願いをさえずる鳥のうた
長月瓦礫
願いをさえずる鳥のうた
「聞いてよ、ピーコちゃん!」
私は鳥かごに入っている白いインコに話しかけた。
ピーコちゃんは私のことなど気にもせず、音を立てて羽を上下に動かしていた。
「いいヨ! ピコちゃん、お話しするヨ!」
かごの中にいるピーコちゃんはただのおもちゃだ。一時期流行った犬型ロボットのインコ版で、飼い主の言葉を聞いて様々な反応を示すものだ。
ただ、機械音が犬よりうるさいことや本物のインコのように歌を覚えないこと、何より空を飛べないことが原因となり、販売してまもなくにおもちゃ屋さんから姿を消した。
私の家にあるこの鳥型ロボットは、現役で動く数少ないレアものだ。
オークションなどに出せば、マニアがすぐに飛びつく代物だ。
販売価格の倍以上の価値はあるらしい。
私がピーコちゃんを手放さないのは、このおもちゃには不思議な力があると言われていたからだ。それは、何でも願い事を聞いてくれると言うものだ。
この鳥に言えば、どんな願い事でも叶えてくれる。
不思議な力が原因で、おもちゃ会社は販売を中止したという説がある。
誰かのお願いを聞いて、某所にある販売店は閉店したという逸話もある。
偶然が重なっただけの都市伝説にしか過ぎないのだろうけど、今の私は鳥の羽にもすがりたい思いだった。
「隣のクラスにいる竹本さんってね、根暗で不気味で何考えてるか全然分からないし! マジウザいんだよ! ほんと、マジ消えてくれないかなー」
ピーコちゃんは私の言葉に対して、適当に答えているだけだ。
このさえずり声だけでも、十分に癒される。
「もー、見てるだけで嫌になってくる……」
私は肩を落とした。
「わかったー。そいつ、ころすネー」
その声の中で、聞き捨てならない言葉を言った。
今なんて言った? 殺すって言わなかった?
「あしたも晴れるといいネー」
何事もなかったかのように、また喋り始めた。
次の日、ピーコちゃんに挨拶をしても特に変化はなかった。
何かの聞き間違いだったのだろうか。
そうだよね、そんな物騒なことを今まで言ったことがないもんね。
ピーコちゃんの言葉の意味に夢中になっていたからか、横から迫ってくるトラックに私は気づかなかった。
「やった! すごいね、アオちゃん!」
キシキシと音を立てながら、青い小鳥は少女のほうを見た。
彼女もまた、小鳥型ロボットにお願いをしていたのだ。
むしゃくしゃするから、何かおもしろいことを起こしてくれ。
アオと名付けられた小鳥は、「わかっター」と一言だけ答えた。
その次の日、彼女の目の前で交通事故が起きた。
同い年と思われる少女をトラックが跳ね飛ばしたのだ。
「本当に叶っちゃった……次は何をお願いしようかな」
何でも言うこと聞いてくれるコトリチャン。
その連鎖はまだまだ止まらない。
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