一例として「裁判」を教材にして考える、特別活動・総合的学習と学習指導要領改訂のかかわり
特別活動と総合的学習は、教育課程の一領域であり、そこには教育的意義が求められる。
2017(平成29)年から2018(平成30)年に改訂された『学習指導要領』は、「生きる力」を育成することを主軸としている。中央教育審議会「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」によれば、「生きる力」とは「いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力」と定義されている。また、それに関連した今回の学習指導要領の特徴として、「主体的・対話的で深い学び」の重視、「カリキュラム・マネジメント」の重視、「キャリア教育」のさらなる充実が挙げられる。 さらに、「育成すべき3つの目標(資質・能力)」として、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」が求められている。
特別活動と総合的学習においても、こういった観点から求められる教育的意義に沿って、構成されることになる。
特別活動の教育的意義としては、「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」を挙げることができる。「人間関係形成」とは、「集団の中で人間関係を自主的、実践的によりよいものへと形成するという資質・能力」のことである。「社会参画」とは、「よりよい学級・学校生活づくりなど、集団や社会に参画し様々な問題を主体的に解決しようとする資質・能力」のことである。「自己実現」とは、「集団の中で現在及び将来の自己の生活の課題を発見しよりよく改善しようとする資質・能力」のことである。集団的活動、経験的活動ともいえる。「学級活動(ホームルーム活動)」「生徒会活動」「学校行事」(「文化祭」「運動会」「遠足」「修学旅行」など)の多くの特別活動を通して、これらの能力を育んでいくことになる。
総合的学習の教育的意義としては、一般的な教科活動では「インプット」がメインであることに対して、教科で身につけた知識や諸能力を用い、思考を深め、問題解決を目指すといった、「応用的アウトプット」とでもいうべき能力を養う、ということができる。教育効果として、「社会認識」「道徳観」「思考力・判断力」など、さまざまなものを挙げることができる。総合的学習は、学校や地域によってさまざまだが、たとえば野菜を売ることを体験することで、これらの能力を育んでいくケースもある。
さて、これらを実現するためには、特別活動、総合的活動を教育課程としてどのように構成すればよいのか。
まず、特別活動の場合だが、第一に特別活動とはそもそも「なすことにより学ぶ」を方法原理とした、自主的、集団的カリキュラムであること、第二に特別活動は独立して存在するのではなく、各教科や総合的学習との往還的関係を重視するものであるというポイントを踏まえる必要がある。
今回は「文化祭」を例にして考えてみたい。文化祭は、生徒にとって思い出に残る行事であるばかりのみではなく、教育の場でもある。たとえば、クラスの出し物として「模擬裁判」を行うのはどうだろうか。そのためには、社会科の裁判制度等についての知識はもちろん、表現力を養うために国語科の知識、裁判所を模した教室を作るための大道具や小道具の作成のために芸術科や技術科の知識などが必要となってきて、往還的関係をねらった各教科との連携ができる。遠足や修学旅行で裁判所に立ち寄ることを計画すれば、他の特別活動との連携もはかれる。総合的学習で、何度か自分たちで試行錯誤しながら模擬裁判をつくっていくことにすれば、応用的アウトプットを通した総合的学習とも関連ができる。
次に、総合的学習の場合だが、第一に「課題解決能力」「自己の生き方を考える力」を養うものであること、第二にその学びのための課題は日常的、社会的なところから生まれ、「課題の設定、情報の収集、 整理・分析、まとめ・表現」といったサイクルを辿る必要がある、というポイントを踏まえる必要がある。
今回は、特別活動のところでも例に出したことに関連づけて、「裁判」の探究をすることを考えてみたい。たとえば、各々ひとりずつ、「歴史上、最も印象に残った裁判」をプレゼンテーションするのはどうだろうか。そのためには、自分はどんな裁判が心に残るのかという課題をみずから設定し、いままでの裁判について調べ学習することで情報を収集し、それらの情報を整理・分析することでみずからの最も印象に残った裁判を見つけ、それを他の生徒の前でプレゼンテーション形式で発表し、また生徒間の相互評価も取り入れることで、まとめ・表現になる。
以上のように、本レポートでは特別活動と総合的学習についてまとめた。ここまで考えてきたように、特別活動も総合的学習も、教育課程として構成するときには、「生きる力」を育成するという観点が不可欠である。
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