第45話 仲人④
もちろん真奈美は、僕らがそういう意図を持って彼女とその人物を会わせているとは知らない。しかし、彼女と話した様子から僕らが判断した「無名だが共に仕事をしていく」人々と「有名だが、一緒に仕事はできない」人々と判断したその全ての判断は、一年もたたないうちに、それが正しい判断であったと証明される事となった。そして何を隠そう、彼女こそが、僕がマネジメント会社を探していた時に僕に電話をかけてきたあのアルバイトである。
今になって思えば、あの賞をとった写真家の僕に、できたてほやほやの小さなイベント会社であった「エイトナイン」がマネジメントのお願いをするなど、一般常識から考えれば、かなり常識はずれなことである。が、しかし、ありがたい事に真奈美の哲学の「名刺の肩書きの余白部分」にどうやら僕は引っかかったらしい。そして彼女は無謀にも電話をしてきた。そして僕とエイトナインの付き合いが始まった。
後日何かの折に「当時入ったばかりのアルバイトだった君が、よく、専門外だった写真家のマネジメントをしたいと電話できたね。」と聞いた所、
「私、先生がうちにお願いして下さるってわかっていましたから。」
とすまして答えていた。
例を挙げればきりがないが、とにかく真奈美はそういった哲学を持った人物であり、そういう意味では一般常識では全く語れない人物だ。そして彼女のその性格こそが、後にエイトナインを揺るがす大事件を起こし、ここに小野瀬会長を呼び寄せるきっかけをつくった。
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