起きなさい


優しくて

包み込んでくれるような

声がきこえた

わたしはその声の

期待に応えたくて

目を覚ますことにした



立ち上がりなさい


力強くて

叱咤するような

声がきこえた

わたしはその声に

身を任せて

立ち上がることにした


何度失敗しても

必ず声をかけてくれる



前を向きなさい


ゆっくりと

たしなめるような

声がきこえた

わたしにはどこが

前なのかわからない

それでも

前だと思うほうに

顔を向けた



進みなさい


早口で

寂しそうな

声がきこえた

わたしはその声を

頼りにして

進むことにした


いつしか

声はきこえなくなった


声のない世界で

正解を求めながら

わたしは進みつづける

親しみ深かった

あの声に

想いを馳せながら


そして

いつか気づくのだ


わたしが

次の人に

声をかける番なのだと

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る