第30話 カレの部屋

大学時代の憧れてた先輩と、おつきあいして2ヶ月がたちます。

彼「達哉」は、菅田将暉と綾野剛を足した感じの爽やかなイケメンといったところです。


彼はテニスのサークルで、誰にでも優しく接するので、皆の人気者でした。

彼目当ての入部希望者も多く他校からの部員も多数いる状態でした。


当時の私は地味な見かけで、とても先輩なんかと釣り合わないと思ってました。

遠くから眺めるの精一杯といっところでしょう。


もちろん先輩はモテモテで、付き合っている女性の噂も沢山ありました。

本人は、全て否定していたんですけどね。

彼が笑いながら

「他の男からのやっかみが多く、変な噂を流されるんだよ。

困ったなぁ!」

と言ってたのを覚えてます。


私が就職して1年たち、当時のサークルのOB会が開かれました。

その時に、彼から告白をされたのでした。


彼の部屋へ遊びに行った時から、異変が始まりました。

玄関で揃えて脱いだ靴が、乱雑に散らかっていたのが最初だったと思います。

それからもイタズラ程度の事なので、大袈裟に騒がない事にしました。



でも今回は別でした。

居間でジュースを飲んでいた時に、のどに引っかかるモノがありました。

ケホ・ケホと咳き込み、口のなかにざらついた舌触りが感じられます。

彼に解らないように、口の中から異物をつまみ出しました。

細い紐の様なモノは、歯と歯の間に絡まりながら嫌な感触を残しつつ出てきました。

金色に近い茶色の長い髪の毛が、口の中より出てくるではありませんか。

私は黒髪だし、達哉先輩は短髪!

第三者の髪の毛、それも派手な女性の髪です。

気持ち悪くなり、飲み物にも手をつける事もやめました。


他の女性が、この部屋に出入りしてるのかとも思いましたが、先輩に直接聞くのが怖くて黙っておりました。


それからも飲み物には、必ずと言っていいほど髪の毛が入ってました。


ある日、シャワーをかりたときに排水が詰まってしまいました。

詰まりを直そうと排水口の蓋あけた時、茶色い髪の毛の塊が詰まっていたのです

私は恐怖のあまり声が出させなく、ひきつるばかりでした。


髪の毛の塊を持って、先輩の元へ行きます。

彼は、あからさまに返答に困った様子です。

「祥子ちゃん、実は………。

ごめんね。

たぶん祥子ちゃんと付き合う前に、お付き合いしてた女性の髪の毛なんだ。

掃除したと思っていたけど残ってたんだね。」

「前の彼女のモノなの?

それなら………」

私も歯切れが悪く納得するように努力しました。


数日後、洗面所の歯ブラシに髪の毛が無数に巻き散らかしていて、鏡には血で書いたような文字が

『帰れ

私の達哉に近づくな』


私は怖くなり即座に部屋から去りました。


この件で、達哉先輩と仲の良い先輩に聞いたところ

彼は、女性にモテる事を利用して、同時に3人の女性からお金の援助を受けていたとの事でした。

その中の一人が明るい茶色のロングヘアーで、彼との結婚を夢みてたそうです。


達哉先輩は私と付き合う為に、他のお付き合いを切ったみたいです。

それがショックで、ロングヘアーの彼女が自殺してしまいました。

今でもあの部屋にいて、彼に未練を残しているようです。


「祥子ちゃんさぁ!

達哉は、祥子ちゃんに本気で惚れてるんだよ。

帰ってあげなよ。」

と言われました。


私の中では、

先輩をクズにしか思えなくなりました。

もう会うことないでしょう。

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