第21話

「オッサン、その年で冒険者とか無理があるんじゃねぇの?」


装備を着込んだ青年が人を小馬鹿にした様な顔をして話しかけてきた。

こういう時はどうすれば良いのだろうな?

あまり騒がしいのは好きではないのだが。


「ご忠告痛み入る。


しかし、私が決めた事なのでな」


「…その人を小馬鹿にした様な物言い、気にいらねぇんだよ!」


青年は抜剣し、私に向かって振り下ろしてきた。

人とは戦った事が無いとはいえ、魔物とは幾度も戦ってきたのだ。

それに比べれば遥かに遅い。

私は青年の振り下ろした剣を難なく避けると更に怒りに火がついたのか無闇矢鱈むやみやたらと剣を振り回してくる。

私達を見ているギャラリーは色んなヤジを飛ばしてきている。

全く手に負えんな。


「ふむ…そこの職員のお嬢さん、少し聞きたいのだが近くに薬屋か薬師くすしはいないかね?


どうやら彼らは私の故郷では不治の病と分類されているものにかかっているみたいでな、どうも症状が酷いようだ。


薬の名前は『馬鹿に付ける薬』という名前なんだが、私の故郷ではそれなりに医療が発展していたにも関わらず作成が無理だと言われた薬なのだよ。


故郷ではどの医者も薬師もさじを投げる程で、『馬鹿は死ぬまで治らない』と言うんだ。


この街でこの病がこれ程蔓延しているという事はきっと治す薬があるのだろう?

それを彼らの為にも購入しようと思っているんだが値段を教えてくれないかね?」


軽く挑発したら更に攻撃が単調になる。

単調な攻撃程避けやすい物はない。

後は時間稼ぎをしている間に、職員が上の者に報告すればこの騒ぎは収まるはずだ。


職員が慌てて裏に引っ込み、助けを求めに行ったのを確認すると攻撃を避けるのに集中する。

建物の備品を壊しても不味いだろうしな、備品に当たらない様に体の位置を考えながらひたすらに避けていく。


この男、頭は弱いがスタミナはそれなりにあるらしい。

身体に汗が滲みながらも検速もあまり衰えていない。

もしかすると結構ランクが高い冒険者なのかもしれない。

今回の件でランクが下がるのは確定だろうが。


「お前ら、何してやがる!」

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