第48話 年がら年中発情期……賢人サイド
うわ、ヤバイ!
キスした!!
なんだ、これ?! マジ、バクバクする。主に下半身が。
賢人は、シャワーを全開にしてズボンを履いたまましゃがみこんだ。
我慢も限界だった。
初めて女を知った中学生の時だって、こんなに滾ったことはない。いつだって女に困ったことはなかったし、あっちが勝手に盛り上がって勝手に腰振って、欲を吐き出すだけだった。べちゃべちゃするキスは好きじゃなかったし、最低限しか相手の身体には触りたくもなかった。
それが、寝てるのを良いことに、弥生のことは触りまくったし、キスだって実は何回もした。ガッツリした。
ファーストキスでチャラとか言っておきながら、ファーストどころかセコンドですらないし。
十回?二十回?
弥生が知ったらヒクくらいにはチュッチュチュッチュと止まらなかった。
今だって、軽いキスだけじゃ止まらなくなりそうで、頭を冷やす為に風呂場に逃げてきたのだ。
最近ヤッてないせいか、性欲がヤバ過ぎる。弥生が着ぐるみ着てても盛れる自信がある。もちろん弥生限定だ。ようやく弥生を手に入れることができたのだから、前みたいに性欲処理の為に誰でもいいから抱くなんてことは、したくないしできないし勃たない。
結婚するまでしない?
ざけるな!
下半身が腐ってもげるわ!
健康な男子は定期的な精通が必須なんだよ。
でもな、嫌われたくないんだよ。
怖がらせたい訳でもない。
賢人はズボンとパンツを一息に脱ぐと、熱いシャワーを頭から浴びた。
「煩悩退散、煩悩退散」
とりあえず気持ち(股関)を鎮めた賢人は、定番の部屋着兼寝巻きであるTシャツにスウェットを着ると、バスルームから部屋に顔をだした。
弥生は夕食(すでに夜食)を作りに部屋に戻ったらしく、ベッドは弥生が寝ていた痕跡もなく整えられていた。
「ハァ……」
賢人がベッドに横になると、自分の匂いに混じって弥生のシャンプーの香りが枕からする。その匂いを肺いっぱいに吸い込むと、退散させた煩悩がムクムクと起き(勃ち)上がってきてしまう。
「アーッ、おさまらねェッ! 」
悶々とした賢人は、右手のお世話になるのだった。
★★★
そんなこんなで、弥生との初キスからはや一週間。
毎日学校以外では一緒、ほとんどの時間は弥生の部屋で過ごし、寝る時だけ自分の部屋へ帰る。本当は寝る時だって離れたくない。抱きこんで眠りたい。
キスだって……無茶苦茶したい。舌突っ込んで、からめて、啜って、弥生の顔が蕩けるところが見たい。見たいけど、無理やりとかしてもし弥生に拒絶されたら?
死亡案件だ。
二度とあいつに拒否られたくない。あいつからもう一度「別れたい」って言われたら、多分人格が崩壊するかもな。ってか、生体機能が停止する。
あんな触れるか触れないかぐらいのキスで固まっちまうんだもん。それ以上が受け入れられる気がしない。
あの後だって、かなりキョドってたし、せっかく慣れたハグだって今じゃ緊張感半端ない。
ちょっと近寄るだけで、一メートルくらい飛び退るんだぜ。どこの野良猫だよ。
だから、弥生が気がつかないように忍び寄って、バックハグが最近の主流。
弥生の彼氏でいる為には、これで我慢しなきゃなんない。それはわかっているんだ。
でも、理解しているのと、実践できるかは話は別で、最近の自分の下半身事情は、人間にも発情期ってあったんだなってくらい簡単に反応しちまう。弥生限定で、年がら年中発情期の賢人であった。
ほら、今だって弥生が髪を耳にかけた仕草を見ただけで、賢人の賢人様はギンギンだ。
ちょっと待て俺!
いったん落ち着こう。
「どうかしました? お茶でも欲しいですか? 」
夕飯を食べた後、賢人と弥生は弥生の部屋でレポートを書いていた。
賢人は先輩から貰った過去のレポートをうまい具合にミックスしてすでに書きあげていたが、弥生は図書館から借りてきた資料を熟読しつつ考察を書いている。
眼鏡に素っぴん、髪の毛は洗いざらしでブローしてないからか少し跳ねており、色気の欠片もない中学のジャージを部屋着にしていた。とても年頃の女子が彼氏の前でする格好ではないだろう。
賢人に見られていることに気がついた弥生は、いったんボールペンを置き、お茶をいれる為にキッチンへ歩いていった。
「なあ、まだ終わらないのか? 」
「終わりませんね。やっと半分くらいです。賢人君は眠かったら自分の部屋に戻られたらどうでしょう」
「眠かない。暇なんだよ、ビデオでも見ようぜ」
「レポートがありますから」
弥生がキッチンに立った後ろから囲い込むように流しに手をつき、弥生の肩に顎をのせる。弥生の肩がビクッとなり、緊張に身体が固まるのを感じる。
こいつ、俺といたら身体バキバキにこるだろうな。
マッサージしてやろうか。
一瞬弥生の違う場所を揉んでいるところを想像してしまい、賢人は腰をかなり後ろに引いて反応した下半身を弥生から離した。
「そういやさ、小学校の同窓会通知きたか? 」
「同窓会? さあ? 」
高三の時にクラスが別れた以外は常に同じクラスだったのだから、同窓会があれば弥生のところにも連絡がくる筈だ。
きっと家には葉書が届いているのだろうが、まだ知らなかったのだろう。賢人にはラインで出欠……というか「絶対出席で!! 」と男性幹事から連絡がきていたので、「了解」とだけ返していた。
賢人の出席を厳命されたのは、賢人の出欠の如何により、女子の出席率がかわるからという理由だった。
「クリスマスイブ・イブらしいぜ」
「イブ・イブ? 」
「二十三日」
「ああ」
今まで、家族以外とクリスマスを過ごしたことのないのは弥生ばかりではなく、女に不自由したことのない賢人も同様だった。
賢人の場合は、下手にクリスマスなんかに女に会ったら、どんな勘違いをされるかわからないという面倒臭さからだ。
「なんか、クリスマスに滑り込みたいフリーな奴等が企画したらしいぜ」
「賢人君は行くんですか? 」
お茶をいれ終わった弥生が、賢人の腕を流しから外して机へ戻る。
「絶対出席って、森谷に言われたからな。ってか、おまえも出席な」
「は? ……アツッ! 」
机に緑茶を置こうとしていた手が一瞬滑り、跳ねたお湯が手にかかったらしい。弥生はマグカップを机に置き、手をこすった。
「アホ。手、冷やせ」
「大丈夫。びっくりしただけで、そこまで熱くなかったですから。私、行きませんよ。仲良しとかいないし、行っても喋る人いないし、行くだけ無駄だし」
「俺がいるだろ」
弥生の顔から表情が抜け落ちる。
そして、ゆっくりと嫌そうに眉を寄せた。
「余計嫌ですけど」
「もうおまえも出席って連絡したから」
「えーッ? そんな勝手に……」
「クリスマスボッチのがっついた女達に襲われたらどうすんだよ。おまえは俺の彼女として、女避けの盾になりやがれ」
盾にするなんて嘘だ。今度こそはがっつりしっかり守ってやる。そんでもって、弥生を虐めてた女共に思い知らせてやる。
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