7話 どうしてこうなった。

 なんでこんなことになったんだろうか………

 薄暗い王都の地下牢に、小さな檻に入れられた普通のスライムと、魔って感じのスライムと、真っ白な子犬の姿があった。


 ――時は数分前に遡る。


 無事に王都へと着いた一行は、検問に差し掛かっていた。


「止まれ! 中を確認させろ」


 前の方でしゃがれた男の声が聞こえてきた。荷物検査だ。


「まずい…これを想像してなかった。」

「おい!? 嘘だろ!」

「ごめん…」


 今回は素直に謝るしかない。僕の落ち度でしかないのだから。四日間も何してたんだと……ほんとなんで気づかなかったのか……


「どうしましょうか?」

「どうするって…不意をついて暴れて逃げるしかなくないか…?」

「おっ、いいのか?」

「今回は仕方ないだろ…」

「やったな! ぶっぱなしてやるぜ!」


 ――なんて会話をしていた僕らだったが、しゃがれた男の声が近づいてきたかと思うと、強烈な眠気に襲われ、気づいたらこんな状況になっていたのだ。


 そうして現在に至る。


「嘘だろおおおおおおおおお!!!!」

「うるさいぞスラスケ。」

「なんでこんなことになってんだよ!?」


 今回はマジでわからないことばかりだ。まず睡眠を必要としないスライムでありながら強烈な眠気を感じたこともひとつだが、何より何をされたのか分からない…城壁の周りに結界魔法でも使ってたのか…? 魔物避けの。それにこの檻だ。リズの攻撃を持ってしても壊れない。どーゆー事だよ!? しかもここ魔法も使えないらしい。


「大丈夫なんでしょうか…」

「あ、ひとつ思いついた」

「本当か?スラスケ」

「ていうか、俺らスライムだし出れるじゃねーか」


 あ…あまりの動揺にスライムだったこと忘れてた。よくよく考えれば檻だな。柵の隙間から抜けれるじゃん。


「確かに…そこまで頭が回らなかった。」

「お前もバカだなー」


 お前だけには言われたくない。そう思いながらも、助かった。と心の中で感謝しながら体を細くして檻の外に出た。


「ところで、リズはどうするんだ?」

「お前、そこ考えてなかったのかよ…」

「スライムだしな」


 関係ないだろ。


「私はどうすれば…」


 どうしよう。あんまり気が進まないけど、吸収して出してみるかな…


「リズ、嫌ならいいんだけど…吸収すれば出せるかも…」

「え…」


 あからさまに嫌な反応。


「あ、いや、ごめん。嫌だよね…違う方法考えるよ」

「…やります」

「え?」

「お願いします!」

「本当に!?」

「お願いします! 母を助けないといけないので!」

「あ、そうだな…」


 生き物でできるのか…? 半信半疑だがとりあえずやってみよう。

 肉を吸収した時の要領で檻の間からリズに向けて触手を伸ばす。


「い、行くぞ?」

「はい。」


 リズの体を触手が覆っていく。


「あっ、んっ」


 …うぉおおおおおいい!!!! なんでそんな声出すんだよ!!? いや、犬だ。大丈夫、落ち着け、犬だ。声は10歳くらいの幼女の声だが犬だ。安心しろ。犬だ…


 触手の膜が首元まで差し掛かる。


「あ…あっん…」


 …やばい。精神衛生上に問題が…。いや、犬だぞ!? 犬に欲情する人間がいるか!? 今はスライムだけど、犬に欲情するスライムもいねーよ!


 なんとか平常心を保ちながら…というか今思えば別に身体のどこかが反応するとかそういうのはないんだけど。ようやく全体を覆い、吸収し始める。なんと生き物でもできた。あとは出すだけだ。こちらも普通にできた。


「ありがとうございます!」

「あ、いや、はは、大丈夫だよ。」


 はぁ、なんかどっと疲れた。こんなことで疲れるなんて…先が思いやられる。


「大丈夫か? 元気ないな」

「大丈夫だ。それよりここから脱出してリズの母親を探さないとな」

「だな、魔法は使えないぞここでは」


 そうなんだよな…もうこの時点でスラスケが使い物にならない事が確定した。


「リズは…使えるのかな?」

「んー、魔法は使えません。」


 そうなのか…でも獣神のスキルだし多分魔法の類じゃなかったら使えるんだろ。おそらく……保証はないけど。


「よし、クヨクヨしても仕方ない! 無事にリズの母を取り戻して、逃げよう!」

「おう!」

「はい! 本当にありがとうございます!」


 てなわけで、獣神奪還編スタート!!!!!!!!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る