第17話次の日の武村ー夏季講習を申し込む

次の日の武村 -夏季講習を申し込む


次の日、学校に行っても、今までどおり、武村も変わらず怖いまま、それからもときどき呼ばれて、なぜかコーヒーパックをおごってくれる。


村井さんと席は離れたけど、その度に、そのトップカーストグループの中にいるのにわざわざ俺の方にやって来て


「武村君と仲いいんだ」ってにっこりして戻って行く。


そうこうした夏休み1か月前 武村がいつものように、俺を呼んで、学食前の自動販売機の前に来て


「お前、予備校の夏季講習とかに行くのか?」


「うん」


「まだ申し込めるか?」


「武村も行く?」


「・・・ああ・・・」


「まだ間に合うと思うよ、申し込む?」


「そっか、お前、今日暇か?」


「まあ、今日は予備校ないし、中間テストの勉強くらいだから」


「じゃあ、帰りにバクド、な」


「・・・うん・・・」


「じゃあ」そう言っていつのように1人で戻って行った。


帰りのHRが終わると、武村が俺の教室に来て、俺を呼ぶ。クラスの皆はギョとした顔で武村と俺を見るけれど、関わりたくないのか、何もなかったように、しらん顔をしている。


村井さんだけがニコニコして俺に手を振って野球部の方に行った。


俺は急いで鞄=リュックを持って、武村のところに行き2人でバクドに向った。


この前と同じようにセットを頼んで、この前と同じように武村が全部おごってくれて、無言でバーガーを食べ、コーラを飲みながらイモを食べ始めると、武村がボソボソ話始めた。


「この前は、ありがとな」


「ん?」


「お前の中学の時の友達の友達の話、あの話調べたんだけど、かなり有名な哲学者の話らしい、お前の言う通りかもしれない」

俺はじーっと武村の話を聞く。


「俺、逃げていたんだと思う。あれからお袋に電話してみた。


お袋がすごい喜んでくれて・・・・・会社のっとって、クソ親父を放り出して、お袋と弟を呼び戻そうと思う。だから、俺も大学に行こうと思う」


「そうなんだ、じゃあどのコースにする? 国立理系、私立理系?」


「はあ?」


「だって、建設会社だろ」


「あのな、会社の経営をするんだから、設計とかやってもダメだろ、経営とか商学とか経済とか、まあ法学とかもだろう」


「そっか、じゃあ俺と同じ?俺、私立文系コースだけど」


「なんで私立なんだ? 国立は考えなかったのか?」


「いや~、共通と2次の科目数を考えたらちょっと大変かな~って、俺、国語には自信あるけど、数学あんまり得意じゃないし」


「じゃあ一緒だな」


「ふ~ん、じゃあ武村も俺と同じ私立文系コースだね、でも厳しいコースだよ、1部3年生コースに紛れ込むから」


「おお」


武村も同じ “一応進学校” に試験を受けて合格しているわけだから、いくらワルになったとしても、ちゃんと考えればしっかり頭はまわるので、そういう話を武村がした時、最初は驚いたけれど、普通に納得、安心した。


(やっぱり根はまじめなんだ)。


それから、明日予備校に行くから、受付で申し込みについて聞いて、パンフレットもらってくると言って、別れた。


予備校に行った次の日の夕方、武村と一緒にバクドにいる。


昨日と同じように帰り際に村井さんがにっこり手を振ってくれた・・・・


「これ、パンフ、申し込み書も一緒、WEBで登録すれば間に合うって受付の人が言ってた」そう言ってA4サイズの封筒を渡した。

「・・・・・」

「受験科目は基本3科目、英語と国語と社会、高田大学の政治経済は他に数学も必須で、帝王大学は国語の代わりに論文、武村はどうする?」


「お前は何に申し込んだ?」


「俺、数学苦手だから政治経済はあきらめたけど、高田大学には行きたいし、帝王大学も受けようと思うから、英語、国語、日本史と論文を受けるつもり」


「じゃあ、俺も同じだ 」


「えっ、 同じ? 地歴は日本史でいいの?」


「ああ」


「英語も3つあるんだ、長長文読解、文法、英作文、国語も現代文と古文・漢文があるんだ。


この長長文と論文は3年のコースですごく難しくて、きっと全然わかんないと思う 」


「お前と同じにするから、何に申し込んだか教えろよ」


「うん、わかった」そう言って 俺が申し込んだ 講習項目にシャーペンで丸を付けた。


 武村はそれを持って、バクドを出て、その場で別れた。


武村はその日のうちにWEBで登録し、次の日、俺に予備校までバイクに乗せろと言ってきたので、本当は俺のバイクはタンデムは不向きで、自分も不安定でイヤだから、今日だけ、と言って武村を乗せて予備校に行った。


俺はそのまま予備校の授業に出て、武村は申し込みの手続きをして電車で帰った。

それから何度も武村の脚に使われたんだけど・・・

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