第二節

 里咲と行ったこの夏祭りの記憶を私は忘れない。


 彼女と行った、たった一回の夏祭り。

 思い出すたびに、胸の奥が締め付けられて涙が溢れ出してくる。


 叶うことなら、もう一度だけ二人で夏祭りに行きたい。

 ………………これは嘘。


 本当は、毎年毎年、約束をして二人で夏祭りに行きたい。

 浴衣を着て手を繋いで歩き、最後はかき氷を食べながら花火を眺めたい。


 本当に、どうして楽しい時間は過ぎるのが早いのだろうと感じる。

 あまり好きではなかった夏があっという間に過ぎていった。

 少しだけ、夏という季節が好きになったあの夏が。

 もっと陰鬱な日々になると思っていたのに、あの日常は煌びやかだった。



 八年が経った今だからこそ、あの日常は何よりも美しかったのだと実感できる。



 そして、里咲と二人で一度だけ行った夏祭りよりも、酷く記憶に焼きついた出来事がある。



 

 

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