第60話 二人の力
「――――一発殴らせろ!!」
瀕死のラーグの右手の掌に、リートは自分の拳を重ね合わせる。
次の瞬間、女神の声が脳裏に響き渡る。
【――スキル“デュアル・スキル”を手に入れました】
「さて、そろそろ死んでもらおうか」
ウェルズリー公爵は、なんのためらいもなく剣を振り上げる。
息子と、その仲間を殺すべく、その剣に狂気の神聖をまとわせる。
「“神聖刀斬(しんせいとうざん)”!!」
“狂化”がもたらす負のエネルギーが、公爵の剣を包み込む。
その攻撃に、リートの“神聖剣”では、太刀打ちできないことが既に分かっている。
だが、剣を握りしめ立ち上がったリートは迷わず剣を振りかぶった。
「“神聖剣――――」
神聖なる光が、リートの刀身を包み込む。
「無駄だぁ!!!!」
公爵は勝利を確信し、笑みさえ浮かべて剣を振り下ろした。
だが、リートはまったく同時にもう一つのスキルを発動する。
「――――/ドラゴンブレス・ノヴァ”!」
黄金色に光り輝く刀身を、烈火が包み込み、大きなうねりを生み出す。
ラーグから手に入れた“デュアルスキル”によって、神聖剣とドラゴンブレス・ノヴァという二つの技が融合されたのだ。
「デュアルスキルだとッ!?」
公爵の瞳に突如として焦りが生まれる。
闇色に包まれた神聖と、赤き熱量を帯びた神聖とがぶつかり合う。
そして二人分の思いを乗せた剣は、さらに勢いを増し、公爵の剣を跳ね返す。
「なん……だとッ!?」
刀身は砕け散り、公爵の身体はそのまま後ろに吹き飛ばされた。
地面に叩きつけられ、その手から、砕けずに剣の握りが滑り落ちる。
公爵は自分が敗北した事実に驚愕し目を見開く。
「バカ……なッ!!」
そんな言葉を残して、公爵はそのまま倒れこむ。
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