第48話四期生1
私が例の事件からトップVTuberの道を駆け上がり始めてもう結構な月日が流れた。
あれだけ卑屈だった私が今では自分自身の個性を理解し、笑いに変え、多くの人に楽しんでもらえる配信を行えるようになった。
予期せぬ事態からの大逆転、本当に人生とは先が読めないものだ。
これも全て支えてくれた同期、先輩、ライブオンのスタッフさんたち、そして私の配信を楽しみにしてくれているリスナーさん達のおかげだ。
さて、なんでそんならしくもない感傷に浸っているのかというと、最近ライブオンが大ニュースを発表したからだ。
【ライブオン、VTuber四期生大募集!!
採用基準はただ一つ、『輝ける人』!
貴方の最も輝く
そして今日、新しくライブオンに加入する四期生発表の日である。
前々からいつかはこの時が来るのかと考えてはいた。
だが実際に知らされると心の躍動を感じずにはいられなかった。
とうとう私――先輩デビューですよ!
後輩ができるわけです、そりゃあ興奮もしますよ!
こんな私のことを、先輩と呼び慕ってくれる子ができるんですよ!!
……え? 慕ってくれるよね? ストゼロ中毒の自称二重人格ガチレズ下ネタ大好き性祖女でも慕ってくれる子いるよね?
あ、これいねぇわ、絶対いねぇようん。
だって自分でそんな人間に出会ったら真っ先に逃げるもん、歩く七つの大罪みたいなもんじゃん。
ぐすんっ、なんか自分で勝手に傷ついて心に大ダメージを負ったけど、気を取り直していこう。
なんといってもこれから大切な新メンバーの晴れ舞台なのだ、笑顔で迎えてあげたい。
発表方法は今からライブオンの公式サイトで1人10分のリレー自己紹介が行われることになっている。
ライバー総出で配信を見届けてやろうとライバー全員のグループチャットも大盛り上がりしているところだ。
なぜここまで盛り上がっているのかというと、実は社員も兼ねている晴先輩以外は4期生のメンツを一切知らないのだ。
三人ということ以外は名前すら伏せられている徹底具合で、一体どんな子が来るのかとみんなウキウキと想像を膨らませながら配信を待っているわけだ。
私も気になりすぎて前日から若干寝不足だ。
晴先輩は「ライブオンはやっぱこうじゃないとねってメンツを集めたよ☀」って言ってたから期待していいと思うんだが。
まぁ天下のライブオンだし心配ないっしょ!
……ちょっとまって? そのライブオン私みたいなとんでもないゲテモノ三期生の時に採ってるよな?
……な、なんか途端に嫌な予感しかしなくなってきたぞ!?
「あ、配信始まった!!」
もう余計なこと考えないようにしよう!
あ、ちなみに新メンバーが主役の為全員配信はお休みである。
さぁ、できることなら私を慕ってくれる子カモン!!
『ふぅ……あ! もう始まったでありますか!?』
画面いっぱいに移ったのはどこか軍服のような厨二チックのデザインの学校制服を着たピンク髪ショートカットの少女だった。
頭の左サイドのみツーブロックを入れ、耳の後ろに髪を流しているためかわいいデザインの中にかっこよさも感じる。身長はたぶん普通くらいかな?
おほーーー( ◜ω◝ )これはキャラクターデザインがええ仕事してますなぁ!
恐らく深呼吸をしていたのだろう。盛大な吐息をマイクに直撃させてしまいわちゃわちゃと目が泳いでいる。
初々しいなぁ。懐かしい、私も最初は緊張で心拍数がえぐいことになってたのを思い出す。
『えっと、皆様初めまして、
コメント
:これはなかなか……
:ええやん!
:がんばってー!
:顔が良い
:某軍曹みたいなしゃべりかたすこ
:アイドルなのか! 確かに今までいなかったな
:衣装を見るにクール系なアイドルなのかな?
おーコメントも盛り上がってるねぇ!
結構正統派な感じがしていいじゃん! やっぱ嫌な予感とか杞憂だったね!
『さて、実はこの場を借りて一つ言いたいことがあるのであります。実はこれが私がVTuberになろうと思った理由でもありますな』
お? なんだなんだ? 突然真剣な声になったからコメントもざわついてるぞ?
コメントの中にはレジスタンスっていうぐらいだからまさか先輩への宣戦布告か? なんて言ってる人もいる。
う、嘘だよね? 確かにやべーやつしかいないライブオンだけど反逆なんてしないよね?
『心音淡雪殿――』
「え?」
今私の名前言われた?
なんで? なんで名指し!? まさか本当にライブオン屈指の変態として有名になってしまった私を目の敵にしてる感じ!?
あああすみません許してくださいなんでもしますから! ほら、ここに私の秘蔵の一品、今や販売終了となった伝説のストゼロトリプルレモン味で手を打とうではないか!
うわーん! 私はただ慕ってくれる後輩が欲しかっただけなのになんでこんなことに……
『私を貴殿の女にしてもらえないでありますか?』
……ん? 今なんかとんでもないこと言わなかった?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます