13禁断の魔法?

「これから、どこに行くの?」


「市場だ。ついてこい。迷子になるなよ」


「は~い!」


「何を買うの?」


「食料。卵に牛乳、野菜、肉、魚などなど・・1週間分買うぞ。それから最後にパンも買う」


「わぁお!美味しそう!」


「おまえなぁ・・その食材の名前だけで美味しそう・・とか言うの、やめろ!料理がうまいのは、俺の腕がいいんだ・・まぁ、最高の食材を選ぶ俺の目利きがいいというのもあるが・・」


「は~い!!」


何気ないリアムとの会話がとても楽しく感じた。


市場が近づくにつれ、活気にあふれた賑やかな雰囲気が漂ってきた。一歩足を踏み入れると、そこには市場独特の香り、色彩も鮮やかな食材があふれんばかりに並び、積まれていた。


「いらっしゃい、いらっしゃい・・新鮮なトマト、ピーマン、ズッキーニ・・野菜ならなんでもあるよ」


「新鮮、美味しい卵なら、こちらだよ。鶏、鴨、うずらにあひる・・好きな卵が選び放題!」


それぞれの店の店主が声を張り上げていた。そんな中を、リアムは迷うことなく、あらかじめ決めてあったようなよどみない動きで、次々と買い物をすませていった。もはや、私の腕にもずっしりと、野菜や牛乳の入った袋の重みがかかっている。  


「うっへ~!!これは重い・・腕がちぎれそうだよ~」


「おまえ、大げさすぎ・・お前の食う分だ。我慢しろ・・それでも足りないくらいだろ?」


「それはひどい~」


食材を買い終わると、最後にリアムが言った。


「これで今日の買い出しは終了だ!」


「やった~!!」


「家に帰る前に、アイスでも食うか?」


「うん、うん、うん!食べる!絶対食べる!さすがリアム!」


「返事は1回でいいというのに・・あさましい奴だ」


そう言いながらも、リアムは私の方に輝くばかりのまばゆい笑顔を向けていた。そ、そんな笑顔はずるいわ・・ちょっと、ドキドキするくらい、さわやかなんですけど・・。


木陰のベンチを見つけて、荷物を置くと、リアムは店に向かった。


 私も重い荷物をやっとのことでベンチに置くと、それまで止まっていた血流が一気に流れるようなそんな感じがして、荷物から解放されたささやかな喜びを感じた。と、同時に、案外、リアムもいい感じ?などと胸をドキドキさせてしまった私・・。いやいや・・アイスのせいでいい人に見えてるだけだよ・・と即座に言い聞かせる。そう、これは単なる錯覚・・。


 そのうち、棒つきアイスを両手に2本持ってリアムが、ベンチに戻ってくるのが見えた。私のためにありがとう!と言いながら手を振った。ところが、戻ってきたリアムはいきなり、アイスをわざと落とすような真似をして、私をヒヤリとさせ、焦る私の顔を見て笑い転げていた。


「もぉ~ほんとに子どもなんだから・・」


「ははは・・おまえのようなガキに子どもと言われるようないわれはないわ」


そう言いながら、赤いイチゴ味のアイスを私に手渡してくれたのだった。


「おいし~!!」


 冷たくてさわやかな甘さのアイスだった。が、夢中で食べすぎ、途中で頭がき~んとなった。それを見て、リアムはまた笑い転げていた。


 アイスを食べ終わり、そろそろ帰ろうかと言う時だった。5歳くらいの女の子がお母さんらしき女性と手をつないで歩いているのが目に入った。女の子は父親らしき男性が道の向こう側から歩いてくるのを見つけ、女性の手を振り払って、駆け出した。そこに、猛スピードで走ってくる馬車が突っ込んできた。


「キャー!!」


 母親らしき女性の悲鳴と私の発した金色の光はほぼ同時だったかもしれない。


 私は考える間もなく、女の子を金色の光で包み、馬車との衝突を避けていた。馬車が通り過ぎた後、何事もなかったように女の子は気持ちよさそうな顔をして、歩道に立っていた。母親らしき女性と父親らしき男性は女の子を抱きしめていた。


「よかった、よかった・・」


 両親に抱きしめられた女の子は何が起こったのか分からずきょとんとするばかりだった。その光景を見ていたものは全員、しばらくあっけにとられていたようだったが、一瞬止まった人の動きは、ざわめきとともにすぐに再開され、何事もなかったかのように、人は動き始めた。


 私は自分がとっさに魔法を使い、女の子を助けることができたことに驚いていた。と、同時に、シャノンから部屋以外の魔法は禁止されていたことが胸につっかえていた。多分、私が魔法を使ったことは誰にもバレてはいないと思う。いや、バレていないでくれ・・と願うばかりだ。女の子が助かったんだ・・これでよかった・・そう思いたい。


「リアム・・帰ろう」


「お、おい!、今の見たか?女の子が金色の光に包まれて身体が浮き上がったよな」


「・・・・」


「俺・・夢でも見てたか?」


「・・・・」


「リサ・・見たよな・・今の?」


「リアム!帰ろう!!」


思った以上に強い声が出ていた。何か私に異常な気配を感じたのか、リアムは話すのをやめた。


「そ、そうだな。帰ろう」


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