合法同棲:リライト 〜with"元"女子高生の家出少女〜
トレケーズキ【書き溜め中】
第1話 始まりの出逢い
俺の名前は
普通に学び、普通に遊び、普通に楽しく生きている、しがない大学生。
………………だった。
俺の人生は、あの時、"普通"とは掛け離れた方向へ進んでいった。
≪≫
「人生レベルで……幸運な日だ…………‼︎」
10月22日、水曜日。神奈川県、新子安。
俺は家までの夜道を歩いていた。電灯が午後10時過ぎの暗闇を柔らかく照らし、涼しい風が小さな音を立てる。
(晩飯に使っても
一体何度目だろうか、財布を取り出し、にやけながら潤った中身を見る。
そして、数時間前の事を想起する。
あの時の高揚を、歓声を、喜びを……
〜〜
『先頭はビギニングウィンド、2馬身突き放した‼︎ビギニングウィンド先頭でゴールイン‼︎
「ナイスたじまあぁっ‼︎この恩は忘れないぜえぇっ‼︎」
〜〜
…………いや、これだけじゃ分からないか。
説明すると、俺は競馬が大好きである。昔から沢山のレースを見て、沢山の感動を経験した。
そんな俺も今年の夏で20歳、つまり馬券が買える年齢になった。
因みに俺は横浜の大学に通っている、経済学部の人間だ。"パラ経"と呼ばれる通り、他の学部に比べると自由な時間が多い。
そのため、水曜日には家を通り越して、よく大学とは反対方向の川崎競馬場に友人と行っているという事だ。
そして今日も観戦に行った訳だが、今日は、ロジータ記念というまあまあ大きなレースがあった。
その時の出来事を、もう少し前の時系列から振り返ってみる事にしよう。
〜〜
「勝幸、金くれ。俺が買ってくるよ」
「流星頼んだ。これで買ってくれ」
3歳頃からの幼馴染で、最大の親友にして最大の競馬仲間である
「お前何の馬にしたんだね」
「僕の本命のグロワールと被ってないよなぁ?」
小学校が同じで、別の学部とは言えども大学で再開した
「グロワールは買わないよ。9番のビギニングウィンドの単勝(1着を当てる馬券)1点勝負だ」
「おぉ良かったー」
「因みに9番のオッズは22倍だね。成田の馬より、ちょっとだけ穴馬って感じだね」
謎の安堵の笑いを浮かべる孝春に対し、常忠が新聞とターフビジョン(競馬場の映像ディスプレイ)を交互に見ながら説明している。
俺は自分で色々と書き込んだ新聞へ目を移す。迷って選択肢を絞った結果、9番の1頭だけを残した。
馬の調子も良さそうだし、そこそこ自信はあるので、単勝を千円買う事にした。
幾分かの時が経って、流星が馬券を手に戻って来た。
「買ってきたぞ〜‼︎しかし勝幸、単勝五千円とは勝負に出たね〜」
「は?」
「いや、だってお前、五千札渡してきたじゃん」
「」
〜〜
まぁ、ざっとこんな感じ。
慌ててたのか、渡す札の種類を間違えてしまうという痛恨のミスに、俺は落胆していた。
しかし、本命がまさかの1着。
そのお陰で、22倍×5000円=110000円を手にする事になった。
それで、よーしこの万札1枚で晩飯
思い出すと、今でも頬が緩んでしまう。今回含め、昨日、一昨日辺りから幸運が続いている。まだまだ良い事が起こりそうだ。
そんな事を考えながら、公園を横切る。
足下の落ち葉を踏む音が、
流石にこの時間帯だと、子供は勿論、誰もいないみたいだ。
そう思ってた。
「………………ッ⁉︎」
横を見てた時、ふとそれは視界に入った。ベンチの所にいる何かが。
幻覚か?でも、確かに見える。
ならば何だ?よく見ると分かる。明らかに人の影だ。
「これは幸運か、不幸か………………‼︎」
殆ど聞こえないような声が漏れる。
あれは恐らくホームレスだ。自分との距離はそこそこあるが、明らかに分かる。
立ち去ろうかと思ったが、その考えは一瞬で
(万札……1枚2枚なら、あげてもいいかな)
自分なりの妥協策だった。
何かしてやりたいが、面倒事には巻き込まれたくない。
俺は優し過ぎる時がある。そのせいで、よく面倒な事に突っ込む羽目になっていた。
そんな俺の目線の先にある人影。あれは目に見えたトラップだ。ホームレス(仮)という大きな餌が置かれているだけだ。
そこに捕まって、巻き込まれるべきではない。良心にもけじめをつけておく必要がある。心の中でそう言って、勇気を持ってベンチへ向かった。
「あの……大丈夫…………でしょうか」
当たり障りのないように意識して、その人影に話し掛けた。自分の左手には財布が握られてある。
格好からして女性だと分かる。そして自分よりも小さい。まぁ自分の身長は確か176cmだから当然と言えば当然だが。
俺の声に気付いて、フードを被った頭がこちら側を向く。暗くてよく見えなかった顔は、彼女がフードを取る事ではっきりとした。
(は⁉︎)
どう言う事だと、驚きの感情が自分を支配するが、何とか顔には出さないようにした。
でも、内心は驚き以外の何者でもない。その時では、それより高次の思考を巡らす事など出来なかった。
それも当然なのかもしれない。
そこに居たのは、まごう事なき年下の女の子────見た目で判断するなら女子高生────だったからだ。
「えっと……」
言葉が出ない。
顔色すらも
その女の子も、弱々しく口を開く。
「えっと…………」
この時既に、俺は人生の
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