閑話③


 土方は激怒した。必ずかの不養生の榎本にたらふく食わせようと思った。土方には飽きが分からぬ。土方は健康優良児である。真夏でもバテもせず、山盛りのどんぶり飯と共に育ってきた。

「もう食べらんない……」

「甘ったれんな。正月に真面目に消費しなかったのはどこのどいつだ」

 榎本は半目で土方の背後にうず高い餅の山をじとりと見た。最近の餅は保存がきくねぇとほったらかしていたのを見つかって、この惨事である。残暑厳しいといった季節に、何がうれしくて餅なんか、こんなに大量に食べねばならないのだろう。

「ほら、次はいそべ」

「せめて大根おろしとかにしてぇ」

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