第126話「激闘の二人、決戦の二日目へ」-Side信矢&狭霧-その2


 午後からの二種目の内の最初は涼学統一オリジナルの異種格闘技だ。平たく言うと格闘技なら何でも有りで明日の武道部門の決勝競技でもある。


「ルール説明に入ります。まず参加者は100名ごとに各ブロックに分けられ上位四名になるまで武を競ってもらいます。その際に相手の戦意喪失や降参は認められますので危険だと判断したらすぐに戦闘を停止できます」


 今、僕が説明しているのが涼学統一最強決定戦の予選の基本ルールだ。簡単に言うとバトルロイヤル形式に近い。そして禁止事項は武器の持ち込みや薬物の使用等だ。


「あくまで素手で己の技と力のみでの戦いです、理解できましたか?」


 未だ理解出来ないといった顔をしている参加者がいるのを見て僕は分かりやすい言葉に変えて改めて宣言することにした。


「難しく考える必要は無い……要は戦って上位四名まで生き残るだけ!! それと、この競技だけは男女別では無いから気を付けるように!!」


 今言ったように男女別では無いのが特徴の一つで他の競技は男女別なのに、これは例外だ。そして有効ポイントも二倍になっているので運動系部門でのトップを取るには必ずこの種目に参加する必要が有る。


「では明日の本選まで生き残れるよう互いに頑張りましょう!!」


 そこで僕は言葉を区切るとステージを降りた。ここからは自分の会場のEブロックまで他の生徒と一緒に会場へ移動する。ちなみにユンゲはAブロックなのだが周囲を見ると明らかな害意を感じる……嫌な雰囲気だ。


「よっ、春日井」


「河井、君も同じブロックか」


 だから不意にかけられた声に驚いた。声をかけて来たのは道着姿のクラスメイトの河井だった。


「ああ、話すようになってから思ってた、お前とは一度戦ってみたいと」


「そうか空手部だったな……」


「忘れてたのかよ、澤倉は水泳が無いって駄々こねてたぞ」


 そこは改善すべきかも知れないと苦笑しながら周囲を見る。河井や他にも部活動の人間がいるけど他は一般生徒で俺と同じ学校指定のジャージが多い。そしてゴングが鳴り響き戦いが始まった。




「狙いは会長ただ一人!! ここで潰すぞ!!」


「副部長の仇だぁ~!!」


 まず最初に来たのはボクシング部の三人だった。最初から狙ってくる上に理由も分かりやすいから僕は即座に応じる。周囲を警戒しつつ他に襲って来る連中がいないかを確認しながら三人を倒すと移動をすぐに開始する。


「よし、幸先は悪くない……っ!?」


 ヒュンと風の切る音がしたと同時に前方に倒れ込みながら受け身を取って背後を確認する。後ろには大柄の男が僕を見下ろしていた。


「レスリング部部長の藤堂だ、生徒会長……」


「知っているさ……今年こそ国体出場では?」


 奴の初撃のタックルは避けられたが態勢は崩れ危険だ。すぐに立ち上がると他にも数名猛者が確認できた。自然と笑みが出て僕は目の前の相手との戦いに臨む。このブロックでは一番厄介な相手だ。



――――Side狭霧


「ああっ!! シン!!」


「大丈夫だ……あれなら問題無い」


 先ほどから応援席の巨大モニターで観戦する私の声に答えたのは川上竜人さん。信矢の戦いのコーチで先輩の人。その横にいるメガネの優しいお姉さんが私の相談相手の一人で女子大生の相楽汐里さがらしおりさん。川上さんの恋人だ。


「で、でも~」


「大丈夫だよ狭霧ちゃん、本当に危険なら竜くんが行くから」


 そうならない事を祈りたい。実際に川上さんの戦っている所は見たこと無いけど凄く強いらしい。シンと戦闘スタイルは一番似ていると前に嬉しそうにシンが話していたのを思い出す。


「汐里さん……でも」


「信矢はあんな雑魚じゃ止まらねえ……ましてや今回あいつを止められるのは勇輝さんくらいだろうな、いや、それも怪しいな」


「え? 店長でも? 何で……ですか?」


 店長、秋津さんは凄い強い信矢の師匠で兄貴分で尊敬している人で実際、シンが目の前で拳一発で倒されたのを見たから強さはよく知っている。その店長でも今のシンは止められないとはどういう意味だろうか。


「決まってんだろ竹之内、オメーがかかってるからだ、お前の話が出た時の信矢は勇輝さんにもキレて殴り掛かって来たんだぜ」


 その話は初耳だった。川上さんとシンの出会いの話で当時中学生のシンが不良高校生数名にリンチされていた所を勇輝さんと二人で助けた時の話だそうだ。


「あいつ昔はすっげー弱くてな」


 それは変だとすぐに反論する。だってシンは昔から私を守ってくれてた。あのイジメが有るまでは、いや起こってからも私を守るために孤独に一人で戦い抜いたんだから弱いなんて有り得ない。弱かったのは私だ。


「違う。そういう意味じゃねえ、実戦慣れしてなかったんだアイツ、才能は有るし根性も有る、ただ基本がなってなかった……ノウハウが無かった」


 そこで川上さんが私の反論を軽く流して当時の話をし出す。当時は戦い方が分かってなかったシンは何度も負けてボロボロで、だけど負ける度に少しずつ強くなったらしい。


「あいつの強さへの執念は凄かった、だから俺も勇輝さんや他の皆もアイツを鍛えようと思ったんだ」


「やっぱり川上さんや店長と会ったからシンは変われたんだ……」


「いや変わってねえよアイツは、全部がお前のために戦っていた。色々と成長して変わった所有るかもしれない。だけどお前への思いだけは、たぶん一度も変わってないんじゃねえかな……あいつ」


 そう言って誇らしい顔をしていた。まるで弟を自慢する兄のような顔つきで少し妬けそうだ。でもシンは……信矢は私のために強くなったんだ。無茶ばかりして、今も必死に戦っていてくれてるんだ。



――――Side信矢


「ううっ……つええな会長」


「はぁ、はぁ……君も、お見事でした」


 僕は倒れ伏す藤堂を見下ろし肩で息をする。巨漢から繰り出す技はダイナミックかつ動きは機敏で厄介だった。最後は勢いを利用したカウンターの蹴りを合わせて倒すことが出来た。


「さて、次は俺らだああああ!!」


 しかし戦いが終わったのを見計らったかのように声が響いた。新たな刺客だ。


「っ!? やはり漁夫の利狙いか!?」


 涼学統一の難易度が今回と前回のどちらが高いかと問われたら今回だと断言できる。単純な話、前回は注目されておらず決勝まで今回のような連戦では無かった。


(つまりスタミナの消耗が激しい……)


 さらに今の僕の戦い方は三つの人格を統合した結果、以前のような計算された完璧な戦い方は失われている。昨年まで使えた気配探知モドキも使えず本当の気配探知しか使えないのが今の僕だ。


「よしっ!! いくら生徒会長でも連戦で疲弊してる!!」


「だが甘い!!」


 だけど、それでも僕は勝たなくてはいけない。負けたら狭霧を泣かせてしまう。望んでいない事態に巻き込まれる。なにより狭霧をあんな最低なトラウマ野郎に渡すわけにはいかない。


「ぐぁっ!?」


「ちっ!! 離れろ、隙を突いて再攻撃を!!」


 だが状況は劣勢だった。今は約半数以上の生徒が退場し三十名弱が残っているのだが、その内の半数が僕を狙い、さらに統率された動きで攻撃して来ている。


『お~っと、これは春日井生徒会長ピンチです!? ルール的には大丈夫ですが卑怯なのでは吉川副会長?』


『問題は……問題は有りません、バトルロイヤル中は決勝戦と違い徒党を組んで戦闘をしても問題は無いのです……ですが彼らは』


 今、モニター越しの実況席で吉川さんが言ったように問題は無い。しかし俺はこの状況に覚えが有った。この流れは前にどこかで経験したはずだ。


「そうか、お前らは!?」


「そうだ!! 我らの黄金の女神を奪った春日井信矢!! 今こそ『竹之内狭霧の金色に魅せられし集い』がお前に天誅を下す!!」


「やはり狭霧の集団ストーカー、犯罪者予備軍か!?」


「違う!! 我らはただ女神を見守るための健全な集団だ!!」


 過去に僕に襲い掛かって撃退された連中だ。しかし顔に見覚えは無い。あの時戦った連中とは違う。そういえば人数が二百人を越えていたから残党なのだろう。


「我らの金色の女神を奪った罪をっ――――ふげっ!?」


「それは狭霧が泣くので黙れよ……ぶっ飛ばしてやらぁ!!」


 手加減無しの拳を相手のリーダー格の顔面に叩き込むとワンパンで気絶させる。そのまま残りの二人も力任せに殴り飛ばす。怒りで自然と乱暴な言葉が出て第二人格が呼び戻されたような感覚だ。


「なんか急に、動きが……うわっ!?」


「おっせえんだよ!! おらっ!!」


 さらに連続で数名を倒す。だが次の瞬間いきなり背後に強烈な害意が迫り俺は咄嗟に全力で真横にジャンプして、その場を退いた。


「ぐっ!? なにっ!?」


「全ては王のために……王のために!!」


 いつの間にか俺の背後には金属バットを持ったジャージ姿の女子がいる。武器の持ち込みに思わず俺も混乱していると反応したのは実況しているモニター側だった。


『こ、これは武器の持ち込みです吉川副会長!!』


『審判員はすぐに止めて下さい!! ルール違反です!!』


 すぐに会場に止めるよう声が入るがなぜか審判員の生徒が動かない。それに監視しているはずの教師も来ない。どうなっていると焦る俺に二発目を振り下ろす攻撃が迫り紙一重で回避する。


「くっ!? どうなってんだ!?」


『どうしたんですか!! ただちに中止を――――ブツッ』


 今度はブツッと音声が途切れモニターが死んだ。それに気を取られた瞬間、バットが振り下ろされ不意を突かれた俺にバットが直撃する。


「ここは王の支配下……悪の生徒会長に鉄槌を!! 鉄槌を!!」


「ぐっ……ううっ、まさかユンゲの仕業っ!?」


 気配探知が使えればと思っていたら反応が大きく遅れていた。まさか学校内でルール無視をしてまで襲撃する者がいるなんて相手を甘く見過ぎた。おまけにバットで受けた左肩にも痛みが走り最悪の状況だ。


「チャンスだ今なら生徒会長を倒せる!! 金色の女神を取り戻すためにぃ~!!」


「くっ、だが一発程度なら、動けんだよ!!」


 ダメージは負ったが動けるレベルだ。少し前に、これより酷い怪我も負ったから金属の棒で一発殴られた程度で倒れる訳にはいかない。


「だが弱ってるはずだ!!」

「そうだそうだ!!」

「行くぞ、続けええええ!!」


 いよいよ手加減が出来ないと俺は本気の構えで迎撃することを決めた。少なくとも明日の戦いでは後遺症が出そうだ……と思った時だった。


「はっ!! 大丈夫か春日井!!」


「意外と無事じゃん、生徒会長」


 今度は目の前に俺を守るように四人の男が立ちはだかる。一人は道着姿、残りの三人は俺と同じジャージを着ていたが全員に見覚えが有った。


「河井、それに不良の三馬鹿?」


 そこに居たのはクラスメイトの河井と一学期の頭にカツアゲしていた不良モドキの生徒三名だった。何でこいつらが一緒にいるんだ。


「春日井、この三人は元空手部でな普通科に転科させられた奴らだけどさ、前は俺と同じ道場の仲間だったんだ」


「そうか……まさか河井と知り合いだったとは」


「ああ、この間久しぶりに道場に顔出して会ったんだよ」


 どうやら三人は学内では不良モドキをやってるが外で少しずつ更生していたらしい。そして街の道場での特訓の成果を試そうと今日は参加したそうだ。


「春日井と戦う前にまずはこいつらの相手だ!! 三人とも行くぞ!!」


「「「応っ!!」」」


 そこから五人になった俺達の反撃が始まった。まさかコイツらに背中を預けて戦うことになるなんて思わなかった。だが悪くない気分だ。



――――Side狭霧


「信矢の危険が危ないんです!! 川上さん!!」


 いきなり応援席のモニターが切れて会場は大騒ぎになっていた。だけど川上さんは動かなかった。私はすぐに信矢を助けに行ってくれると言ってたのにと駄々をこねたけど返って来たのが意外な言葉で驚かされた。


「落ち着け竹之内、日本語がメチャクチャだ、それにヤベーのはこっちもだ、汐里は周りを警戒しろ、もし変なの近寄って来たら大声出せ」


「うん、分かった竜くん!!」


 汐里さんが頷いて私の手を握って周囲をキョロキョロしている間に川上さんは私の方を見て話し出した。


「いいか竹之内、信矢が学生相手に負けることは万に一つもあり得ねえ、となると向こうはブラフ。いや正確には向こうとの通信を断つのが狙いだろう」


 川上さんと話していると悲鳴が聞こえ何人かの生徒が逃げ出している。見ると応援席の周囲には目が虚ろで怪しい生徒が数名いた。そして、その中の一人が私を見て口を開いた。


「王の御命令です、竹之内狭霧を連行せよ!!」


「連行せよ! 連行せよ!!」

「連行せよ! 連行せよ!!」


 しかし男子生徒たちは近付いて来たと同時に宙に舞った。川上さんが二人の男子を蹴り飛ばしたと一瞬遅れて私は理解した。


「はっ、先に仕掛けた以上、手加減してもらえると思うな!! 俺は信矢ほど甘くねえぞ!! そこの二人が監視か!?」


 ピクピクする男子二名を気絶させると指示を出していた女子生徒が固まっていた。さらに応援席で変な動きをしていた大人が二人立ち上がる。


「なっ!? どうしてっ!!」

「護衛がいるなんて聞いてないぞ!?」


 それだけ言うと二人は脱兎の如く逃げ出していた。そして残されたのは女子生徒のみだ。


「王の、命令……果たさなきゃ、命令……」


「形勢逆転だ次はどうする?」


 川上さんが睨み付けると女子生徒は懐から小型のナイフを取り出し構えた。だがタイミング良く山田先生たち教職員がやって来て女子生徒を取り押さえる。


「こらっ!! 離すんだ!! やはり竹之内が狙いなのか……セキュリティ部門から連絡で確認に来たらこれとは……」


「先生、実は――――」


 私はここで起きた事について説明する。横にいた汐里さんは一部始終をスマホで撮っていて、動画を他の教職員に見せていた。


「なるほどな、でも校内での暴力事件は――――」


 山田先生が口を開いた時だった。先ほどまで沈黙していた実況のマイク音が入る音が聞こえて通信が回復し音声と映像が同時に入っていた。


『皆様、ただいま故障が復旧しました!! 映像が戻ります……これはっ!?』


「信矢!! 良かったぁ……」


 信矢は肩で息をしているけど無事そうで安心した。そして横に立っていたのは道着姿の河井くんだった。


『最後のEブロック勝者は春日井生徒会長と空手部の河井くんのみ!! 立っている生徒は他にはいません!!』


 こうして信矢の決勝進出が決まった。本来はEブロックから出る予定の二名は棄権で信矢と河井くんの二名が出場というイレギュラーだ。そして信矢の最後の種目の準備をするために私は会場に移動した。



――――Side信矢


「じゃあ俺らは倒れてるぜ生徒会長」


「良いのか? お前らの中の二人は上がれるのに」


 不良モドキ三名は参加して成果を試せれば満足だと言って棄権を選んだ。三人一緒に上がれなければ最初から辞退する気だったらしい。


「構わねえよ、それよか今度またDVD鑑賞会しようぜ」


「いやいやダメだろ彼女にバレたら」


 鑑賞会とは俺が第二の状態の時に何回か空き教室で見た大人なDVDのことで後は察して欲しい。思えばコイツら三人とは夏休み前にバカをやっていた。


「ああ、さすがに狭霧にバレるのはな、お前らは見逃してやっからバレねえように楽しめよ」


「カーッ、彼女持ちはこれだから……じゃあ決勝頑張れよ生徒会長!!」


 そう言って三人は倒れ込んだ。周囲の連中や昏倒させた女子生徒の近くで気絶した振りをしている。そして教職員が来ると逃げようとした審判員の生徒が次々と捕まっていた。


「俺たちは王の指示で……」

「そうよユンゲ様がお救い下さる!!」

「王よ……この理不尽からお救い下さい~」


 やはり奴の仕業か。だが今は次の種目だ。この場を教師陣に任せると本日最後の競技に向かう。それは球技部門のバスケのフリースローのポイント制競技だ。




 会場に到着すると用意されたバスケコートはガラ空きでエントリーした生徒はもう誰も居ない。たぶん俺が最後だろう。


「待ってたよシン」


「狭霧……お待たせ、少しトラブルが有ってね」


 そしてコート内には一人で俺を、いや僕を待つ狭霧がいた。泣きそうな目を見ると先ほどの流れは見ていたようだ。


「うん知ってる……じゃあ始めよっか?」


「ああ、頼むよパートナーの竹之内狭霧さん?」


 この涼学統一にも幾つか特殊ルールが存在する。まず球技種目は最低一つは選択しなくてはいけない。そして苦手な場合その年度の涼学統一に参加しない生徒を助っ人として呼ぶことが出来るのだ。


 これは勉強は出来るが運動が苦手という生徒への救済措置だ。そして個の力量を測る際に交友関係も力として見るという側面から一回だけ例外が許されている。だから僕は真っ先に狭霧に頼んだ。


「まっかせてよ!! リハビリにちょうど良いからね!!」


「ああ、最後は任せたよ狭霧」



――――Side狭霧


 私は久しぶりに学校のバスケコートに立った。会場には私と信矢以外には一部の審判員の生徒と教師、あと特別に甲斐さんと真莉愛さんが周囲に睨みを利かせてくれている。


「ふぅ……大丈夫、久しぶりだけど行ける」


 この映像は、さっきまで自分のいた応援席でも中継されている。しかも涼学統一で一番の注目選手の信矢の代わりという大一番。ここで負けたら私は韓国行きだ。あんな所に絶対に行きたくない。


「狭霧、行けそう?」


「もっちろん!! 任せてよ完全復活を見せてあげる!!」


 だけど今の私に不安は無い。中学以降バスケをしている時は常にギリギリで信矢との約束を果たそうと無理をしてボロボロだった。でも今は違う、怪我は治りかけだけど心は満たされているから。


「だから今の私は絶好調なのよ!!」


 いつものように軽く一本目を放つ。リングに一回当たったボールはゴールにポスっと吸い込まれた。続いて二本目、三本目と面白いように入る。バスケから離れて半年以上だけど信矢とのリハビリで毎日シュート練習はしていたから体は覚えていた。


「さすが狭霧……」


「ふふん、どんなもんよ!!」


 連続で決めて次で六本目、そこで私はスコアボードのトップの名前を見て驚いた。井上凛、元クラスメイトで親友で現バスケ部だ。だからだろう余計に力が入る。


「狭霧、顔が固くて美人が台無しだよ」


「えっ!? んもうシン……分かった!!」


 だけど私の微妙な変化を見てすぐに察してくれる恋人の言葉が私の心を落ち着かせてくれる。今のシュートの最高記録は七本連続。なら私は全て決めてみせる……十本全部だ。


(次で七本目……頑張れ、頑張れ狭霧……)


「ふっ……はぁ」


 そして軽く息を吐いて私は七投目を放った。

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