13私のできること

私たち4人は、部屋の中のアルベルト、アイデン両皇太子殿下がハメを外し、取っ組み合いをしたことで、部屋の外のレイラとフランクが、私とアルベルト皇太子殿下がどのようになっているのか、顔を見合わせたり、ドアに耳をつけて伺ったりしながら、気をもんでいたのも知らず、2年前に絡んだまま凍結していた二人の気持ちは以前のような前向きなものになったことを心から喜んでいた。

「じゃ、これで、僕は失礼する」

アイデンはそう言い、また私の膝の上のシャノンの方に目を向けた。シャノンは膝の上で立ち上がり、アイデンの方を見ながら、

「にゃ~ん」

と鳴いた。

この声は私にだけしか聞こえなかったはずだ。アイデンは、再びシャノンが私の身体を使って何か、話すことを期待して、待っていたようだが、それからシャノンは一言もしゃべらなかった。アイデンはやっと諦め、私の方を見て言った。

「最後に、ひとつだけ、わがままを聞いてほしい」

「なんでしょうか、アイデン皇太子殿下」


「一度だけ、シャノンとして、最後に君を抱きしめてもいいだろうか」


アイデンの申し出に、真っ先に反応したのは、アルベルト皇太子殿下だった。

「だめだ、だめだ!リサは私の婚約者なのだから。それだけはダメだ!!」


「分かった、分かった。そんなに必死にならなくてもいいよ。冗談だ」

アイデンは笑いながら、

「リサ、アルベルトとお幸せに」

そう言うと、両手を振り上げ、何やら呪文を唱え始めた。すると、アイデンは光に包まれ、その光は空高くまっすぐに伸びていった。

「あ、ありがとうございます」

と言う私の言葉がとどういたのかどうかは分からないが、一瞬で姿が見えなくなった。

「なかなか、腕を上げたな。しかしながら、いくらリサの力があるからと言って、城内であれだけ派手に魔法を使うとは、本当に困ったもんだ」

アルベルト皇太子殿下はそう言いながら、私を後ろからぎゅっと抱きしめていた。

殿下、アイデン皇太子殿下、シャノンのことを知って、私にも複雑な思いはあるが、それでも、優しく抱きしめてくれるアルベルト皇太子殿下がここにいる幸せを今はかみしめていたい。

それと、今の私には何が何だか分からないけれど、ムーンストーンの力を持っているらしい。その力がどんなものなのか、これから、シャノンとアルベルト皇太子殿下と一緒に、試してみたい!!殿下にふさわしい皇太子妃としての力を持ちたい!漠然とではあるが、その時はそんな風に思っていた。

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