私、仙人にあっちゃったカモ!
今日は日曜日。
おじちゃんが、美味しい塩大福を食べたいらしくて...
一緒に巣鴨にいます。
一応...心配だったから、おじちゃんの同行をしました。
巣鴨はJR山手線と都営三田線が通っている駅。
とげぬき地蔵のある巣鴨商店街には、三田線の駅から向かった方が近いかもです。
商店街は「おばあちゃんの原宿」とも呼ばれており、所々に椅子が設置されている。
高齢者の方々に優しい街だと思った。
今日のおじちゃんは、いつも以上にワクワクしているようだ。
気のせいか、ザワザワな影も見られない。
(今日は大丈夫かも?)
私はそう思った。
「俺、塩大福を買ったら街をプラプラしてくる」と早歩きでおじちゃんは店に向かって行った。
ついて行こうかとも思ったが、予想に反して今日は大丈夫そうだ。
私は別行動をとることにした。
(巣鴨で有名なお地蔵さんでも見てみようかな?)と、高岩地を目指した。
高岩地は商店街に面していた。
境内には、やっぱり座れる場所があった。
(優しい街なんだなぁ)
と、思っていると...
椅子に座っている1人のおじいちゃんに小さなザワザワ影が近づいていくのが見えた。
(あっ、大変!)
と、私はおじいちゃんの側に駆け寄った。
次の瞬間、おじいちゃんが右手で影を振り払うと影を消してしまったのだ。
あれっ?
私が不思議そうに見ていたので
「お嬢ちゃん、どうかしたかい?」と、おじいちゃんが話しかけてきた。
「いえ、変なことを言うかもしれませんが、今おじいちゃんの側に変な影があったんです。
でも、おじいちゃんが手で払って影をけしちゃったんです」と、私は答えた。
おじいちゃんは
「お嬢ちゃんは影が見える人なのかい?」と私を見て微笑んだ。
続けて「ワシには影は見えない。でも影が見える人と昔住んでいたことがあるから、お嬢ちゃんの言うことは分かるよ」と話してくれた。
初めて、私以外に「影」が見える人の存在を知ることが出来た。
ずっと、私にしか影は見えないと思っていたから。
ちょっと嬉しかった。
私はおじいちゃんの隣に座り、話を聞くことにした。
おじいちゃんは
「影が見えたのはワシの姪っ子だ。ちょうどお嬢ちゃんくらいの時に大学に通うんで、ワシの家の2階に下宿していたんだ」
と話してくれた。
どうやら姪っ子さんとおじいちゃんは2年半くらい一緒に住んでいたらしい。
そして、
「ワシには家族はおらん。人生で1度、愛した女性がいたが...」
おじいさんは16歳くらいの時に初恋をした。
友人のお姉さんだったそうだ。
友人とお姉さんと3人で交流を深めていく中で
時代の流れに巻き込まれてしまった。
戦争という名の悲劇な流れに。
おじいさんは90代を過ぎているようだったが心身ともに元気とのことだった。
「ワシはあの人に恋をした。ワシが戦いに旅立つ日の夜に、あの人はワシに手拭いをくれた。必ず返しに来て欲しいと...」
おじいちゃんは遠くを見つめた。
少し間を置いて
「本当に辛かった。何度これが最後かと思ったことか...。その度にあの人の約束が頭を過った。絶対に生きなければいけなかった。
最後を迎えること以上に生きることが難しかった」
言葉に重さがあった。
私は話や勉強からでしか、当時のことを知らなかった。
そして、おじいちゃんはやっとの思いで日本に帰って来た。
しかし、その時愛した人は病でこの世を去っていたとのことだった。
「デング熱が発症したそうだ。運悪く...。ワシはその後の人生を1人で生きることを決めた。何も見えないで生きる人生が長いこと続いた」
「40を過ぎた頃、身の回りに変なことが起こり出したんじゃ...」
(きっとザワザワ影の仕業だ)
私は直感で思った。
おじいちゃんの話では、身の回りに危険なことが起こり出したとのこと。
心を閉ざしていたおじいちゃんは、このまま身を任せてこの世を去っても良いと考えていた。
そんな中、弟さんの娘さんが大学に通う為におじいちゃんの家に下宿しにきたそうだ。
初めは、姪っ子さんは何も見えなかったそうだけど、1年半くらい過ぎたあたりで「おじさんの側に奇妙な影が見える」と言い出したそうだ。
どうやら、40歳を過ぎて女性との関わり(手を繋ぐなど)を行ったことのない男性はザワザワ影を引き寄せるとのことだった。
そして、影にはどうやら色があるらしい。
色によって、起こることが変わるらしい。
気持ちが沈んだり、元気がなかったりと自分自身がマイナスの状態だと影は現れやすく、影響も受けやすいとのことだった。
逆に、気持ちが元気だったり、人との繋がりが強い時などは影は現れにくく、影響を受けにくいそうだ。
姪っ子さんに影が見えるようになったのは、どうやらおじいちゃんと暮らす時間が長かったから影響があったのではないかとのことだった。
「ワシが何とか生きてこれたのは、姪っ子のおかげじゃ。閉ざしていた心を少しずつ開くことが出来た。あの子のアドバイスで前向きに社会参加が出来るようにもなった」と涙ぐんで話してくれた。
「あの子がワシを守ってくれたおかげて、悪いことも減った。ワシは思うんじゃ。男性は弱い生き物。それが女性の存在で男性は強くなれる。側にいてくれる女性を大事に大切にするのが男性の役目だと」
「ワシは大切な人を守れなかった。だから、陰ながらでいい。一時でもワシと暮らしてくれた姪っ子の幸せを今も願うんじゃ」
おじいちゃんは真っ直ぐな志を持っていた。
聞いていて私は感激してしまった。
姪っ子さんは現在結婚して、おじいちゃんの家のそばに住んでいるらしい。
たまに、お子さんを連れて遊びにくるとのことだった。
「ワシは今でも姪っ子に助けてもらっている。お嬢ちゃんもワシみたいな誰かを守っているのではないかね?」とさりげなく質問された。
確かにおじちゃんと暮らす日々は長くなっている。
今日もおじちゃんが心配だったから...
(そうか、私にザワザワ影が見えるようになったのは、おじちゃんの影響だったのか)
私はおじいちゃんに向かってうなずいた。
「ワシもお嬢ちゃんに救われたよ。さっきは少し元気がなかったんじゃ。だから影とやらを引き寄せたのかもしれないな」
「そして、お嬢ちゃんの言う影というのはワシが思うに不幸、災いの一種なのではないかの?」とおじいちゃんは続けてくれた。
40歳を過ぎた男性(女性との交流がまったくない男性)はオーラか匂いか、何かが原因でザワザワ影を引き寄せ、不幸・災いを受けやすくなるのでは?
という結果を得た。
影を引き寄せる男性の側に女性が長時間一緒にいると影が見えるようになるのでは?
との仮説も立てることが出来た。
おじちゃんは最後に「ワシみたいなジジイが増えないと良いなぁ。お嬢ちゃんならワシみたいな人間を救ってくれるかもしれないのう。話を聞いてくれてありがとう」とゆっくりと席を立ち、歩き始めた。
今日の出会いは大きかった。
一気に情報が増えた。
まるで、私は仙人に悟されたようだった。
(あっ、おじちゃんを探しに行かなきゃ)
私は巣鴨の街に感謝して、前に進んで行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます