2これで稼げ

「リサはまだたった一日しか占いをしていないんだけれど、たった一日で大人気の占い師になってしまったのよ。プリンセスかぐや・・という名前で有名になってしまったわ」


シャノンが言うと、アイデンは興味深そうに言った。

「プリンセスかぐや・・。聞き慣れないけれど、いい名前だね。気持ちを惹かれるよ」


「そうでしょ。リサの国の昔話に出てくる月の世界のお姫様なんだって。本当にリサにピッタリの名前だと思う・・。本当のリサのイメージと程遠いけど、ミステリアスなイメージが売りなのよ」

そう言ってシャノンは笑い転げていた。


「ははは・・男は、そういうミステリアスが好きだからな・・」


「そうなのよ。びっくりするのだけれど、とても高価なものだと思う黄金のネックレスを贈って、プリンセスかぐやに会いたいと言っていた貴族風の男が一人いたわ」


「よほど、プリンセスかぐやに惚れ込んでいるんだな・・」


「うふふ・・私の魅力がすごすぎるのね。これで、もうしばらくは、働かなくても食べていけるはず・・おばあちゃんも文句はないと思うけど・・」

私も、二人の会話に思わず首をつっこんだ。


「おばあさん?リサが住んでいいる家の占い屋のおばあさんはなんという名前なんだい?」


「あ・・・そういえば聞いてなかったなぁ。リアムは・・あ、多分おばあちゃんの孫なんだけど、ばあちゃんとしか言ってなかったから・・でも、よく当たるって評判らしいよ。ただ、働かざるもの食うべからずってとっても厳しい」


「そうか・・とりあえず、リサもちゃんとしたところで生活できていることが分かって安心したよ。もし、困ったことがあれば、何でも相談して・・。シャノンがついているから、大丈夫だと思うけれどね。じゃ、シャノン、リサ、また・・」


そう言ってアイデンは笑顔で手を振り、湖の奥の方へと姿を消した。


私達は思いがけず湖でアイデン皇太子殿下と出会うことができたことに感謝した。彼の温かい人柄が、私も彼と昔から知り合いだったような気にさせてくれ、穏やかで和やかな時間を過ごすことができた。


「お城で何か大変なことが起こっているみたいだけれど・・大丈夫かな」


シャノンは何かを考えているようだったが、


「そうね。でも、アイデンは言っていたわ。私達は首を突っ込んではいけないと・・。婚約を破棄し、リサを城から出したことには、必ず意味があると思う。アルベルトを信じましょう・・・」


「そうだね・・」


「そろそろ、帰りますか」


そう言うと、シャノンはのんびりと前足を伸ばし、背中をぐい〜っと伸ばして気持ちよさそうに伸びをしてから、私の肩にぴょ〜んと飛び乗った。



家に帰ってから、私は占い屋の店先や玄関、部屋を入念に掃除をした。最後は、水晶玉を丁寧に丁寧に磨いた。もともとピカピカだけれど、磨いているともっとピカピカになるような気がした。そのうち、私の顔が映り込んでいるのを見ていると、楽しくなって、『いー』だとか、ウインクとか口をすぼめたりして変顔をしているうちに、一人にらめっこのような状態になっていた。


「おまえ・・ホントに見ていて飽きないやつだな。一人でそれだけ遊べれば、しあわせだよな」


リアムが笑いながら言った。


「げっ!!見てたの?人が悪いなぁ・・帰ったのなら、ちゃんと声をかけてよ」


「あんまり面白いんで、声をかけ忘れたわ。ガハハ・・」


リアムはお腹を抱えて笑っていた。


「もぉ・・」


私は自分がものすごく赤面しているのを感じながら、リアムの方を睨んでいた。


「こぇ〜!!お前すごい怖ぇ〜顔してるぞ!」


「だって、リアムが意地悪いうから・・もぉ〜」


「ホントに、面白いな・・お前・・」


「・・・・・」


「ところで、今日は占い希望者殺到で、占いしなかったんだってな・・表の張り紙読んだわ。今日の売上はゼロってわけ?」


「まあ、売上はゼロですが・・貢物はありまして・・」


「貢物?」


「はい・・こう見えてですねぇ・・あなたは私を馬鹿にしていますが、お客様からは人気の占い師となっていてですね、ちょっと待ってくださいよ・・これこれ・・」


そう言って、黄金のネックレスの入った包みをリアムに両手で差し出した。リアムは包みを開けてネックレスを摘むと、


「お〜!」


と声をあげた。


「これ、何だか高そうだな・・。これが今日の売上ってわけか?」


「まぁ・・そういうわけで。これなら、しばらくは働かなくても十分じゃないかと・・」


そういう私に、リアムは冗談ともつかない顔で言った。


「そうだな・・。おまえ、すごいな!しばらく働かないなんてもったいない・・毎日これで稼げ・・貢物生活だ!」


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