4占いデビュー?

大急ぎで洗い物をすませた私は、おばあちゃんの仕事場に向かった。台所のドアを開ければ玄関から通じる狭いエントランスがあり、その奥に何やら怪しげなカーテンで仕切られた場所があった。多分そこがおばあちゃんの仕事場なのだろうと見当を付けて、おばあちゃんに声をかけた。


「おばあちゃん、リサです。ここで、よかったですか?」


「ああ、お入り」


カーテンを右手で押しやり、中を見ると、とてもこじんまりとした部屋があった。薄暗い部屋の壁際に、何か所かろうそくのような灯が灯されていた。お香のような香りがしていて、何やら怪しい占い部屋みたいな感じだった。中央には小さ目のテーブルが一つ置いてあり、黒いビロードのような生地のテーブルクロスがかけられていて、その上にはろうそくの炎が反射して怪しく光っている大きい水晶玉がど~んと置いてあり、異様なほどにその存在感を放っていた。そして、その水晶玉を見つめるようにして、おばあちゃんが座っていた。おばあちゃんは黒いローブを羽織っていた。


「どうだい?いい感じだろ?この雰囲気がまず大事なんだよねぇ。」


ニヤリと笑うおばあちゃんはやはりちょっと不気味。


「そ、そうなんですね・・」


「そこに、衣装があるから、お前も着るんだ・・」


「え?私がですか?」


「そうだ。働かざるもの食うべからずと言っただろう・・おまえも、これで稼ぐんだよ」


「おばあちゃん、ちょ、ちょ、・・ちょっと待って・・。いきなりそう言われましても・・」


私は昨日までは、無敵の皇太子妃になるはずだったのに・・・なのに、いきなり今日からは怪しい占い師ですか?


「つべこべ言わずに、さっさと着替えるんだよ」


「は、はい」


おばあちゃんの迫力に、もはや私は何の反論する言葉も見つけることなく、黒いローブを付け、おまけに顔を覆うようなスカーフまで付けた。


「はははは・・よく、似合うじゃないか。これなら、いっぱしの占い師に見える。じゃんじゃん稼げそうだ。うふふふ・・・」


おばあちゃんは無責任に笑っている。


「おばあちゃん、何か占いのマニュアルかなんかありますか?」


「はあ?マニュアル?それは何だい?」


「あの・・占いの手順書とでもいいますか・・そう誰でもできるやり方みたいな・・」


「あはは・・そんなものある訳ないだろう?」


「・・・・」


「あたしはこれで稼いで、リアムを立派に育てたというわけさ。お前さんも、しっかり稼いで家賃と食費はちゃんと払ってもらうからね。ふふふ・・・」


おばあちゃんは無責任に笑っている。


「じゃあ、あたしは用事があるので、でかけてくるわ。後は頼んだよ」


「お、おばあちゃん・・出かけられても・・私・・困るんですけど・・あの・・何をしていいのか全然なんですけど・・」


「しっかり稼ぐんだよ!」


おばあちゃんは、一言そう言い残して出ていった。まさか、あのローブ姿で外には出ないと思うけど、私一人置いていくなんて・・どうかしてる・・絶対。私はその狭い部屋の中をウロウロしていた。


「にゃ~ん」


シャノンの鳴き声がした。


「シャノン~!!私にはあなただけが頼り。助けて~。何で私が占い師なわけ?誰かお客さんとか来たらどうするのんだろ?・・」


「まあ、テキトーなこと言っとけばいいんじゃない?」


「テキトーって・・それでお金とったら占い詐欺じゃないの?しかも、占いって何を占うの?どうやって?」


「まあ、深く考えない。リサは黒猫型妖精の私が見えるんだからさ、そういう未来もしかして見えるかもよ」


「え~!!そんなテキトーなこと言わないでよぉ~。とにかく、一緒にいてよね」


「でも、占いって面白そうじゃない?」


シャノンはとても、とても無責任に言う・・はぁ。


そんなことを言っている間に玄関ドアに付けてあるカウベルが鳴り、大きな声が聞こえた。


「ばあさん、いるかい?」


き、き、来た~。ドキドキして、緊張する私とは裏腹に、無責任なシャノンの声が聞こえた。


「リサの はったり占い、記念すべき第1号だね!!」



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