第30話ちゃみちゃん家にお泊まり

「ようし配信終了! ちゃみちゃんお疲れ様~」

「お疲れ様。さて、淡雪ちゃん帰りどうする? もうだいぶ遅いよ? 私お酒飲んでないし車あるから送ろうか?」

「ん~今日はちゃみちゃんの家に泊まる~」

「え!? いいの!?」

「お、おぉ?」


あ、あれ? どうせ断られると思ってその前提で言ったつもりだったのだが予想外に異様な食いつきだぞ?


「わたしね! 誰かとお泊り会するのが夢だったの!」

「そ、そうなの?」

「あ、意味わかんないって思ったでしょ! コミュ障の私にとって友達とお泊りすることは最高にリア充な行為なんだよ! 憧れなんだよ! ちゃみリカンドリームなんだよ!」


きらきらと輝いた目をこちらに向けながら聞き取れないくらいの早口でまくしたてているちゃみちゃん。

テンションは明らかに今まで見た中で一番高く、言葉遣いも素が出ているのだろうか若干幼げだ。


「で、でも突然泊まることになって大丈夫なの?」

「あ、それは心配しないで! ちゃんといつだれがお泊りに来てもいいように学生時代からお客様用の布団、歯ブラシ、パジャマ諸々のお泊りグッズは完璧だよ!」

「学生時代から!? それだけ健気に準備してたのにお泊り会したことないの!?」

「ずっとずっとメンテナンスも欠かさずしてたんだぁ~やっと日の目を見れるよ!」


憧れが強すぎるだろ! もはや執念じゃないか!

ま、まぁ本人は今にも踊りだしそうなほどウキウキだし、私も女の子のお家に泊まれるなんて狂喜でしかないからいいんだけどね。

なんか大人っぽい雰囲気の人がこう純粋に喜んでるの見るのもいいな~、何というかシコいというよりはニコい。思わずこちらまで笑顔になってしまうやつだ。


「あ、お風呂沸かしてあるから先に入って!」

「あ、ありがとー!」

「一緒に入る?」

「はえ!?」

「もーう冗談だよー! 反応かわいーんだー!」


す、ストゼロをキメているこの私が翻弄されているだと!?

くっ、対応が読めない! テンションの上がったコミュ障お姉さんはここまで破壊力が高いのか!!

そんなこんなでドキドキさせられながらも二人ともお風呂に入り寝支度も整った。


「さ、さっきはごめんなさい……長年の夢がかなった喜びで我を見失ってたわ」

「いえいえ」


ちゃみちゃんがベッド、その隣に私が本当に清潔に保管されていた布団を敷いて寝ることになった。

あ、そういえば私もお泊り会とか高校生の頃以来だな。なんだかこっちまでドキドキしてきたかも。

お酒飲んだのは夕食の時だし、お風呂も入ったからそろそろ酔いが覚めてきてるかもしれないな。

ちゃみちゃんも冷静さを取り戻して恥ずかしそうに俯きがちになっている。


「あ、そうだ! せっかくだから耳かきでもしてあげようか?」

「な、なんですと!?」


気まずい雰囲気に耐えられなくなったのか、ちゃみちゃんがとんでもないことをいいだした。

そ、それはもしかしや毎日のように聴いてるちゃみちゃんのasmrをリアルで体験できるということでござるか!?

やべぇよやべぇよ……私明日死んだりしないよね?


「ほらっ、お膝にどうぞ! でもまぁ実はあれだけasmrで耳かきやっておきながら、人にやってあげるの初めてだからうまくできるかわからないけど」

「は、はい」


あまりの神々しさに恐縮しながらその神聖なる太ももに頭を乗せる。


「それじゃあ行くわよ」


いざこの状況を脳裏に焼き付けるよう心行くまで堪能しようと思ったのだが……


「はぁ……はぁ…………っ!」

「ちょっとまってちゃみちゃん手が震えスギィ! めちゃプルップルしてるって! このままだと私耳が心配過ぎてEカードしてるときのカ〇ジ君みたいな心境になっちゃうよ!!」

「ご、ごめんなさい! こんなに人と顔が接近することないから緊張してきちゃって! 深呼吸深呼吸……」


やっぱりちゃみちゃんは期待を裏切らないね!

でも次第にこの状況にも慣れてきたようで耳かき特有の至福の時間になってきた。

本当になんで耳かきってこんなに気持ちいいんだろうね? 自然と目が閉じてしまい開かなくなってしまう。

ものの数分で眠気MAXだ。


「ふふっ、寝てもいいわよ」

「んん……ちゃみちゃんと一緒に寝る」

「あら、いいわよ」

「一緒の布団で寝たい」

「!? い、いいわねそれ! なんだかすごくリア充っぽいわ! ふへへ、今私は完全にリア充してるわ、間違いない!」

「んん……本物のリア充は自分のことリア充って言わないと思う…………」


結局そんなこんなで一緒の布団で寝ました! やったぜ!

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