第25話 変則攻撃特化

セリスとマルチが2人で魔法の特訓に行った頃。


・サリス

「風魔法が変則的なのは理解出来るけど、

攻撃特化とは思えないわ。」


・「そうですか?

俺が思いつくのは貫通砲撃、防御無視の斬撃、

超高速移動、空中徒歩、、、、

パッと思いつくのはこれくらいかな?

でも、この要素を組み合わせれば相当強いと思うのですが。」


・サリス

「ライオットさん、、

ひとつひとつ説明お願い出来るかしら?」


サリスさんの目がキラッキラしてる。

過度の期待を持たせてしまったっぽいぞ。

墓穴掘ったわぁ〜


・サリス

「ねぇ、教えて。お願い〜」


おふっ、あのサリスさんが甘えて来る。

ギャップが凄い。

破壊力抜群だわ。

めちゃくちゃ貴重な体験してるよな。

よし、頑張っちゃおうかな。


・「えっと、じゃあひとつずつ

まずは、貫通砲撃から」


・サリス

「やったー!

ありがとうライオットさん。」


うわぁ〜何これめちゃくちゃ可愛いんですけど。

堪らんなぁ、、、


・「で、では。

風魔法で砲撃はやった事あります?」


・サリス

「砲撃?砲撃って程じゃ無いけど、風を飛ばして敵の武器を落とさせたりするかな?

砲撃とは言えないわよね?」


・「そうですね。

でも考え方は同じかな?

風を飛ばして敵を貫く。」


・サリス

「つ、貫く?風で?」


・「やってみますか。

あの岩を貫いて見せますよ。」


・サリス

「そんな事、無理よね?

で、出来るの?」


俺は少し前に出て岩を睨む。

さて、どうしよう。

別にちっちゃい穴でも良いんだけど、、、

貫通砲撃って言っちゃったし。

カッコイイって思われたいよなぁ、

チラッとサリスさんを見る


・サリス

「ファイト!」


声をかけられた。

あ、ダメだわ、全力で行こう。

美人さんに応援されて、手を抜く奴などおるまい

よーし、みなぎってきたぁぁぁ!


・「行きます」


俺は魔力を溜めて、回転させながら圧縮する。


・「ウィンド、、バレットぉぉぉ」


キュイーン、、、、ヒュン


無駄に力が入りまくった!

予定より大きな玉になっちゃった。

でも回転と速度は上手く乗ったな。

炸裂音がしない程、綺麗に岩を貫いてしまった。


・サリス

「あ、、ぁ、、

うそ、、、でしょ?」


・「風属性特有の貫通砲撃です。

炸裂しないで貫いて行くので静かですよね。」


・サリス

「信じられない。

見てたはずなのに、信じられないわ。」


・「やってみますか?」


・サリス

「私にも出来るんですか?」


・「試してみないとわかりませんが、

多分出来ると思いますよ。」


・サリス

「やります、教えてください。」


しっかし、本当にサリスさんに教える事になるとは思わなかった。

出来る限り頑張ってみよう。


・「まず見えるようにこの小石で説明しますね。」


・サリス

「はい、」


・「小石を風の玉と想定して下さい。

形状はこんな感じで。」


俺は風魔法で小石を削り弾丸の形にする。

彫刻に勤しんでいた甲斐があったわ。


・サリス

「こう?」


・「はい、そうです。

サリスさん、魔力の操作上手ですね。

まさか同じ様に石を削るとは。」


・サリス

「ふふ、そう言われるとちょっと嬉しいわ。」


・「では次に石を回転させます。

回転方向に注意です。

的に向かって螺旋状に回転させます。」


螺旋状で合ってるよな?

まあ、実演してるから間違ってても良いか。


・サリス

「こう?」


・「そしてその回転を維持しながら飛ばすわけです。」


・サリス

「それだけ?それだけであの威力なの?」


・「いいえ本番はここからです。

良いですか?

空気を圧縮、つまり潰すと小さくなります。

手では潰せませんのでちょっとイメージしずらいと思いますが、魔力で空気を包むと小さく潰す事が出来ます。」


・サリス

「フムフム」


・「これを圧縮空気と言います。

圧縮空気は小さくすればする程、反発するエネルギーが大きくなると言う特徴を持っています。

反発エネルギーは強大で風で物を飛ばす速度とは比べ物になりません。恐ろしい速度で物を飛ばす事ができます。

ここまで大丈夫ですか?」


・サリス

「ええ、大丈夫よ。

つまり、圧縮空気で風の玉を飛ばすわけね。

でも、どうやってコントロールするの?」


・「魔力で空気を包み込み圧縮しますがその時に放ちたい方向に細長い出口を作るんです。出口を作ると同時に空気を包んだ魔力ごと一気に押し潰すんです。」


・サリス

「凄い発想ね、回転はどうすれば良いかしら?」


・「出口に少し細工をします。

出口の筒に螺旋状の溝を作れば自ずと回転は着きますし魔力で更に回転を上げる事も出来ます。以上の事を全てイメージと魔力で行い風の砲弾を飛ばす。

それが貫通砲撃の正体です。」


・サリス

「凄いわ。こんな事考えた事も無かった。」


・「圧縮空気の反発力を上げれば速度が、回転数を上げれば貫通力が、砲弾のサイズを変えれば威力がそれぞれ上がります。速度と回転を上げれば飛距離が伸びますし砲撃サイズを小さくすれば暗殺に向きますね。

風なので上手くやれば音も出ない証拠も消える

戦略に合わせて調整出来るのが強みですね。」


・サリス

「暗殺、、、どうしましょう、、

何だかライオットさんが凄く怖くなってきたわ。」


・「やめて下さいよ。

なんたって1番弱いんですから」


言ってて、寂しくなるよね。


・サリス

「やってみるわ。」


・「はい、コツは力まない事です。」


サリスは大きく深呼吸をする。


・サリス

「空気を魔力で包んで小さく、、

圧縮空気、、、、

包みの出口を作る

螺旋状に、、、溝、、」


おお、めちゃくちゃスムーズ。

俺のあんな説明で理解したのか、

恐るべしサリスさん。


・サリス

「魔力を回転させながら、、

出口を開ける瞬間に、、

包みを潰す!」


キン、、、シュン


・サリス

「で、出来た?出来たわ!

見て、見て、岩に穴が空いた!

きゃ〜嬉しい〜」


サリスさん、かわぇぇ、、

こんな一面もあるんだなぁ。

黙って見てよう心のフォルダーに保存するんだ

そう思って暫く眺めていると、、

サリスさんがコチラに気付いた。


・サリス

「コホン、し、失礼しました。

で、出来ました。」


・「はい、ご苦労様。」


沈黙が流れる、、、

気まずい、、、


・「後は自分で調整しながら練度を上げていって下さい。瞬時に様々な玉を撃てる様になれば戦術の幅が広がりますので。」


・サリス

「はい。」


、、、気まずい。

余程恥ずかしかったんだな。

サリスさんの耳まで赤い。


・「つ、次は、

超高速移動と空中徒歩をやりますか。」


・サリス

「空中徒歩!空を飛べるのかしら?

楽しみだわ。」


やばい、大袈裟な名前付けてしまった。

かなり後悔。


・「飛べないですよ?

あくまでも、空中で歩く、、ですからね

期待させて申し訳ない。」


・サリス

「だ、大丈夫よ。

こちらこそごめんなさい、

ちょっと舞い上がってるみたい。」


・「では、空中徒歩から行きますか。

まあ、大袈裟な名前ですが簡単な話です。

圧縮空気を使って自らが飛ばされるって事ですね」


・サリス

「ダメージくらいそうだわ。」


・「普通にやればそうですね。

ですので足に風のシールドを貼るんです。」


・サリス

「成る程、そうすればダメージは喰らわないわね。」


・「ちなみにシールドのかたちですが皿をひっくり返した形でお願いします。そうすれば圧縮空気が直接押し出す力と皿に当たって逃げようとする風の流れで更に押して貰える事になるので効率よく風の力を使えます。」


・サリス

「風の流れの力なんて聞いた事ないわ。」


・「気流って言うんですけどね。

まあ、詳しくは知らないですがやってみると意外と簡単に出来ますよ、魔力変化の得意な人なら特に。」


・サリス

「難しく考えずに慣れろって事かしら?」


・「そうですねなのでやってみましょう。

圧縮空気ですが最初は必ず弱くしてください、徐々に強くしていってどれだけの力なら体が浮き始めるかを調査します。初めから強いと怪我しますので。」


・サリス

「分かったわ、初めは弱くね。」


サリスさんは軽くジャンプして足元に圧縮空気を作り風のシールドを展開する。最初は浮きもしなかったが回数をこなす毎に体から浮き始める。

着地したタイミングで、


『癒しの鼓動』


・サリス

「あん!もう、いきなりはダメよ。

ビックリしちゃうじゃない。」


・「テヘ」


なんかすみません。

でもサリスさん色っぽいわぁ〜


・サリス

「段々と掴めてきたわ、空中徒歩って要するに空中でジャンプを繰り返せる様になるって事ね?」


・「その通りです、両足で出来る様になればまるで空を散歩している様に見えるでしょ?だから空中徒歩なんです。」


・サリス

「両足ね、やってみるわ。」


サリスさんが両足を使って空中を歩く。

でも、3歩で降りてきた。


・「やっぱり両足は難しいですか?

、、、あれ、サリスさん?」


話しかけてもはんのが無い。

どうしたのかな?


・サリス

「ら、ライオットさん。

私に、称号が、、、称号がついたわ。」


・「本当ですか?

おめでとうございます。」


・サリス

「凄いわ、、、本当に称号が、ありがとうライオットさん。私には制空権って称号がついたの、『風魔法の消費魔力大幅減』まだ、信じられないわ、、、」


・「良かったですね

これで歩行距離も随分伸びますね。」


・サリス

「ええ、嬉しいわ。

後でセリスに自慢しなきゃ!」


・「そうそう、超高速移動ですが。

要領は空気徒歩と同じで圧縮空気とシールドを使います、違うのは角度と速度で少し扱いを間違えると自爆します。」


・サリス

「こ、怖いわね。」


・「なので空中徒歩で魔力調整をマスターしてから使うと良いですよ。」


・サリス

「そうね、具体的にはどうやるの?」


・「えっとですね。

空中徒歩と貫通砲撃の応用です。

但し、この時使う砲弾は回転させない事。

空気の塊を放射する感じですね。」


・サリス

「フムフム」


・「まず足にシールドを張りダッシュする要領で、足の裏から空気を放射しまぁぁぁぁあ」


ドゴーン。


・サリス

「ライオットさん、大丈夫?」


・「な、なんとか、、、」


説明の途中で発動した為。

高速で木に激突したのであった。


・「いてててて、、、」


・サリス

「なかなか、怖い移動方法ね、、」


・「あ、いや、実は続きがありまして、止まる時に空気を逆噴射させてブレーキを掛けるんです。こうやって、、、」


俺はもう一度、高速移動する。

次は風魔法の逆噴射で止まって見せる。


・「どうですか?スタート時の圧縮空気の風圧次第でスピードは好きなだけ上がります。その分逆噴射で止まりにくくなりますが慣れれば力加減がわかって来るかと。ちなみに逆噴射の魔力は直ぐに消せば前方に風圧が行くことはありません。魔法って便利ですよね。」


・サリス

「こんな移動方法があるなんて。空中徒歩と高速移動、これを駆使しながら敵を撹乱して砲撃を撃つ」


・「ね?変則攻撃特化って言葉がピッタリでしょ?」


・サリス

「え、えぇ。素晴らしいわ。

早速やってみる。」


サリスさんは真剣に考え込む。

イメージトレーニングしてるのかな?

すると、、


シュン、、、、、


・「なっ!」


サリスさんが消えた。

いや、あの砂埃の飛び方なら右側に居るはず。

俺は咄嗟に右を向く、、

しかし、誰もいない


・サリス

「こっちよ?」


後ろから声がした。

振り返る、、、、いない?


・サリス

「えい」


・「イテッ」


頭に衝撃が!


・サリス

「ごめんなさい、ついつい。

でも凄いわ、この移動方法。

簡単に隙をつける。

それに、、、、、」


・「ん?サリスさん?」


あれ、またサリスさんがフリーズしたぞ。


・サリス

「また、、称号が付いた、次は『韋駄天』って称号で俊敏性の数値が1.5倍になる。

なんで凄いのでしょう。あぁ、堪らないわ、、、ゾクゾクしちゃう」


自分を抱きしめるかの様な仕草をするサリスさん

ちょっと震えている辺りがなんとも言えない。

大人の色っぽさを感じます。


・サリス

「次よ、次を教えて。

私をもっと強くして!」


俺の中でサリスさんの完全にキャラが崩壊したよ

強さには貪欲なんだなぁ。


・セリス

「おーい、ライオット。

そろそろ昼飯でも食わねぇか?

ちょっと腹減って来た。」


マルチさんとセリスが帰って来た。

するとサリスさんが、、、


・サリス

「えっ?お、お昼?

ど、どうしましょう!」


珍しく慌て出すサリスさん。

今日は新しいサリスさんを発見できる日だな。


・セリス

「どうした?サリス。」


・サリス

「どうしたもこうしたも無いわよ、

決闘、今日のお昼からなのよ!

私はそれを伝えに来たんだったわ」


・セリス

「なにー!」


・「なんですと?」


・マルチ

「本当ですか?」


セリス、俺、マルチが3人同時に声を上げる

昼からって不味く無いですか?


・サリス

「こうしちゃいられない、直ぐにオルドラへ帰る準備を、、、」


・「あ、準備ならもう終わってますよ?

なあ、セリス?」


・セリス

「あぁ、いつでも帰れるぜ。」


・マルチ

「私もいつでも大丈夫だよ。」


・サリス

「助かるわ、じゃあ急いで帰りましょう。」


俺たち4人は野営地を後にし颯爽とオルドラへ向かう。予定だったのだが、、、


・「はあはあはぁ、、、」


やはり、、、俺が遅い。

いや、3人が早過ぎるんだよ、、、


・サリス

「ライオットさん、もう少し早く走れますか?」


サリスさん、それは無理です。

無理なのです、、、

伝えなければ、、、


・「わかりました、、頑張ります!」


俺のバカ!

無理だって!


・セリス

「サリス、多分ライオット限界だぞ?

前も足遅かったからアタシが担いでたし、」


・サリス

「そうなの?無理しないで言って下さい。」


・「はい、すみません。

もう、限界です。」


ほら、怒られた。

嘘はよくないよ?嘘は。


・マルチ

「サリス、昼までに間に合わない?

間に合わなかったら決闘どうなる?」


マルチさんが質問する。


・サリス

「不戦勝と言う形で負けになるわ。今回は少しなら待ってくれるでしょうけど余り待たせると負ける事になるでしょうね。」


・マルチ

「先に行って時間を稼ぐ事は可能?」


・サリス

「それだわ、マルチさん天才!

そうと決まれば、ライオットさん。

担ぐわよ!」


・「へっ?」


サリスさんが俺を一瞬のうちに担いだ。


・サリス

「マルチさん、セリス、

私とライオットさんが時間を稼ぐから急いで来てね。」


・セリス

「了解だ、サリス」


・マルチ

「わかりました。」


俺の、、俺の意見は無しですか?

担がれてる状態で言える意見も無いけど、、


・サリス

「じゃあ、ライオットさん。

しっかり掴まっててね、」


・「はい」


サリスさんの顔色が変わった。

そして雰囲気も、、、

魔力が一気に高まる


・「さ、サリスさん?

まさか超高速移動する気じゃ無いですよね?」


・サリス

「その、、、まさかよ!」


サリスさんが爆発的に加速する。


・「い、いやぁぁぁぁぁぁ」


俺の悲鳴がこだまする。


・セリス

「サリス、いつの間にあんな技を?」


・マルチ

「凄まじい速さです。」


セリスとマルチが感心するが、、、


・セリス

「ライオット、耐えぬけよ、、、」


既に聞こえていないライオットにエールを送った


・「早い、速い、サリスさん、怖い!」


・サリス

「喋ると舌を噛むわよ!

絶対に離さないでね。」


もう少しで白堊門だ。

ここで降ろしてもらえる、、、

後で怒られてもいい、逃げよう。


・サリス

「行くわよ」


サリスさん?

何で加速するの?

何で気合いを入れ直したの?

もうすぐ門ですよ?

まさか、、、

いや、流石にそれは。


・サリス

「はぁ〜、、、とおっ!」


・「嘘だろぉぉぉぉ!

やめてぇぇぇぇぇ!」


サリスはライオットを担いだまま空中徒歩で門を越える、更にそのまま闘技場らしき所まで空中を走る。


・サリス

「もう少し!」


闘技場の上空付近来るとそのまま自由落下。闘技場上部の空いた部分から侵入して、着地寸前に逆噴射でブレーキを掛けて着地する。

完全に風魔法を使いこなすサリス。


・サリス

「さあ、着いたわ。お待たせして申し訳ありません。ライオットさんよく頑張ったわね、降りて良いわよ。

て、、、、ライオットさん?

ライオットさぁぁぁぁん」


一方、まだ門にたどり着いていないセリス達


・セリス

「おい、マルチ。今の見たか?」


白堊門手前の丘を走っていた。


・マルチ

「見ました。サリスさん飛んでましたよね?

どうやって、、、」


・セリス

「あぁ、、わかんねぇが、

とんでもねぇな、姉さん。」


感心する2人をよそに、

肝心の闘技場内では、、


・サリス

「ライオットさん、起きて!

お願いだから起きて〜。」


白目で失神したライオットを必死に起こそうとしているサリスの姿があった。

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