第14話 港場での仕事 後編
銃声が何回も聞こえて、ブライアンはアクセルを踏みジープを急発進させた。通りに出ると、男たちがベンのいる小路に向けて銃弾を放っていた。
さらに、アクセルを踏みスピードを上げる。男たちがこちらに気づき、銃口をこちらに向けてきた。そして、放たれる弾丸はジープのフロントガラスに命中するが、強化ガラスのため銃弾の当たった場所から円状にひびが入るだけで貫通はしなかった。
そのまま、ブライアンは男たちに向かって、ジープで突っ込む。男の一人が、
「避けろーーー!」
と叫ぶが、一人は逃げ遅れた。そして、ジープのボンネットに激突する。その男もしばらくはボンネットにつかまっていたが、足からジープの下へ引きずり込まれていき、地面を転げまわった。
そして、ブライアンは運転席の窓から乗り出して、リックのいると思われる車に向かって銃を向ける。リックの車のドライバーは今にも、ギアを変え、バックで逃走しようとしている。ブライアンは逃がすまい、とその車に目掛けてすれ違いざまに3発銃弾を撃ち込んだ。二発はフロントガラスに防がれたが、最後の一発はガラスを貫通して、ドライバーの喉を撃ち抜いた。ドライバーはしばらく喉を抑えていたが、やがて口から血を流して動かなくなった。
そのままUターンし、再びベンのいる方向に向かってジープを走らせる。進行方向上に、先ほどボンネットに巻き込んだ男がいて、再び立ち上がろうとしていた。だが、ブライアンはそのまま直進し、その男の頭部をジープのタイヤでひき潰した。
そして、運転席の窓から銃口を最後の一人に向ける。その男も銃口をこちらに向けた。双方が一発ずつ、弾丸を発射する。男の放った弾丸はサイドミラーを撃ち落とし、ブライアンの放った銃弾はその男の頭部を貫いた。男はそのまま後ろ向きに倒れた。
・・・
俺が小路から出た時には、リックの雇った護衛の二人はすでにブライアンが始末していて、どうやら車にいたドライバーも死んでいるようだ。そして、そのブライアンがジープから降りてきた。ジープはすでに何発も銃弾が撃ち込まれ、フロントガラスにヒビが入り、片方のサイドミラーは取れ、ボンネットにもいくつも穴が空いていた。
ブライアンはリックのいる車の方に向かって歩いていった。それに合わせて俺もリックの方に向かう。リックはドライバーの死体を車から降ろして、運転席に座ろうとしていた。だが、ブライアンと俺が銃を向けると、運転席に座るのを諦め、両手を挙げた。
「どうやって、これだけの護衛を雇った? お前のくそったれの情報料でか?」
「俺は可能な限り早く情報を提供しただけだ!」
とリックは弁明する。だが、そんなことお構いなしに、俺に「銃を向けておけ」とだけ言うと、ブライアンは銃のマガジンを入れ替え始めた。それを見てさらに声を荒げながらリックは言う。
「お前たちが急げと言うから、俺は無理して急いで用意してやったんだ! お前たちが悪いんだ! 俺は悪ッ……」
と叫んでいる途中のリック目掛けて、頭部と胸部に2発ずつブライアンが銃弾を撃ち込んだ。
ブライアンは銃をしまって急にこちらに向き直り、そのまま俺の隠れていた小路に向かって歩き出した。何を言われるのか不安に思いながら、俺も付いていく。
小路に着くと、ブライアンは近くに落ちていた吸い殻を右手で拾った。そして、左の人差し指を吸い殻の先端に当てる。
「まだ、暖かいな? いいご身分だな! それでこの奇襲とは!」
と明らかにブライアンは苛立たしげに言った。そして、小路の奥に入っていく。すると、倉庫の扉のごみ置き場の近くに男の死体が転がっていた。俺の撃った弾丸は男の胸に命中し心臓を貫いていた。
「こいつは船着き場で待っていた男だろう。どうも待ち伏せの気配がするから、車に乗っていた連中が連絡して、確認させに来たんだろう」
「ブライアン……本当にすまない……」
「なぜ、俺が怒っているのか分かるか?」
と、ブライアンは落胆の表情を交えながら問うてくる。
「俺がタバコを仕事なのに吸って……それが、原因で今回の任務が失敗しそうになったからか?」
「いや、違うね! お前がいまだにこの仕事をするということが分かっていないから怒っているんだ! 初めて会ったときに言ったろ? 俺たちは運で仕事をするんじゃないと! 俺たちはテクニックで仕事をしているんだ。失敗しないようにな! なのにお前のこれは失敗の可能性を高める行為だ! それがプロの仕事か! 思い上がるなよ!」
と怒りをこめた大きな声で言った。ブライアンのこんなに怒った姿は見たことがなかった。おもわず、何も弁明できなくなる。
「タバコのにおいか何かで気づかれたかなんて、そこで死んでいる男たちにしかわからん。だが、お前のプロとしての意識のなさには失望したよ。次はもう助けんからな!」
と言うと、ブライアンは車に向かって歩き始めた。そんなブライアンを見ながら、俺も付いていく。
組織の工場までジープを持っていく間、双方何もしゃべらなかった。まるで、初めて会った時の車内のようだった。
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