オーランドさんはどうしてここに?」


・オーランド

「いやなに、共に決闘場に行こうと思ってね。それにカーティスが譲ったと言う屋敷も見てみたかったしな。」


監視しに来たんですね。

どのみち逃げられないしなぁ。

やるだけやってやるか。


・「とりあえず飯でも食いますか。」


・オーランド

「ほぅ、随分と落ち着いているんだな。てっきりどうやって逃げようか算段を立てていると思っていたぞ。」


・「逃げれるなら逃げたいんですけどね、どう考えても逃げられないと思っただけですよ。それとも見逃してくれます?」


・オーランド

「まさか。」


にっこりと笑って返す

逃がす気ゼロだね、、、

仕方がないので俺は食堂へと向かう。


その途中で、


・キロス

「ライオット兄ちゃん、おはよう。」


・セント

「こらキロス!

挨拶はしっかりしろと言ってるだろう?

『おはようございます』だ全く。

おはようライオット君。」


セントさんとキロスまで来ていた。


・セント

「そういば君は前も決闘してなかったか?君は何かと敵が多いのかい?私は君の味方だから安心してまえ!」


誤解だと叫びたい。

戦いたくてやってるわけじゃないんです。


・キロス

「兄ちゃん!今日の決闘はすでに町中の噂になってるぜ、なんたって王国騎士団団長に加えて新しい勇者とも戦うんだろう?それに拳聖ナナ様の戦闘なんて滅多に見られるもんじゃないし。」


何故にそんなに情報が?

俺はオーランドさんを見詰める。


・オーランド

「いやなに、祭りはデカくやった方が良いだろう?昨夜あれから各家に連絡用の紙をバラまいておいた。」


絶対に俺を逃がさないつもりだな。

周りから固めて来るとは恐ろしい。

しかしあの時間から出来るのか?


、、、隠密か。


私用で使わないで欲しい。

てかキロスに聞きたい。

ナナさんが拳聖ってどう言う事?

勝てるわけないじゃん。


・セント

「じゃあ私たちは先に闘技場に行っておくから頑張ってくれたまえよ。」


・キロス

「じゃあまたね!後で見て貰いたい物もあるからさ、決闘が終わったらゆっくり話したいな。」


・「いつでも大丈夫だから何でも聞いて、俺が生きてたらね。」


キロスに手を振りセントさんに頭をさげる

とりあえず食堂へと行くか。



~食堂~


食堂ではマルチが知らない人と話していた。

誰だろう?


・マルチ

「お願い、怖がらないで。

ここは大丈夫だから。

ご飯も食べて。」


何かあったのか?

俺に気付いたマルチが助けを求めて来る。


・マルチ

「ライオットお願いこの人を助けて。」


何があったんだ?

とりあえず事情を聴かなきゃ解らん。


ん~、とりあえずご飯食べよう。


・「おはようございます。私もご飯をご一緒させて貰っても良いですか?」


・???

「、、、」


めっちゃ警戒してるな。

どうしたんだろう?

見た所17歳くらいの女の子って所かな。


・「ビックリさせちゃったらごめんね、とりあえずご飯食べながら話そうか。オーランドさんは申し訳ないけど席を外してください。」


オーランドは快くお願いを聞いてくれた。

良い人だなぁ。

これでこの部屋には俺とマルチそして数人のメイドさんだけとなった。


、、、もう少しかな。


・「すみません、食事の準備が終わりましたら俺とこの方だけにしてもらって良いですか?」


・マルチ

「私はここに居たい。」


・「了解だ、んじゃマルチは一緒に居てくれ。パティさんお願いしても良いですか?」


実は毎回の食事運び係はメイド長ことパティさんなのだ。メイド長が食事運びをしている理由、それは屋敷の主から本音を聞き出す事にある。何でも『食事の時こそ本音が出る』と言う事らしい。『意見や要望を聞くならお食事とご一緒に』と言う格言を持つスーパーメイドさんなのだ。


・「解りました、しかしライオット様とマルチ様だけにすることは出来ません。私だけでもここに居させてください。」


言い出すと聞かないんだよな。

まぁ大丈夫かな。

さてと、まずはこの人の事を聞き出すか。


・「とりあえず食べたくなったら食べながらでいいからね。」


優しく話しかけて様子を見る。

何かを言いたそうにはしてるんだよな。


あと一押しって所か。


・「そうだ自己紹介がまだだったね、俺はライオットって言う者です。一応この屋敷の主って事になっているんですが実感はないですね。

まだ屋敷に住んでから数日しかたってませんし、でも数日でも分かった事があります。ここのご飯は絶品です!是非食べてみてください。」


さてと、どう出るかな?


・???

「あの、貴方様は貴族の方ですよね?」


よし話してくれた。

ここから少しづつ踏む混んでいこう。


・「貴族ではないです冒険者やってます!」


・???

「このお屋敷は?」


・「ん~偶然の賜物と言いますか。

パーティーメンバーのおかげで貰えました。

そこに居るマルチが頂いた様なもんですね。」


女性がマルチを見つめる

かなり警戒が薄くなってきたな、あと一押し。


・???

「この方は奥方様ですか?」


・「いえいえちがいま、」


・マルチ

「そうです。」


マルチが一瞬で俺の発言を妨げる

はやぃ、、、。


・???

「ふふふ面白い方ですね。」


笑ってくれたナイスだマルチ。

ここでたたみ掛けろ。


・「良かったらこのスープ食べてみてください、めちゃめちゃ美味しいですから。」


俺はゆっくりとスープを食べる。

その後で食べるように促してみる。


・???

「、、、ありがとうございます。

ではいただきます。」


最初はおっかなびっくり食べていたがその内普通に食べてくれるようになった。食事が進むにつれて表情が晴れて行く、パティメイド長の言った通り食事は偉大だ。


・マルチ

「私も自己紹介しておかなきゃ。

私はマルチ、ライオットの第一夫人です。」


・ミズキ

「違います、私が第一夫人のミズキです。」


突然現れたミズキ。

火花が飛び散る食堂。


ミズキ一体どこにいたの?


・???

「ふふふ、こんな美しい方々に好かれるなんて、余程素晴らしい人なのですね。」


それは違うと伝えたい。

でも良い方向に行ってるからここは我慢だ。


・???

「、、、申し遅れました。

私のはラスクと申します。」


ゆっくりと頭を下げるラスクさん。

俺も習って頭を下げる。


・ラスク

「ライオット様、お願いがあるのです。

私達を救って下さい。」


震えるような声を絞り出して嘆願してきた。

何かあったのか?


・「とりあえず頭を上げて、事情を聴いても良いかな?」


・ラスク

「私はハーフエルフです。」


ラスクさんは意を決したように発言する。


・「そうなんですね、凄い美人さんだから納得!続けて下さい。」


豆鉄砲を喰らったような顔をする。

ん?何か言っちゃいけない事言った?


・マルチ

「ここは大丈夫って言ったでしょ?

ライオットはそんなこと気にしない。

信頼しても良いんだよ?

だって私もハーフエルフだから」


ラスクさんがマルチを見詰める。

途端に泣き出してしまった。

張り詰めた緊張の糸が切れたのかな?

ゆっくりと泣けばいいよ。


・「時間はたっぷりあるからゆっくり話してください、私に出来る事なら何でもします。」


何でもって言うとハードルが上がりすぎるけど、出来るなら助けてあげたい。


暫くするとラスクさんも落ち着きを取り戻した。

その頃には外で待っていたオーランドさんも食堂に入って来て事の成り行きをミズキに聞いていた。


・ラスク

「失礼しました。ご存知の通り私達ハーフエルフはこの国でも迫害を受けています。他の国に比べれば緩い為、私たちはこの国に逃げてきました。しかしどこに行っても迫害は治まらず、ついに私たちの住む教会にまで貴族の手が伸びてきました。

彼らの要求は教会周辺の宅地化。

初めは私達も住めると言う話で進んでいたのですが、次第に話がねじ曲がり土地を去るか奴隷のように生きるかの2択を迫られました。男は労働者に、女は夜伽役に。」


成る程、解りやすくも腹立たしい。


・ラスク

「昨夜、助けを求めて兵舎の方に出向いたのですがハーフエルフという事で門前払いにされ、教会に戻る途中で暴漢に襲われ。」


・マルチ

「そこをミズキさんが助けてここに連れて来たってわけなの。」


ラスクさんを優しく包み込み頭をなでているマルチ、ミズキはまだオーランドさんと話していた。


・「貴族か、どこの世界でも利益を求めるには犠牲が必要ってわけね。」


・マルチ

「ライオット?」


思い深ける、前の世界の事を。

思い出せないことが多いが思い出した事が霧がかかっている点も多い。覚えていると言うより知っていると言った方が良いかもしれないね。


まだ仮説の段階だがこの世界に来た時の記憶が俺のじゃない可能性がある。女神さんの一部が解放された時に戻った記憶が妙に鮮明だ、そしてしっくりくる。


サラリーマンだった俺。

疲れ切ってる事を思い出す。

断片的だが、世界に絶望していた気がする。

胸騒ぎがして仕方がない。

俺も会社とかで嫌な思いしてたのかな?


今はこの子の頼みを聞かなきゃね、どうしても助けたくなった。


・「ラスクさんと言ったね、覚えている範囲で良いから教えて。貴族の名前と関係している人物、団体。味方となりえる人物と助けが必要な人達の人数。教会と貴族の屋敷の距離と関係性。更に現在の所有者の情報と工事着手時期を知りたい。一緒に教会に来てくれるかな?」


・ラスク

「助けて下さるのですか?」


・「どこまで出来るか解らないけど力になるよ、君はもう1人じゃない一緒に頑張ろう。」


ラスクさんが崩れ落ちて泣き出す。

マルチが抱えて背中をさすっている。

さて助けるとは言ったがどこまでできるかな。

不安しかないがやるしかないね。


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