4限目 桜の樹の下には…
生徒会室に入って右手に窓があり、そしてその先には長岡の校区が一面見渡せた。長岡校は立地的には山の中腹にあるので、さながら城下町を見下ろしているようなそんな絶景であった。
「そんなにかしこまらなくていいよ。最近自己紹介する時にハマっててね」
自己紹介の仕方もすごいが、ユーザー名が『生徒会長』なのも凄いし、なんかふざけた人だな。。。
出だしいきなり挫かれたけど、どう切り出したらいいのか。いきなり
「いきなり押しかけて申し訳ありません。」
腰を低く断りながら言った。
「いいよ。何か用があって来たんでしょ。」
生徒会長は優しく対応した。
「ええ、戦争が始まる直前なのに申し訳ないです。」
「あーいいよ、今回は私が陣頭指揮するわけじゃなくて庶務の愛染が担当だからね。かなり作戦に自信があるみたい。」
生徒会役員は全員で6名で内訳は下記の通りである。
3年…生徒会長、会計
2年…副会長、書記
1年…庶務(外交担当)(内政窓口担当)
庶務は基本2人だが、先日内政担当の人が辞任して行方不明なったとかで学校の掲示板が荒れていたのは覚えている。そして生徒会長の話に出てた愛染が外交担当の方の庶務である。
「いつも、その庶務の……愛染ていう人が作戦を立案するんですか?」
「ん? 前は僕も作戦企てたけど、今シーズンは彼だけだね。」
そうなんですねー。なんて自然な挨拶をしていたところ、自分の長ったらしい世間話に篠宮は痺れを切らしたのか生徒会長に質問した。
「単刀直入に聞くけど
今まで空気だって篠宮が突然話して来たし、しかもさっき話してた内容と何の脈絡もない質問だったため生徒会長は一瞬フリーズしたように見えた。
「ああ、この学校にまつわる七不思議の1人だよね?なんか生徒会と繋がりがあるって僕も聞いたことあるけど、ごめんね全然知らないんだ。」
「さっきの話からすると、もしかしたら庶務の人だけが繋がってる可能性もあるかしら?」
「まあ、ありえると言えばありえるかもしれないね。」
さっきから篠宮の質問に対して政治家みたいな当たり障りのない回答しか出てないな。これ以上追求しても出てこなさそう。そう思った矢先、篠宮も同じことを思ったのか
「分かりました。貴重なお時間ありがとうございました。失礼します♪」
そうして我々は生徒会室を後にした。
自分たちは戦闘ポジションに向かう道中、正直にありのままを伝えた。
「あんまり参考にならなかったな。まあ、最初から期待してなかったが。」
そう言うと篠宮は意味深な笑みで言った。
「いや、一つ引っかかるところあるわ。生徒会長は『かなり作戦に自信がある
続けて篠宮は語った。
「かなり信頼している腹心とはいえ、作戦チェックしないで呑気に生徒会室にいる普通?」
まあ、たしかに上の立場なら作戦をしっかり見る必要があるのに把握してない。。。いや、もしくは作戦内容を知らなくても勝てると確信があるからの余裕なのか。
「相当なお人好しか清濁併せ持つ切れ者か、今回の戦闘の勝敗次第で生徒会長にもう少し探る必要があるな。」
そう言うと、篠宮は真剣な眼差しで僕に言った
「あのね、今回の戦闘で頼みたいことがあるんだけど♪」
少し季節外れの桜が咲く鴻巣山の中腹、ノクティス達と合流した。
「篠宮遅かったな。もう戦闘始まるぞ。」
「ごめんね。支度に時間がかかっちゃって♪」
「いや、間に合えば別にいいけど、あいつ知らないか?」
「あいつってヤンのこと?ううん、知らない♪」
「おいまじか、昼間ここが最前線になるかもって言ってた本人が不在どういうことだよ。」
そう苛立つノクティスに周りの取り巻きがなだめていたその頃一方、自分は篠宮に頼まれて53班の待機場所である電波塔からすぐ見える学校の真横のマンションの屋上で待機していた。
あーあ、双眼鏡で敵を偵察しないで、電波塔と月明かりでいい感じになってる夜桜の方を堪能したかったな。現実世界も充分美しい世界だが、たまにサンプル画像とかに騙されて現実世界の方がショボいパターンもあるが、仮想現実はアニメや絵画のような幻想的な世界を見せてくれる。このゲームを作った人は本当に偉いと思う。あーあこんな日はゆっくり花見をしたいものだが戦争に興じないといけないなんて。。。
今回の篠宮の頼まれごとは全体を見渡し、状況を把握することだった。指示出す係いわゆる放送部の役割で立ち回ればいいのかなと思っていたが篠宮はただ状況だけ見て俺の戦術眼でどう映ったかを後で教えてほしいとのことだった。自分の本来の待機ポジションは電波塔だが、マンションにいることは軍規違反なので後々仮想通貨ポイントが引かれるのは言うまでもない。この戦いが終わったら引かれた分の半分を後で補償するからとか篠宮言ってたけど、よくよく考えてみたら偉い人たちからなんであんな場所に居たんだって追求されて最終的にお荷物扱いされるんだけど。。。まあ最初から嫌われてるから別にいいけど。。。ホント近くに誰もいなくてよかった。いたら、ただポイント引かれるだけだったしな。。。そんなことを逡巡していた頃、とうとう戦闘が始まった。
pm.8:00過ぎ頂上付近で主力部隊の戦闘が始まり、砲弾や銃声がマンションの方からでも聞こえてきた。特に始まって早々向こうが新技術を用いて仕掛けてきた様子とかもなく、いつも通りの戦闘が始まったが、さてこのまま待機していいのやらと思っていた時篠宮から通知がきた。
「今ところ異常はないかしら?」
「特に問題はない。見たところむしろ前線押し上げてるみたいだよ」
「そう分かった♪」
pm.8:15一方そのころ電波塔で約20班ほど待機しており、その中の数班は周囲の警戒に飽きて雑談をしてたり、火炎瓶使って鬼ごっことか始めちゃう始末だった。その中である者がここを守っても仕方ない本隊に合流すると言っていたその時だった。
山の中から地鳴りが聞こえて、どんどん音が大きくなった。そして電波塔待機組の目の前に巨大なトンネル掘削機現れた。その後ろから護送車がどんどん出てきて、こちらの味方部隊をはね、護送車から白い武装した特殊部隊が現れた。あれが平尾校最強部隊“白虎隊”。実力は折り紙付で市内でトップ10に入る部隊だが、その構成メンバーが全員警察学校の生徒たちである。平尾校のすぐそばに警察学校があり、寮もあるのだ。しかも選りすぐりのメンバーで構成されているから並大抵のプレイヤーは絶対に負ける。だからこれまでの戦闘もほとんどこの人たちに負けたと言っても過言じゃない。そしてかなりピンチの状況になってしまった。白虎隊の鮮やかで手際の良い制圧に53班も目の前やられる寸前であった。急いで53班に連絡したが、全く応答しない。目の前のピンチに応答できる余裕がないのだろう。いやそんなこと考えてる場合じゃない。本当に助けないとあいつらの自我が消えるかもしれない。そう思った刹那トンネルの入り口が爆発した。味方も敵も一瞬固まった。どういうことか理解が追いつかない。戦場は混乱に瀕した。またさらに敵の1人頭部がいきなり爆発したのだ。誰もグレネードは投げていない。相手も故意にやったわけでもない様子だった。この状況をしっかり理解できたのは、この戦場にはいない、マンション屋上にいる
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