反撃
王国の冒険者達は、各地で暗躍しているサキュバス達の討伐に大忙しになっていた。王国の領主や兵士たちを操り、遊牧民族の北上を支援していることが判明したからだ。
しかし、戦端が開かれてしまった以上、多少の誤解を解いたところで戦争は止まらない。
拠点を持たない遊牧民族ならば尚更だ。
勇者級の実力を持つ遊牧民族のカリスマ達を倒さない限り彼らは止まらないのだ。
そこから先は冒険者ではなく、勇者と兵士達の領域だ。
とはいえ、兵力が絶望的に不足していた。
魔王軍が猛攻を開始したのだ。
王国軍は、前線に足止めされてしまっていた。
……
魔王軍のサキュバスが都市国家を煽動し、現地のサキュバス達の弾圧を始めたからだ。街のサキュバス達はこぞって
しかし、弾圧の矛先は
現在は、各地に点在していたサキュバスの
……
ネームド・リッチ・レオナルド・リーウェイは、古戦場各地にいる、ネームドの亡者達を召集した。
彼らは王国の黎明期に死を賭して戦いぬいた太古の英雄達だ。
古戦場に
リーウェイ卿達の巣には、古い玉座がある。
それは王国が勃興する遥か以前の最初の王の玉座だ。
ローウェン卿とリーウェイ卿は、その玉座の
「
我らが王の末裔に未曾有の危機が到来したのだ。
思い出せ、我らが夢の跡を。
奮い起こせ、我らに
喰らい尽くせ、我らが敵の魂を」
……
フォールクヴェール=アスタークは、若い勇者達を率いて、遊牧民族のカリスマ達と対峙していた。
敵味方入り乱れ、混沌と化した戦場の中で、フォールクヴェールは異彩を放ち、敵のカリスマ達の闘争本能を釘付けにしていた。
これ以上の北上は許されない。
敵のカリスマ達はフォールクヴェールとほぼ同格。
数の上でも質の上でも、形勢は圧倒的に不利な状況下での背水の陣だった。
フォールクヴェールは、これまでにない危機に瀕しているもかかわらず、自らの勇者の魂が
彼の闘気は、あきらめかけていた若い勇者達にも伝わっていた。
勇者とは何か?
その答えが目の前にいた。
自分たちは何者か?
そうだ、自分たちも勇者なのだ。
勇者フォールクヴェール=アスタークは圧倒的に不利な状況でも、己の限界を超えて獅子奮迅の活躍を成していたのだ。
若い勇者たちは、彼に感化され、己の限界を超え始める。
皆、
怖いもの知らずの遊牧民族達は、目の前の狂戦士達に戦慄する。
圧倒的に有利なはずのこの状況で、足止めされるどころか、押されて始めていたのだ。
奴らに負けていられない。
戦士達の魂の鼓動が、化学反応を引き起こした。
遊牧民族達も、自らを奮い立たせ、狂戦士達へ向かって行った。
……
そして、皆で魔力を注ぎ、詠唱する。
「「「咲き誇れ魂のメメント・モリ、ヴァニタス・ヴァニタートゥム!!!」」」
彼女達は、都市国家を浄化して回った。
その後には、黒こげになった魔王軍のサキュバス達が町中に倒れていた。
……
フォールクヴェールと若い勇者達は、すでに満身創痍だった。
今の状態で、遊牧民族達を足止めできていることすら奇跡だった。
敵の数が多すぎるのだ。
戦線も徐々に押され始めていた。
その時、いくつもの巨大な魔法陣が至る所に出現する。
その中から出てきたのは、〝死〟だった。
亡者の軍勢が、遊牧民族に向かって押し寄せてきたのだ。
デスナイト達が束になって敵のカリスマ達を
リッチ達はネクロマンシーを使い、敵味方関係なく死体を再生する。
亡者の数は瞬く間に膨れ上がった。
戦場は、あっという間に亡者で塗り潰されてしまったのだ。
そして、各々が魔法陣に包まれ、去っていった。
それは、短時間の出来事だった。
そこには、死体すら残っていなかった。
取り残されたフォールクヴェールと若い勇者達は、呆然と立ち尽くしていた。
彼らは我に帰ると、慌てて、魔王軍との前線へ転移していった。
……
フォールクヴェールと若い勇者達が前線に復帰した時、一度下がった防衛線は、すでに巻き返されたあとだった。
古戦場にいるはずのネームドのデスナイトとリッチの集団が、加勢に訪れたのだ。
彼らは、フォールクヴェール達が復帰するのを見届けると、古戦場へ帰って行った。
……
魔界では、サキュバス・クイーンの会合が開かれていた。
「私たち、結局、負けたのかしら?」
「それはないわよ。
王国は大打撃を受けてかなり疲弊しているもの。
シャマールだって、遊牧民族の兵力はほぼ壊滅してるしね。
しかも、魔王様の正規兵達は健在でしょ?」
「でも、サキュバス達は相当数が狩られてしまったわね……」
「まぁ、そうね。しばらく大きな作戦は実行できないわね」
「シャマールのサキュバス達が結束するとは思わなかったわ。
見くびり過ぎていたわね。
烏合の衆かと思っていたけど、今回の件で、一致団結しちゃった感じだし……」
「それもこれも
「「「はぁー……」」」
「とりあえず、サキュバスの勢力を立て直しましょう。
これだけの実績を挙げたわけだし、魔王様にもご納得いただけるでしょう」
「では、そういうことで」
「「「ごきげんよう」」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます