キミの世界、ワタシの世界。

泉 コウ

第1話 ぺトリコール

「お前さぁ、ぺトリコールって知ってる?」

「……なに?それ。ぺと、??」

隣の席の男子に急に言われた言葉は、耳に馴染まない響きだった。

馴染まないどころか聞いたことがなかった。

「あー、やっぱもういいわ。」

「ちょっと!なんなのか教えてくれたっていいじゃん!」

全く私から興味が無くなったみたいに手でしっしとやるから思わずムカッと来てしまった。

「自分で調べてみろよ。もう一回言ってやるから。

ペ、ト、リ、コ、ー、ル。分かった?」

「うん……。」

やっぱり癪に障る態度だけれど、私が無知なのも事実。

それに、知らない言葉を教えてくれたほんのひと握りの感謝もあった。


高校初日なのに、心の隅にずっとそいつがいた。

『ぺトリコール』

それと、さっき初めて名前を知ったこの言葉を私に植え付けた、あいつ。

桐生昴は首席入学だからきっと、ていうか絶対にものすごく頭がいい。

近寄り難いって言う人も多い。

けど、私からしたら、周りの人が知らない言葉を言って優越感に浸るような、精神年齢の低いおチビちゃんにすぎないやつだ。


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