第47話許容範囲内

あの迫力、あの眼力、あの有無を言わせぬ声音、それら全てが私の子宮に響いて来る。


あれこそ私が追い求めていた、私の王子様だと確信した瞬間でもあった。


あの方の、クロード殿下の隣に立てたのならばどれだけ幸せな事であるか、想像しただけでどうにかなってしまいそうである。


それと同時にアイリーンは思う。


オルガンという手札が切れかけている事に言いようも無い怒りが沸々と沸き上がってくる。


ホント、男って生き物はバカしかいないのかと思わずにはいられない。


クロード殿下が白と言えば黒色だろうとその色は白色なのだ。


素直に従っていれば良い物を、自らの主人であるクロード殿下に噛みつくからそうなるのである。


しかも一番腹が立つのが、まるで私の為を思って噛みついていますっ!というような態度である。


これでもしクロード殿下の、私に対する好感度が下がってしまったらどう責任をとるつもりだったのだろうか。


今思い返しても腹立たしい。


せっかく私の身体という飴を与えて育てて来たと言うのに、このままでは飴の与え損になりかねない。


しかし腐っても現宮廷魔術師の血を引く長男であり、幼い頃から英才教育を受けて来たのも事実である為今度行われる魔術試験で結果を残し、またクロード殿下の護衛へと返り咲く可能性もあると言うのがまたアイリーンを腹立たせる。


利用価値のない、またはそうなりかねない男性に身体を許すほどアイリーンは安くないと自負しているのだが、なまじ利用価値が無くならない可能性もある為身体は許すつもりは毛頭ないのだが万が一を考えた場合心象を悪くしない為にも愛想は振りまいていかなければならないのである。


そして結果によってはそれら行動が全て無駄に終わる場合がある。


それら全てがアイリーンの機嫌を悪くさせていた。


「まぁ良いわ。次のターゲットである元宰相であるアルビンの長男であり、今はクロード殿下の秘書兼執事として常にクロード殿下の側にいるモーデルを落とす事に集中できると考えれば良いのよ」


クロード殿下の周りは側仕えのメイドを加えて全員で四名。


モーデルを落とせば最早私とクロード殿下の仲を邪魔する者はいなくなる為後は一気に本命であるクロード殿下を落としに行くだけである。


あともう少し。


多少のイレギュラーはあったものの許容範囲内だ。


やっと私はクロード殿下を私の虜にし、この国の王妃となれる。贅の限りを尽くし生きていける。


そう思うとオルガンの事など実に些細な事の様に思えて来るのであった。

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